6月15日・17日に韓国代表と行われた「バスケットボール男子日本代表国際強化試合2018」ではニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)と八村塁(ゴンザガ大学)、そしてシェーファー アヴィ幸樹(ジョージア工科大学)の3名が代表デビューを果たした。
初選出の中で取り上げたいのがファジーカスだ。Bリーグ初年度となった昨シーズンは得点王、ベスト5、そして年間MVPに選出され、今年の4月、帰化申請の認可が下り、日本国籍を取得、ついに日本代表としてコートに立つことになった。ちなみにファジーカスはU21のアメリカ代表に選出された経歴があり、FIBA(国際バスケットボール連盟)のルールでは、違う国の代表でプレーできなかった。ただし、今回は日本協会がアメリカ協会に問い合わせをして許可が下りたので、日本代表でのプレーが可能になった。
1985年6月17日生まれのファジーカスは33歳になったばかり。身長210センチ、体重は111キロ。ネバダ大学リノ校卒業後、2007年のNBAドラフトで2巡目34位でダラス・マーベリックスに指名を受けている。そして、ルーキーシーズン、マーベリックスでは4試合に出場、その後ロサンゼルス・クリッパーズに移籍して22試合コートに立った。ちなみに26試合の平均出場時間は10.3分、4.1得点、3.4リバウンドの成績を残している。
そんなファジーカスが日本にやってきたのは2012年。川崎の前身、東芝ブレイブサンダースに入団し、その前年にNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)で最下位だった同チームを優勝に導いた。ゴール下に限らず、シュートレンジは非常に広く、その他を圧倒するオフェンス力に“無双”と表現されることもあった。
元々多彩な得点パターンを持つファジーカスだが、日本でのシーズンを重ねるごとにオフェンスパターンが増え、対戦相手を悩ませてきた。特に本来であれば身長の小さな選手が武器とするフローター(ディフェンスの頭を上をフワッと浮かせて打つ)シュートは止めようがない。さらに今では3ポイントシュートも軽々と決めるようになり、Bリーグ2017-2018シーズンには44.6%の決定率を誇った。
インサイドプレーヤーの得点力とリバウンドに課題を持つ日本代表にとって、ファジーカスは救世主となるのか!? 韓国と対戦した「バスケットボール男子日本代表国際強化試合 2018」の初戦で、ファジーカスは28得点13リバウンドのダブルダブルを達成し、日本に勝利をもたらせたことで、いきなりその片鱗を見せることとなる。しかし、2日後に行われた第2戦では韓国の徹底マークにあうこととなった。「自分がボールを持つと、必ず目の前に誰かがいた」とは、試合後のファジーカスのコメントだが、この試合では12得点に終わった。
ファジーカスはチームに合流してまだ20日足らず。フリオ・ラマスヘッドコーチのバスケに慣れること、そしてコンディショニングを高めること、さらには他のメンバーとの息を合わせることなど、まだまだファジーカス自身もやらなければいけないことがある。現状、ファジーカスを生かすことと、比江島慎(シーホース三河)をはじめとするコアメンバーとのオフェンスとのバランスが取れているとは言えない。そのためファジーカス加入の相乗効果は大きくなく、ディフェンスにとっては的を絞りやすくなる状況になっている。
ラマスHCはアジア1次予選Window3のオーストラリア戦までにチーム力を高めなければいけない。しかし、ファジーカス本人をはじめ、パスの供給源となる司令塔の富樫勇樹(千葉ジェッツ)と篠山竜青(川崎)は「コンビネーションはもっともっと良くなるはず」と手ごたえを感じている。ファジーカスは「自分がボールをもらって、どこで一番効果的に攻めることができるのかなどをしっかり見つけていきたい」と課題を持って韓国との2試合を戦った。八村を含めた新布陣で臨むオーストラリア戦が厳しい戦いになるのは周知のことだが、ここで本格的に新しい日本代表を見せつけてほしい。
文=入江美紀雄