毎節、Bリーグのタフショットを厳選してピックアップする「BEST of TOUGH SHOT Weekly TOP5 presented by G-SHOCK」。Bリーグ2017-18シーズンの第10節から選ばれたタフショットトップ5を大塚商会アルファーズ(B3所属)の青野和人ヘッドコーチに解説してもらった。
解説=青野和人(大塚商会アルファーズ ヘッドコーチ)
写真提供=Bリーグ
【5】#27熊谷尚也 大阪エヴェッサvs西宮ストークス GAME2
栃木ブレックスのロールプレーヤーから大阪でチームの軸となってきた#27熊谷選手の規格外のアリウーププレー。第1クォーター残り1分43秒、西宮は選手交代でオフェンスから入る。#2ドゥレイロン・バーンズ選手の強気な3ポイントシュートが外れ、大阪に速攻のチャンスが生まれる。西宮のゾーンはエリアを守るものだが、やはりエリアに戻りながらもある程度マッチアップは必要となる。#17木下博之選手は、後から来る#11デイビッド・ウェア選手に気を取られているディフェンスを見て、その裏を狙いハーフコート付近から絶妙で正確なパスを出した。先に走っている#27熊谷選手は取るだけでも大変そうなパスをダンクシュートし会場を沸かせた。3ポイントも40パーセントの成功率で、こういった能力を活かしたプレーもできる。チームを引っ張らなくては、という熊谷選手の強気なプレーに彼の将来が楽しみである。また彼を使い続け、我慢して育てたことでこういうプレーを生んでいるというコーチの器量の大きさも素晴らしい。
【4】#6比江島慎 シーホース三河vsアルバルク東京 GAME2
均衡を破りターニングポイントとなった#6比江島選手のスキルの高いドライブからのダブルクラッチショット。A東京の激しいディフェンスに苦しみ、あまりシュートの確率が良くなかった今節。両ウイングに#14金丸晃輔選手と#16松井啓十郎選手を抱え、ポイントガードとしてゲームの起点となった時間帯にアウトレットパスをもらう。ハーフコートを超えた付近で、#32桜木ジェイアール選手のオンボールスクリーンを使いながら、巻きこむようにドライブをしてディフェンスを抜き去った。ヘルプディフェンスもインアウトドリブルで揺さぶった後に、スピードを殺さず踏みきってブロックショットを交わし倒れながらもシュートを決めた。ここでは、第3クォーターの終わりに、ショットクロックをフルに使いシュートで終わると思ってディフェンスの戻りが甘かった。この空気感の流れを読んでアタックし、このシュートの前にも難しい3ポイントシュートを決めていて、少ない時間に一気に得点ができる#6比江島選手の爆発力を見ることができた。
【3】#24田中大貴 シーホース三河vsアルバルク東京 GAME1
第4クォーター終盤、両エースが大活躍を見せる展開の中、ゲームを決定づける#24田中選手のビッグショット。残り38秒から#24田中選手と#31ジャワッド・ウィリアムズ選手がオンボールスクリーンを使う。それに対して三河はスイッチで対応した。208センチ120キロの元NBA選手が1on1でディフェンスしてきたら、大抵の日本人選手は外打ちを選ぶであろう。#24田中選手は数回浮くような動きを見せてディフェンスを外に少し引っ張り、ベースラインを鋭くドライブ。バックシュートをすばやく打ったため、ブロックショットも間に合わず得点となった。#24田中選手の機動力が勝る素晴らしいプレーの裏には、残り45秒時のタイムアウトで使ったシンプルな戦術が機能している。三河の2人のビッグマンはオフェンスでは驚異的な破壊力だが、ディフェンスとしては外が守りにくい。#31ウィリアム選手には3ポイントがあるため、フラットスクリーン(ベースラインと並行な角度)をしっかり掛けられると、ボールマンにヘッジした後に戻ることもできないので、スイッチしないと対応しにくい。しっかりスイッチをさせ、#24田中選手に勝敗をベストな形で作るベンチワークの勝利でもあるように見える。
【2】#24高橋耕陽 富山グラウジーズvs滋賀レイクスターズ GAME1
チーム最多20得点のうち、第4クォーターだけで9得点を挙げ、試合を決定づけた#24高橋選手のバスケットカウントショット。第4クォーターのシーソーゲームは滋賀の外国籍選手のファウルトラブルの中、日本人選手たちが高さに対してドライブ&キックで動きのあるオフェンスを展開し、一進一退が続く。残り1分、#24高橋選手の逆転3ポイントが入り、この1本のディフェンスが今日のゲームを分けるという場面。高さでは圧倒的に不利な状態で、ここでは2回オフェンスリバウンドを取られるも、機動力のあるローテーションでなんとか守り抜き、ブロックショットから速攻が出た。#7並里成選手のボールプッシュであっという間に2on1の状態ができる。トップスピードでありながらしっかりとディフェンスを見て、叩かれながらもスピードを落とさず右手で早めにレイアップシュートを決めた。そのままの流れでベンチの方に走っていくと、感極まったベンチメンバーにグチャグチャにされる。オンザコート2に対して、1で長い時間を全員で乗りきり、逆境を乗り越えたことで自信と絆が深まった瞬間を物語る場面であった。
【1】#6ロバート・サクレ 川崎ブレイブサンダースvsサンロッカーズ渋谷 GAME2
インサイドでコツコツと得点を重ね続けた#6サクレ選手の逆転3ポイントショット。第4クォーターのオフィシャルタイムアウトから熱量が上がり、両チームともバスケットへのアタック回数が増える。残り10秒、一番ファウルしたくない#14辻直人選手に、ファウルゲームをしなくてはいけない状況となり、SR渋谷が苦しくなった。しかし、2投目が落ち、SR渋谷のオフェンス。#9ベンドラメ礼生選手がボールをプッシュしてミドルレーンにディフェンスを引きつけ、トレーラーとして入ってきた#6サクレ選手にパスを出した。シーズンで234本の2点シュートに対して、4本しか打っていない3ポイントシュートを、同点狙いではなくこの場面で迷わず打った#6サクレ選手の勝利への執着心を讃えたい場面である。バックボードは狙ったものとしておきましょう。タイムアウト直後でもなく、予想とは違う場面(フリースローが落ちる)ではこのように集中力が試され“Good player”と“Great player”の差が生まれる。前者は記録に残るが、後者は記憶に残り、やはり土壇場に強く勝利を引きつけることができる。