4月15日(現地時間14日)から、計16チームによる今シーズンの王座を懸けた激闘、「NBAプレーオフ2018」が幕を開けた。バスケットボールキングでは、プレーオフ出場チームやシリーズ勝敗予想に加え、これまでのプレーオフにおける名シーンや印象的なシリーズ、ゲームなども順次お届けしていく。
<プレーオフ特別企画31>
NBAファイナル プレビュー
ゴールデンステート・ウォリアーズ×クリーブランド・キャバリアーズ
What's the path for the @cavs to win the #NBAFinals? 🤔#TheStarters pic.twitter.com/WvT5mIqCfK
— NBA TV (@NBATV) May 30, 2018
■2017-18シーズン成績
ウォリアーズ>58勝24敗(ウエスタン・カンファレンス2位)
キャバリアーズ>50勝32敗(イースタン・カンファレンス4位)
■2017-18シーズン直接対決戦績
ウォリアーズの2勝0敗
■ウォリアーズ
攻防両面で王者の恐ろしさは健在
ヒューストン・ロケッツとのカンファレンス・ファイナルは、ウォリアーズにとってここ4年のプレーオフで最もタフなシリーズの1つとなった。
第4戦から主軸のアンドレ・イグダーラを欠き、「すべてを変えて、アジャストしなければならなかった」とスティーブ・カーHCが語るほど、ウォリアーズはシリーズ途中に修正を余儀なくされた。1回戦、ウエスト準決勝ではフィールドゴール成功数のうち、実に70パーセントもアシストが占めていたのだが、ロケッツとのシリーズでは53パーセントにダウン。第4、5戦では100得点未満のロースコアな展開で、第4クォーターに勝ち切ることができずに連敗。
それでも、シリーズをとおしてケビン・デュラントが両チームトップの平均30.4得点を挙げ、ステフィン・カリーが同25.0得点、クレイ・トンプソンが同19.4得点をマークし、最後は自慢のオフェンス力でロケッツをねじ伏せた。このプレーオフにおける第3クォーターでは、100ポゼッションあたり33.1得点も相手チームを上回る爆発力を見せつけて圧倒している。
イグダーラの第1戦欠場が決まったため、先発にはケボン・ルーニーやジョーダン・ベルといった動けるビッグマンを起用することが予想される。それでも、チームの“ハート&ソウル”であるドレイモンド・グリーンは健在。今年のプレーオフで、グリーンはリーグ唯一となる20スティール20ブロック以上となる、58スティール33ブロックをマークしており、ディフェンダーとして申し分ないパフォーマンスを披露。カリー、デュラント、トンプソン、イグダーラ、グリーンという“死のラインナップ”こそ形成できないものの、ウォリアーズは依然として攻防両面において恐ろしいチームであることに変わりはない。
フランチャイズ史上初の連覇に向けて、視界は良好と見ていいだろう。
■キャバリアーズ
レブロンを援護射撃する選手たちのステップアップは必須
第4シードで臨んだ今年のプレーオフ。キャブスは1回戦(対インディアナ・ペイサーズ)とイースト決勝(対ボストン・セルティックス)では最終戦を制したことで、なんとか頂上決戦へと勝ち上がってきた。
レギュラーシーズンではロースターの入れ替わりやケビン・ラブの左手骨折による長期離脱もあり、ディフェンシブ・レーティングはリーグワースト2位の109.6と散々の出来だった。今季のキャブスがどれだけ苦しんでファイナルまで勝ち上がってきたかを表すデータがある。それは得失点差だ。レギュラーシーズンとここまでのプレーオフにおいて、キャブスの得失点差はわずか+1.0。この数字はファイナル進出を果たしたチームで、1981年のロケッツ(+0.8)以来の低さとなっている。
そういったネガティブな要素を吹き飛ばし、今季キャブスがファイナルに進出できたのは、レブロン・ジェームズという絶対的な存在がいたからにほかならない。レブロンはプレーオフ全体で平均41.3分に出場し、リーグトップとなる平均34.0得点に加え、9.2リバウンド8.8アシスト1.4スティール1.1ブロックを残しており、攻防両面でけん引してきた。
