リーグを代表する司令塔へと成長した安間志織「3ポイントに自信を持ち、プッシュすることができた」

初のリーグ制覇に貢献したトヨタ自動車の安間志織はプレーオフMVPを受賞 [写真]=Wリーグ

リーグ初制覇に大きく貢献

「第22回Wリーグ プレーオフ ファイナル」では2試合で24得点20アシスト17リバウンドという堂々のスタッツを残し、トヨタ自動車アンテロープスのリーグ初制覇に大きく貢献したポイントガードの安間志織。優勝の瞬間は涙があふれて止まらず、プレーオフMVPを受賞すると、驚きと感激の面持ちでトロフィーを掲げていた。

 ここ数年のトヨタ自動車は、サイズとポテンシャルの高い選手を揃えて選手層を厚くし、2シーズン前からスペイン女子代表のヘッドコーチを務めるルーカス・モンデーロを指揮官として迎え、勝者になるチームカルチャーを築いた。女王ENEOSの牙城を崩してのリーグ初制覇にはこれらの要素はどれも欠かせなかったが、個性的な選手を束ねてきたポイントガード安間のステップアップなしには成し遂げられなかっただろう。

 富士通レッドウェーブと競ったセミファイナル2戦目では、残り16.5秒に勝負を決定づけるジャンプシュートで勝利を手繰り寄せた。もともとジャンプシュートを得意とする安間だが、一切の迷いがない強気の姿勢で打ち、決め切ったことに成長のあとが見えた。

 レギュラーシーズンでは平均10.20得点、セミファイナルでは9.50得点だったが、ファイナル1戦目は積極的に攻めて20得点8アシストをマーク。トヨタ自動車の高さを警戒していたENEOSは岡本彩也花と宮崎早織の2ガードがインサイドをカバー気味にディフェンスしていたが、その隙をうまく突いて得点を重ねたのだ。しかも、21−0とスタートダッシュを仕掛けた中で決まった安間の初得点は「昨シーズンの後半からフォームを変えて自信を持っていた」という3ポイントシュート。この1本を決めたことで、手応えをつかみながら臨んだファイナルだった。

 2戦目になると、ENEOSは安間への警戒をより強めてきた。そこで安間はみずからの得点を抑えられると、「みんなに助けてもらった」という言葉とともに、12本のアシストを繰り出すゲームメークで貢献。その象徴となったのが、出足にENEOSが出したゾーンに冷静に対処したことだ。パスのモーションでENEOSのゾーンの寄りを引きつけると、ノーマークになった長岡萌映子を見逃さず、コートを横断するスキップパスで先手を取る3ポイントを演出。流れが苦しくなったときにつないだ10本のリバウンドも光っていた。

苦しい場面では自身のシュートで局面を打開した安間 [写真]=伊藤 大允

リーグを代表する司令塔に成長

 ルーカス・モンデーロ体制になって2シーズン目。チームメートから信頼を勝ち取る司令塔へと成長した要因を安間はこのように分析する。

「いちばん成長した点は3ポイントです。今まではディフェンスの間を空けられても3ポイントが打てずに終わり、なかなか自分のリズムがつかめませんでした。今シーズンは、昨シーズンの終わりからシュートフォームを変えたことで自信を持って打てたし、ディフェンスが出てきたらドライブをすることができたので、自分のリズムに持っていきやすくなりました」

 また、“ルーカス・バスケット”を束ねる司令塔として心がけたのはボールプッシュだ。

「昨年末、逆転負けを喫した皇后杯(ファイナルラウンド決勝)では、後半にスピードを落とすゲームメークをしてしまい、トヨタの持ち味である走る展開を作ることができませんでした。その反省から、3番ポジションが大きいという私たちの強みを生かしながら、速いプッシュをすることを心がけてきました」

 優勝直後のテレビインタビューでは、「みんなのキャラクターが強すぎて、まとめるのが大変なんですけど…」と笑顔でコメントしていたが、安間自身も実に個性的な選手である。これまでは持ち味であるトリッキーさが裏目に出ることもあり、判断ミスや焦りから相手に流れを渡してしまうこともあった。だが、このファイナルではスピードあるボールプッシュを軸として、得点、アシスト、リバウンド、ゲームコントロールという要素を必要な場面で出し切ることができた。自身が持つ個性を生かし、誰もが認めるリーグを代表する司令塔へと成長したシーズンだった。

“ルーカス・バスケット”を安間はコート上で表現 [写真]=伊藤 大允


文=小永吉陽子
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