2022.01.31

漢気とスポーツマンシップ…エンビードがペリカンズのルーキーの罰金を肩代わりした理由とは

エンビード(左)とアルバラード(右)が試合中に激しく口論。ともにテクニカルファウルを宣告された[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 フィラデルフィア・セブンティシクサーズをけん引するチームの大黒柱、ジョエル・エンビードは、今シーズンのMVP候補に名乗りを上げている。1試合平均29.1得点はキャリアハイの成績で、移籍問題が取り沙汰にされているベン・シモンズを欠くシクサーズがイースタン・カンファレンスの3位に位置しているのは、この万能ビッグマンの圧倒的な支配力があるからに他ならない。

 そのエンビードは、1月26日(現地時間25日)に開催されたニューオーリンズ・ペリカンズとの一戦で、ドラフト外から同球団に加入したルーキーのホセ・アルバラードと口論を繰り広げた。第2クォーターの中終盤、エンビードがペリカンズのギャレット・テンプルにファウルを犯すと、アルバラードは激しくエンビードへと詰め寄る。そして、2人が胸を突き合わせて言い合いをすると、両者はダブルテクニカルファウルをコールされた。

 このプレーにより、アルバラードはリーグから2000ドル(約23万円)の罰金が言い渡された。しかし、同選手によれば、エンビードがこの違反金を肩代わりしてくれたようだ。後日、ペリカンズの練習場でレポーターと会話を交わしたアルバラードは、その出来事について以下のように語っている。

「彼に『俺はペナルティを払う余裕はない』って言ってみたんだよ(笑)。でも、彼は本当にクールな男で、僕の罰金を払ってくれたんだ。僕らは試合をとおしてコミュニケーションを取って、そこには愛とリスペクトがあったと感じている。あのテクニカルは瞬間的なヒートアップであって、パーソナルなことではない。2人のバスケットボーラーがぶつかり合っただけだよ」

 アルバラードのインタビューにより、エンビードの漢気が明らかになると、同選手にもマイクが向けられた。シクサーズの背番号21は、記者からの質問に対して、一連の出来事をこう振り返っている。

「彼のエネルギーに感銘を受けたんだ。彼は一生懸命プレーし、必死に競い合っている。彼がテクニカルを吹かれたときでさえ、彼は一歩も引かなかっただろ。俺たちは普通のトラッシュトークをしていただけで、コートで2人の男が対峙してたと思ってくれ。俺は引き下がることのない彼を尊重したかったんだよ」

「試合後に俺は彼のところに行って、『これからも戦い続けてくれ』とメッセージを伝えてきた。俺が彼にできることはそれぐらい(罰金を肩代わり)だと思っている。彼のテクニカルを引き出したのは俺自身だ。それに、彼は(ルーキーだから)リーグの他の選手に比べてサラリーが少ないだろうし、余計なお金を払ってほしくないと思ったんだよ」

 身長213センチのエンビードに対して、アルバラードはわずか183センチ。自身よりも30センチ身長の低いルーキーの熱量に、エンビードは気持ちが動かされたのだろう。

 まさに、NBAを象徴するようなスポーツマンシップ。チームメートからもバスケットボールと向き合う姿勢が賞賛されるアルバラードは、いつかリーグに必要不可欠な選手に成長するに違いない。

 文=Meiji

BASKETBALLKING VIDEO