2023.10.05

韓国に完勝して中国との決勝へ。「アジアカップの雪辱を果たして金メダルを」(髙田)

中国との決勝の臨む女子日本代表 [写真]=小永吉陽子
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

■髙田と赤穂の活躍を主体に韓国を圧倒

 中国・杭州で開催さ入れているアジア競技大会、女子準決勝の韓国戦は81−58で完勝。速い展開からパスがよく回り、韓国のディフェンスを崩して、速攻と3ポイントで得点を重ねる理想的な展開で勝利した。

 日本の良さがいちばん出たのは第3クォーターだ。前半は40−33で日本がリードしていたものの、韓国に7点差まで粘られていた。だが、後半は自在なオフェンスで韓国を翻弄。その起点となっていたのがインサイドの髙田真希だ。韓国のエースである198センチのパク・ジスを封じたうえに、相手のディフェンスが引けば3ポイント、出てくればドライブの判断で自在に得点を重ねた。東京オリンピック時に身につけたこのスペースの活用こそが日本の肝であり、この判断ができることによって、サイズのないチームでも効率のいい攻めができるのである。

韓国戦で効率的なオフェンスを見せた高田 [写真]=小永吉陽子


 恩塚亨ヘッドコーチは、東京オリンピック時よりさらに各自の判断を大切にするバスケを試みているが、今回その部分で一歩進んだのが、赤穂ひまわりの成長だろう。リバウンドからボールプッシュをしてバスカンを奪った第3クォーターのプレーには、これからの日本を背負っていく頼もしさが見えた。

 大会前に赤穂は「今回、インサイドの選手があまりいないので、自分は3番(SF)から4番(PF)に変更になります。ならば、自分の良さを生かして機動力を生かした4番になろうと思う」と話していたことが、大一番で出たのだ。試合後には、「自分の良さである走るプレーが出せたし、チームとしても準備してきたことを、出し惜しみしないでやれました」と笑顔を見せた。

■中国戦は攻撃よりインサイド封じ

 問題は、この機動力を決勝の相手である中国に出せるかどうかだ。中国は平均身長185センチで日本の176センチより9センチも上回り、7月のアジアカップ時よりベストメンバーを組んでいる。2メートルを超えるインサイド2枚、WNBAでプレーする得点源にタイプの違うポイントガードが3人。今大会はアジアカップ時には不在だったシューター陣も加えている。

 韓国戦を終えて髙田は「相手が自分の3ポイントを止めにくるのはわかっているので、それに対して自分はドライブができるのが強み。逆に、自分がこの役割をできないと日本はリズムに乗れないので、相手の出方によって、中と外のプレーの選択を判断できるかがカギになります。今日はその部分でしっかりやれました」と韓国戦を総括したが、中国戦ではまた役割が変わるという。

「中国戦ではオフェンスが大事なのはもちろんですが、中国戦での自分の役割はまずディフェンスです。2メートルの選手に簡単にボールを持たれないように守らないといけない」

 現在の中国はインサイドを抑えても、アウトサイドのシュート力があり、タイプの違うガードも揃う。サイズがあって走れる厄介な存在へと成長している。ましてや、今回の日本はインサイドが手薄だ。中国戦に関しては赤穂も「オフェンスでは4番でも3番でもやることは変わらないけれど、問題はディフェンスでインサイドを抑えなければならないこと」と髙田同様にディフェンス面での課題をあげる。

赤穂は自身のディフェンスがキーを握ると語った [写真]=小永吉陽子


 準優勝だった今夏のアジアカップ。決勝の中国戦では終盤にディフェンスのローテーションミスがあり、相手に内外角で決定打を許してしまった。その雪辱を果たすときが来た。髙田も「中国にリベンジをして金メダルを獲ったうえでOQT(世界最終予選)へとステップアップしたい」と意気込む。目標達成まであと一つ。恩塚HCは決勝に向けてこのように語る。

「アジアカップの決勝では中国に敗れて悔しい思いをしました。その一方、大事な課題を私たちは手にしたと思っています。その課題とは決勝の残り5分で、私たちのやりたかったことができなかったこと。集中できずに相手にアジャストされ、戦う気持ちが薄れてしまったところが、最後のクロスゲームで差をつけられてしまった敗因です。その敗因をクリアにすることにフォーカスしてきたので、決勝で課題を克服して勝利を勝ち取りたい」

■韓国のレジェンドからの言葉

 最後になるが、この大会を最後に代表からの引退を表明している韓国代表のキャプテン、キム・ダンビについて触れておきたい。日韓戦のあと、日本の選手からキム・ダンビの代表引退を労って花束が贈呈された。このシーンはテレビ中継に映し出され、話題になった。

 日韓戦のあとに花束を渡すことは日本選手たちの希望だった。キム・ダンビは昨季のWKBLでレギュラーシーズンとプレーオフでMVPを受賞した韓国の顔と言える存在で、代表歴14年目のベテラン。日本では憧れの存在にしている選手も多い。

 韓国とはアジアのライバルとして競い合うだけでなく、日韓の各クラブはオフシーズンに行き来をして手合わせをする間柄。今夏も両国で行われたカップ戦でも戦っている。また、過去には多くの指導者が韓国から日本に渡ってチーム作りをしてきた歴史があり、日本は多くのことを韓国から学んできた。こうした背景から、選手同士はとても交流が深いのである。

 現在33歳のキム・ダンビが代表入りした2010年当時は、韓国が日本に連勝していた時代だった。しかしその後は日本が著しい成長を遂げ、アジアで5連覇を達成し、対韓国戦ではFIBA主催の大会において、2012年以降は負けなしで現在に至る。

 キム・ダンビは日本からのサプライズに対して感謝の気持ちを述べたあと笑顔で記念写真に収まった。そして、日本代表と後輩たちにこのようなメッセージを贈った。

代表を引退するキム・ダンビに日本チームから花束が贈られた [写真]=小永吉陽子


「(サプライズの花束をもらい)日本の選手たちはすごくかっこいい。本当にありがとうございます。日本選手たちに聞いたところ、『代表の合宿期間が長く、普段の練習がとても大変で試合のほうが楽だ』と言っていた。日本は代表チームに多くの投資をしているため、組織力が非常に良くなっている。私たちの国も代表チームにもっと多くの投資をしてほしいし、韓国の後輩たちには努力を続けてほしい。私自身、韓国では自分が最高と思っていたが、国際大会に出てみるとそうではなかったと知ったので、現役引退するその日まで学んで努力をしなければならない。

 私は日本に勝っていた時代から代表でプレーをして、時が流れ、日本に逆転されることも味わった選手。後輩たちには、これからも日韓でお互いに競争してぶつかり合ってほしい。そうすれば、私たちの時代よりもはるかに良い成績を残せるでしょう。3決は北朝鮮に勝って笑顔で終わりたい」

文・写真=小永吉陽子

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