2022.08.24

【全中・女子】スーパースターは不在も“総合力”で連覇を達成した四日市メリノール学院

大会連覇を果たした四日市メリノール学院[写真]=田島早苗
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「相手は上手いし、乗っているチームだったので、『我慢だよ』とは選手にも言っていましたが、集中力を切らすことなくバスケットをしてくれたと思います」

 8月23日、「第52回全国中学校大会」で見事優勝を果たした四日市メリノール学院中学校(三重県)の稲垣愛コーチは、決勝戦をこう振り返った。

「厳しい試合になると思っていました」(稲垣コーチ)という樟蔭中学校(大阪府)との決勝は、出だしに連続得点を挙げた四日市メリノール学院が幸先良いスタートを切る。しかし、樟蔭も金澤杏(3年)を中心に攻撃を仕掛け、第3クォーター中盤からは一進一退の展開に。

 それでも、第4クォーター中盤に合わせのプレーから立て続けにシュートを決めると、四日市メリノール学院が苦しい状況を抜け出す。残り1分を切って3点差に詰められた場面はあったものの、最後は68-66で樟蔭を振り切り、勝利をつかんだ。


試合終盤に勝利を手繰り寄せるようなスティールでチームを盛り立てた前川[写真]=田島早苗


 決勝の相手となった樟蔭は、準決勝で近畿大会覇者の大阪薫英女学院中学校(大阪府)を破って決勝へと勝ち上がったチーム。エースの金澤はその準決勝で34得点を挙げる活躍を見せていたため、その金澤に、四日市メリノール学院は北野空と前川桃花(いずれも3年)が交互にマークを担うことに。この2人が金澤の得点を19得点に抑える働きを見せ、「相手のリズムを崩したい」という指揮官の思いにしっかりと応えた。

 連覇を達成した四日市メリノール学院だが、今年は深津唯生(桜花学園高校1年)のようなスーパースターは不在。だからこそ、「総合力。みんなでやるという点では一番のチームだと思ってやってきました」と稲垣コーチは言う。

 試合では8、9人の選手を常に起用。スターターだけでなくバックアップメンバーも含め、「誰が出ても変わらないし、みんなが活躍してくれる」ことが持ち味となり、試合では大崩れしない強さを作った。それだけに、「目指しているバスケットに近づいてきているかなと思います」と稲垣コーチは笑顔を見せる。

 そしてそのスターがいないチームが重きを置いたのがディフェンスだ。「ディフェンスからブレイク。ディフェンスは相当練習をしてきました」と稲垣コーチ。決勝では北野と澁谷が象徴する形となったが、大会を通して見ても、決勝以外の5試合は失点が50点以下で、足を動かした強度の高いディフェンスで相手を圧倒した。

 なかでも、初戦となった京都精華学園中学校(京都府)との一戦では、180センチを超える2人の留学生センターを10得点に抑えるなど、練習で培ってきたディフェンスは優勝への大きなカギとなったといえる。

 また、ディフェンスと同様に特筆すべきはリバウンドで、京都精華学園戦こそ、相手に2本多く奪われたものの、その他の試合では、相手を上回る本数をマーク。決勝では樟蔭の29本に対して四日市メリノール学院が41本。準決勝でも竜操中学校(岡山県)の30本に対して59本を奪うなど、全員が果敢にリバウンドに飛び込んだ。

 もちろん、リバウンドを取れない時もあるが、リバウンドに絡んだことで生じたニュートラルなボールを奪うなど、球際の強さを発揮。「リバウンドとルーズボールがバスケットでは一番大事だと思っているので、そこでの勝負ということは日々言っています。そこは頑張れたと思うので、そういう意味では100点かな」と稲垣コーチは、リバウンドやルーズボールに対して高い意識を持って臨んだ選手たちを称えた。

 高い総合力で頂点へと登り詰めた夏。それでも指揮官は「まだまだ緩いところもあるし、まだまだ失速することもあるので、(理想のバスケットへの)途中を選手たちに見せてもらったかなと思います」と言う。

 冬には3連覇が懸かるジュニアウィンターカップが控える。「まだ苦しいときに苦しい顔しているので、苦しいけれど、それが楽しいなと思えるように。楽しい顔をしながらバスケットができるようなチーム作りをしていきたいです」と稲垣コーチ。冬にはあらゆる面でパワーアップした姿が見られることを期待したい。

 写真・文=田島早苗

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