師と仰ぐコービーの死去から立ち直り、54得点の超絶パフォーマンスを披露
1月27日(現地時間26日、日付は以下同)。NBAのスーパースター、コービー・ブライアント(元ロサンゼルス・レイカーズ)がヘリコプター墜落事故によって帰らぬ人となった。
現役引退から3年以上が経過したものの、ビジネスマン、そしてNBA選手たちのメンターとして計り知れない影響力を誇っており、現役選手やレジェンドたちからコービーとのエピソードが数多く報じられた。
今回はコービーを師と仰ぐカイリー・アービング(ブルックリン・ネッツ)のエピソードを紹介していきたい。
コービー逝去というショッキングなニュースを受けて、カイリーは同日予定されていたニューヨーク・ニックス戦を個人的な理由で欠場。翌デトロイト・ピストンズ戦から復帰して20得点を挙げると、2月1日のシカゴ・ブルズ戦で超絶パフォーマンスを世界中へ披露した。
この試合、カイリーの右腕から放たれたショットは面白いようにリングをくぐり抜け、第1クォーターだけで16得点、その後もペースは落ちず、終わってみれば圧巻の54得点をマーク。フィールドゴール23投中19本(成功率82.6パーセント)、3ポイントは9投中7本(成功率77.8パーセント)、フリースロー10投中9本(成功率90.0パーセント)という驚異的なスコアリングショーを演じたのである。
試合後のインタビューで涙をこらえながら「彼は哲学者であり先生だった。僕らに多くのすばらしいものを遺してくれたんだ」とコービーへの思いを口にしたのだが、右肩のケガにより、2月上旬に手術へ踏み切って今季を終えた。
コービー相手に仕掛けた1on1でパンチされた挙句にブロックの餌食に…
新型コロナウイルスの影響により、NBAがレギュラーシーズンを中断してから約2週間が経過した3月29日。カイリーは高校時代のチームメート、ジェレマイア・グリーンのインスタライブに登場し、クリーブランド・キャバリアーズ在籍時のコービーとのエピソードを明かしていた。
カイリーにとってキャリア2年目の2012年12月12日。キャブズはホームのクイックン・ローンズ・アリーナでレイカーズを迎え、コービーに42得点の大爆発を許すも、100-94で勝利を収めた。カイリーは28得点6リバウンド11アシストで勝利に貢献していたのだが、忘れられないシーンがあったという。
この試合の第3クォーター中盤。左エルボーからカイリーがコービー相手にドライブを狙うも封じられ、トップ・オブ・ザ・キーへ戻ってコービーへ1オン1を仕掛けた。カイリーは当時の状況についてインスタライブでこう話していた。
「俺がトップ・オブ・ザ・キーへ出ると、観客の声が聞こえた。彼らはまるで静かに爆発しているようだったんだ。で、皆が手をたたいて、まるで『今お前は何を思い出す? ニュージャージーの時を思い出せ。あの瞬間を思い出すんだ。お前の時間だろ』って感じだった。そこから俺は技を仕掛けたんだ。彼(コービー)が少し(コースを)塞いでたから俺はスピンした。でもその時、彼は俺が来ると待ち構えていて、パンチしてきた。パンチしてきたんだ! で、俺はコービーのことを評価したんだ。でも(ペイントエリアに)大勢いた中だったからね。彼らにしてやられたんだ」。
カイリーが繰り出したムーブの応酬もかなわず、コービーは真っ向からブロックショットをお見舞い。その後キャブズはセカンドチャンスでも得点できず、トランジションからコービーがカイリーのファウルをもらいながらフローターを放り込んだのである。
NBA史上最高とも評されるボールハンドリングスキルを誇るカイリーが思わず口にした「すぐにでも彼に会いたいね。天国で彼と1オン1がしたいよ。そこで仕返ししたいんだ」という思いは、きっと天国にいるコービーにも届いたことだろう。
どのエリアであろうとお構いなしにショットを沈めることができるカイリーのオフェンス力が、リーグ屈指なのは間違いない。いつの日かコービーと1オン1をしてリベンジすべく、さらにオフェンス力を向上させつつ、コービーのように相手を封じ込めるディフェンスを身につけることにも期待したい。