2019.07.31

「小さいことを言い訳にしたくない。小さいことを強みにしたい」。本来の姿を見つめ直した足羽と浜松開誠館

高さの壁に挑んだ足羽(写真左)と浜松開誠館 [写真]=兼子慎一郎
バスケットボールキング編集部

 7月30日、「令和元年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」は3日目を迎え、いちき串木野市総合体育館では女子3回戦が行われた。これに勝てばベスト8進出だ。

 くしくも敗れた後のコメントが同じだった。それは――

「小さいことを言い訳にしたくない。小さいことを強みにしたい」

 そう語ったのは足羽高校(福井県)の林慎一郎コーチと浜松開誠館(静岡県)の三島正敬コーチだ。足羽は優勝候補の一角、岐阜女子高校(岐阜県)と対戦。一方、浜松開誠館は全国の常連で強豪の札幌山の手高校(北海道)と相まみえた。

優勝候補の一角、岐阜女子に立ち向かった足羽

足羽の杉本りくはコート狭しと走り回った [写真]=兼子慎一郎

 3試合目のコートに立った足羽はこのチームの武器であるオールコートで激しく当たるディフェンスで活路を見出そうとした。しかし、岐阜女子は決して動じない。司令塔の藤田和がボールを確実にキープして自分たちのリズムでオフェンスを仕掛ける。ゴール下で待ち構えるイベ・エスターチカンソにアシストを配給すれば、林真帆の3ポイントを呼び込む組み立てで実に11個ものアシストを数えた。

 足羽も前日の湯沢翔北高校(秋田県)戦で57点をたたき出した杉本りくを中心に攻め立てるも、岐阜女子の堅いディフェンスと高さのあるリバウンドに跳ね返され、点差を縮めることはできなかった。最終スコアは87-74で岐阜女子の勝利。しかし、試合後の林コーチは満足した表情で取材に対応した。

「前日の試合の疲れなどで集中力を欠く場面もあったが、うちのスタイルはやり抜けたと思う」

 スタッツを振り返れば、リバウンドでは岐阜女子の48本に対して足羽は33本と15本もの差をつけられた。しかし、岐阜女子に16本ものターンオーバーを誘発させ(足羽は7本)、オールコートのディフェンスが機能していたことを物語っている数字となった。

「『最後まで諦めるな』と選手たちには言っていた。今日の内容なら息の根を止められていない。この先にあるウインターカップのためにも足羽のバスケをやり切ること。手ごたえを感じただけに、後は自分たちのバスケをやり切るだけだ。小さいことを言い訳にはしない。サイズがなくてもやれるバスケがある。ウインターカップではそれを披露したい」

 林コーチの満足した表情はこんな理由があったからだった。

札幌山の手の能力と高さに挑んだ浜松開誠館

浜松開誠館を牽引する松岡木乃美 [写真]=兼子慎一郎

 第4試合に登場した浜松開誠館は、ティップオフ直後からオールコートに激しく当たるディフェンスで札幌山の手の機先を制した。またこまめにメンバーチェンジを繰り返し、常にフレッシュな状態で選手をプレーさせ、ディフェンスの強度が落ちないように三島コーチは采配を振るった。

 第1クォーターは互角の展開となったが、第2クォーターの終盤、得点が止まった浜松開誠館に対して札幌山の手の中村華祈や舘山萌菜が着実に得点してリードを広げていく。第3クォーターに入っても、浜松開誠館のディフェンスに慣れてきた札幌山の手のガード陣が落ち着いてインサイドにボールを集め次第にリードを広げていく。

 残念だったのが浜松開誠館のシュートミスが多かったこと。それは速攻でのレイアップシュートやオフェンスリバウンドを奪ってからのセカンドショットがことごとくリングを弾き反撃のチャンスの芽を自ら摘み取ってしまった感がある。松岡木乃美が思い切りのいいドライブで札幌山の手の防御網を突破しても、それを得点につなげられなかった。

 三島コーチは「今のチームに足りないものがすべて出た感じ。粘れるけどやりきれないから勝ちきれない…」と林コーチとは対照的に悔しさをにじませた。そして同様にウインターカップへの課題を挙げる。「この弱さをどう克服していくか。ウインターカップに向けてやり直し。小さいことを言い訳にしたくない」

 実はこの両チームに共通点がある。それは昨年のチームには足羽には林未紗(現:筑波大学)、浜松開誠館には鈴木侑(現:筑波大学)、石牧葵(現:愛知学泉大学)というアンダーカテゴリーで日本代表に選出されたエースを擁していたことだ。しかし、そのような選手を毎年排出できるわけではない。改めて自身のスタイルを見つめ直して、それを高めていくことで活路を見出そうとしている。

 今大会で得た手ごたえを確実なものにして、さらに課題を克服した姿をウインターカップの舞台で見てみたい。

文=入江美紀雄

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