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5日間にわたってアメリカのテキサス州で行われた日本、アメリカ、スペインの3カ国による車いすバスケットボール男子の親善試合。最終日の25日、日本はアメリカとの最終戦に臨み、38-54と負けはしたものの、”世界最強国”を50点台に抑えてみせた。
この遠征で三度、アメリカに挑んだ日本。「ようやく自分たちがやりたいことが、少しやれたかなと思える試合でした」。及川晋平ヘッドコーチがそう語る通り、第3戦は随所に日本の良さが出ていた。
試合開始早々、最初のアメリカの攻撃に対し、日本は連携の取れた守備で、いきなり24秒バイオレーションを取ってみせた。これには、アメリカも面食らったに違いない。これまでの2試合を分析したうえでの好守備に、日本の修正能力の高さがうかがえるシーンだった。
その後、高確率にミドルシュートを決めるアメリカがリードを奪ったものの、これまでの2試合のように、日本が引き離されることはなかった。第2クォーターでは香西宏昭が次々とミドルシュートを決める活躍を見せ、19-28と1ケタ差で試合を折り返した。
第3クォーターも、鳥海連志の好アシストで藤本怜央が得点を挙げたり、岩井孝義からのスローインのボールを土子大輔がダイレクトでシュートを決めたりと、息の合ったプレーが多く見られた。
第2クォーターはアメリカの14得点に対し、日本は12得点。そして第3クォーターもアメリカの12得点に対し、日本は10得点と、試合の中盤は攻防にわたってアメリカと互角にわたった。
第4クォーターに入っても、日本の守備はしっかりと機能していた。しかし、日本のシュートの確率も下がり、得点できずにいた。この悪い流れを断ち切ったのが、若手の一人、古澤拓也だった。残り3分、古澤はこの日2本目となる3Pを決めると、最後の攻撃でもペイントエリア内のタフショットを決め、一矢報いた。
古澤は、リオパラリンピックの翌2017年に行われたU23世界選手権で4強入りした日本チームのキャプテンを務め、プレーでも鳥海連志とのダブル・エースでチームをけん引した。鳥海とともにオールスター5にも選ばれた古澤は、その後はA代表としても頭角を現し、今では東京でのメダル獲得に不可欠な選手の一人だ。
今回の遠征では、「とても多くのものを得られた」と言い、浮彫となった課題とともに、自らの強さを再確認したという。
ボールハンドリングとともに武器の一つとしている3Pは、今回の遠征では6試合でチーム最多の7本を数えた。だが、本人は「本数にはもうこだわってはいない」と語る。
「今はまず、いかにいいディフェンスをするかを念頭に置いています。今回もいいディフェンスができていたからこそ、オフェンスへの余裕が生まれて3Pの確率も良かったのだと思います。その3Pも何本入れたかではなく、確率の方が大事。そして、この1本が、どうチームに貢献できるかを考えるようになりました」
古澤にとってアメリカ戦は、今回の遠征が初めてとなる。同じ持ち点3点台のマイキー・ペイやスティーブ・セリオと対戦し、彼は「もちろん怖さもあったし、今までに感じたことのない”必死さ”でプレーしていましたが、その反面、この高いレベルの選手たちとやれることが楽しかった」と語る。
帰国後、さらに過酷なトレーニングが待ち受けていることは、十分にわかっている。それでも「この遠征では全敗だったけれど、これからのことを考えると、今、すごくワクワクしています」と古澤。この言葉にこそ、日本がさらに強くなる可能性が映し出されている。
文・写真=斎藤寿子