ウェイドとシャックを中心に初優勝を成し遂げた2006年のヒート
2005-06シーズン。マイアミ・ヒートはキャリア3年目のスーパースター、ドウェイン・ウェイドと在籍2年目のリーグ最強センター、シャックことシャキール・オニール(元ロサンゼルス・レイカーズほか)を軸に臨んだ。
直前のシーズンでヒートはNBAファイナル進出にあと1勝まで迫る強さを誇っていたのだが、05年夏にアントワン・ウォーカー(元ボストン・セルティックスほか)やジェイソン・ウィリアムズ(元サクラメント・キングスほか)、ゲイリー・ペイトン(元シアトル・スーパーソニックスほか)といった個性の強い実力派を複数獲得。豪華戦力となったことで、優勝候補の筆頭と目されたことは言うまでもない。
ところが、シャックが開幕2戦目で負傷してしまい、約1か月間の戦線離脱。新加入選手たちとの連係がうまくいかなかったこともあり、ヒートは勝率5割を上回るのがやっとという状況に。
するとヒートは、シャックが12月中旬に復帰後、11勝10敗となった時点でスタン・バン・ガンディHCを解任。後任にはレイカーズやニューヨーク・ニックスで指揮を執っていた名将で、当時はヒートのバスケットボール運営部門代表を務めていたパット・ライリーが現場復帰を果たす。
レイカーズの指揮官として4度の優勝経験を誇る名将の登場により、ヒートは徐々に息を吹き返していく。チームケミストリーも次第に構築されていき、06年2月中旬から10連勝を記録するなど貯金を増やし、イースタン・カンファレンス2位の52勝30敗でレギュラーシーズンを終える。
プレーオフに入ると、シカゴ・ブルズとの1回戦で2勝2敗のタイに持ち込まれ、ニュージャージー・ネッツとのイースト準決勝では初戦で12点差の大敗を喫したものの、そこからギアを上げて勝ち上がっていった。
2年連続となったデトロイト・ピストンズとのイースト決勝では、ウェイドが大爆発。前年のシリーズ終盤でわき腹を痛めてしまい、不完全燃焼に終わったウェイドは、シリーズ初戦から積極果敢にピストンズの鉄壁ディフェンスを突破してリングを強襲。ウェイドはシリーズ平均26.7得点5.2リバウンド5.5アシスト1.8スティール1.5ブロックに加え、61.7パーセントという驚異的なフィールドゴール成功率をマーク。ヒートは4勝2敗でピストンズを下し、チーム史上初となるNBAファイナルへ。
ダラス・マーベリックスとの頂上決戦では、0勝2敗から奇跡の4連勝を飾り、4勝2敗でフランチャイズ史上初の優勝を成し遂げた。シリーズ平均34.7得点7.8リバウンド3.8アシスト2.7スティールを挙げたウェイドが文句なしでファイナルMVPを獲得し、シャックも平均13.7得点10.2リバウンドを奪取。裏方として貴重な働きを見せ、ヒートの初優勝に貢献した。
ヒート史上最高の選手、ウェイドの“フェアウェル・ツアー”が幕を開ける
あれから約12年。ウェイドは現役最後のシーズンとして、今季に臨むことが発表された。今回は、ヒートのレジェンドに対し、シャックが自身の感情をあらわにしていたので紹介したい。
9月21日(現地時間20日)、現地メディア『The Sun Sentinel』に掲載された記事の中で、 シャックはこう語っていた。
「うらやましいね。今はただうらやましい。俺も“フェアウェル・ツアー”をやりたかったからな」。
キャリア終盤のシャックは、フェニックス・サンズやクリーブランド・キャバリアーズ、ボストン・セルティックスと渡り歩き、2010-11シーズンを最後に現役引退。シーズン前あるいは途中に引退を表明していなかったため、シーズン中にアウェーで訪れた都市やホームのファンから感謝される機会があまりなかった。シャックはこう続ける。
「俺はカリーム(カリーム・アブドゥル・ジャバー/元レイカーズほか)やマジック(アービン“マジック”ジョンソン/元レイカーズ)、バード(ラリー・バード/元セルティックス)の“フェアウェル・ツアー”を見てきた。どれもすばらしく、歴史に残る選手たちは誰もがこのツアーを行うに値する。D-Wade(ウェイドの愛称)は歴史に残る選手。彼はリーグ史上で見ても、シューティングガードとしてトップの1人に入る選手だ」。
ヒートで主力として通算3度の優勝を飾ったほか、ウェイドはこのフランチャイズにおいて、幾多の部門で歴代トップの数字を残しており、ヒート史上最高の選手と言っても過言ではない。
「彼が“フェアウェル・ツアー”を、ウェイド・カントリー(マイアミ)で行えるんだから俺はハッピーさ」とシャックが語ったように、ウェイドのキャリアを称えるにはベストな環境と言っていいはずだ。
現在、『NBA on TNT』でNBAアナリストを務めるシャックも、現役最後のシーズンをプレーするウェイドに対し、試合会場で感謝を述べて互いのキャリアを祝福するに違いない。