だが現実的に考えて、レブロンの大車輪の活躍があったとしても、ウォリアーズ相手にシリーズ勝利を収めることは至難の業となる。チーム2位の平均13.9得点、チームトップの同10.0リバウンドをマークしているラブは、セルティックスとの第6戦序盤に脳震とうのような症状に陥っており、イースト決勝の第7戦を欠場。状態は回復しているものの、ファイナル初戦の出場は前日の時点で未定となっている。そのため、ジョージ・ヒルとJR・スミスによるバックコート陣、ベテランのカイル・コーバーとジェフ・グリーンが得点面でレブロンを援護射撃すること、さらにはトリスタン・トンプソンがペイント内でリバウンドやディフェンスで良い仕事をすることが必須となる。
キャブスとしては、ここまで共に平均4.9得点と不振にあえいでいるロドニー・フッドとジョーダン・クラークソンが、この大舞台でステップアップすることができれば、オフェンス面でウォリアーズに対抗できるかもしれない。ただし、その保障はどこにもない。
■シリーズ予想 ウォリアーズ 4-2 キャバリアーズ
キャブスが接戦に持ち込んで勝利することができるか
4年連続となったこのカードだが、下馬評ではウォリアーズが圧倒的に有利。現地メディアや記者の予想を見ても、ほとんどが昨年(4勝1敗)と同様かスウィープでウォリアーズ優勝という答えがあふれかえっている。
ウォリアーズはイグダーラの復帰時期が未定ではあるものの、このプレーオフではカリー、トンプソン、デュラント、グリーンにルーニーを加えたラインナップで、リーグベストとなるディフェンシブ・レーティング(87.8失点)を残している。キャブスのオフェンスをストップさせるには、この5人が適任と言っていいだろう。
また、キャブスの生命線である3ポイントシュートに対しても、ウォリアーズは自信を持っているに違いない。というのも、プレーオフ出場チームのうち、ウォリアーズは被3ポイントシュート成功率で31.7パーセント(リーグベスト)しか許していないからだ。
ウォリアーズとキャブスはプレーオフ突入後、ディフェンス面の改善があったとはいえ、データで見るとウォリアーズ優勢と言わざるをえない。
キャブスとしては、レブロン以外の選手たちがウォリアーズのディフェンスをどのように打開していくかが勝利を挙げるカギとなるだろう。キャブスはトランジションからの得点で平均14.8得点と、プレーオフ出場チームで2番目に低いことから、時間を使ってじっくり攻めていくことが予想される。
『Second Spectrum tracking』によると、キャブスはチーム全体のショットのうち、24パーセントがショットクロック残り6秒以内で放たれている。この数字はプレーオフ出場チーム中、最も高い割合となっており、レブロンを軸に慎重にオフェンスを遂行していると言っていいだろう。さらに、残り5分で5点差以内というクラッチ・シチュエーションにおいて、プレーオフ出場チーム中最多の7勝を挙げていることが、キャブスの持つ強みとなる。
このプレーオフにおけるキャブスのベストラインナップは、ヒル、スミス、レブロン、グリーン、トンプソンの5人。100ポゼッションあたり、25.7得点も相手チームを上回っており、ウォリアーズとのシリーズでも多用することになるだろう。
キャブスとしては、リーグベストのオフェンシブ・レーティング(111.6得点)を記録する前半でリードを奪い、ウォリアーズが最も得点力を発揮する第3クォーターを耐えて、第4クォーターに接戦へと持ち込み、勝利したいところ。
このシリーズのポイントとなるのは、シーズン中に途中加入したヒル、フッド、クラークソン、ラリー・ナンスJr.だろう。この4選手はキャブスの一員としてシーズン中にウォリアーズと戦っておらず、Xファクターとなるかもしれない。
特にヒルは、レブロンと共に出場している400分という時間帯で、+71点をもたらしている。その一方、ヒル不在でレブロンと他のチームメートが出場していると、343分で-33点と大幅にダウン。このファイナルではヒルの活躍が重要となりそうだ。
とはいえ、両チームのロースターと個々のタレントを見ていくと、ウォリアーズが優勢なのは否めない。ウォリアーズにはデュラントやグリーン、トンプソン、そしてイグダーラといった選手をレブロンにマッチアップさせることができるが、キャブスはカリーにデュラント、トンプソンといったリーグ有数のスコアラーたちをスローダウンできるだろうか。キャブスはディフェンス面で大きな不安を抱えている。
シリーズ中、キャブスが接戦に持ち込み、レブロンの大爆発で1、2勝することはできても、シリーズを制することはさすがに厳しいだろう。よって、4勝2敗でウォリアーズが連覇を達成すると予想した。