【NBA】スーパースター兼チーム12番目のマインドを持つ静かなるリーダー、ステフィン・カリー

実力だけでなく。人間性でも称賛されているカリー[写真]=Getty Images

昨季優勝の陰にはカリーの変化があった

 今から約1年前、ゴールデンステート・ウォリアーズのケビン・デュラントが、ワシントン・ウィザーズ戦序盤で左膝を負傷し、約1か月間の戦線離脱となった。

 その後デュラントはプレーオフ前に復帰し、ウォリアーズは最終的にNBAファイナルでクリーブランド・キャバリアーズを4勝1敗で下して2年ぶりの優勝を決めたのだが、デュラントの欠場中、アンドレ・イグダーラと共にキャプテンを務めるステフィン・カリーに変化が見られた。

 とある日の練習で、チームメートたちはカリーの変化を感じたという。ベテランのデイビッド・ウェストは現地メディア『ESPN』に対してこう振り返っている。

 「彼を練習で見た時、これまで以上にアグレッシブになっていった。5対5の時なんて、まるで時速100マイル(約161キロ)くらいの速さだったんだ。シュートアラウンドの時もすごかったんだ。以前よりも声を出すようになってきたし、実践的にこなすようになっていた」。

 デュラントもカリーの変化を感じ取っていた。

 「そうだ、俺も見ていたよ。リーダーとして、リーグの中のベストプレーヤーの1人として変わったんだ。その時以来、彼はメンタル面で集中していた。その集中力が、昨年俺たちをタイトル獲得へと導いてくれたんだ」。

昨季のウォリアーズ優勝は、デュラント(上)と、最後まで見事な集中力を発揮したカリー(下)がいたからこそ達成できたものだったという[写真]=Getty Images

独自のスタンスで常勝チームのリーダーとして君臨

 普段のカリーはのんびり屋で、彼の声というのはそれほど響くものではない。そんな中、カリーは自身のアクション、行動を通じてチームメートへメッセージを送っているのである。カリーはそのことについてこのように話している。

 「何か言わなければならないのはどんな時なのかを学んできた。僕は自分のことをチームの中のベストプレーヤーの1人と考えることもなかったんだ。でも多くの面で、リーダーシップを発揮する役割を果たすために成長しなければならなかった。今も成長している最中だけどね」。

 カリーがチームをリードするうえで手本としているのは、デイビッドソン大の恩師ボブ・マキロップHCだ。「僕がチームをリードするうえで、最高の例はコーチ・マキロップなんだ。彼は叫んだりしなかったけど、彼が伝えようとしていることは選手たちへ確実に届いていた。彼はどのようにして選手たちに伝えることができるかを理解していたんだ」とカリー。

カリー(右)にとって、デイビッドソン大の恩師マキロップHC(左)はメンター(指導者、助言者)と呼べるほど大切な存在[写真]=Getty Images

 デイビッドソン大のバスケットボールチームにおけるモットーであり、チームをつなぐ言葉“TCC”も、カリーを語るうえで欠かせない要素だ。TはTrust(信頼)、CはCommitment(責任、約束)、CはCare(配慮)というこれらの言葉は、カリーの中に今でも浸透している。

 それに、カリーは試合中、納得のいかないコールやチームメートが危険なファウルを受けた時などに不満をあらわにするシーンがあるものの、基本的に穏やかな好青年だ。

 ウォリアーズのスティーブ・カーHCは、カリーの謙虚さ、そして人間性を絶賛している。

 「疑いもなく彼はスーパースター。でも(チームで)12番目の選手のように振る舞うんだ。フィルムセッションをしていても、彼は決して嫌がるような素振りを見せることはない。彼は本当にすばらしい男であり、良きチームメート。だから選手たちは彼のことをリスペクトする。それこそがキャプテンというものさ」。

 カリーには華麗なボールハンドリングやフィニッシュ、相手が反応できないほどの速さで放つ3ポイントシュートなど魅力的なプレーがいくつもあるが、それに負けず劣らず、チームメートやファンから愛される人間的な魅力も、十二分に備わっているのである。

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