2023.12.25

名将・モンデーロHCのもと新たなスタートを切ったトヨタ紡織の現在地

国内外で多くの実績を持つモンデーロHCがトヨタ紡織を強化中 [写真提供]=日本バスケットボール協会
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

 12月14日に行われた皇后杯ファイナルラウンドの準々決勝、第2試合はトヨタ紡織サンシャインラビッツとデンソーアイリスとの『刈谷対決』となった。

「相手の得点を60点台に抑える」(ルーカス・モンデーロヘッドコーチ)というプランだったトヨタ紡織は、前半を終えて33失点。これは予定通りではあったのだが、自らの得点が思うように伸びない。12点を追う後半も得点ペースは上がらず。逆に後半は39失点と前半以上に得点を許してしまい、43-72で敗れた。

「前半のディフェンスはよかったです。デンソーはインターナショナルプレーヤーが3人いる中で抑えることができていたし、(多少の)ミスはあったけれど、しっかりと遂行できたのではないのかと思います」と、ディフェンスに及第点を与えたのは指揮を執るモンデーロHC。しかしオフェンスに関しては、「2ポイント、3ポイント、フリースローと、すべてにおいてノーマークのシュートが入りませんでした。強いチームと戦うときはどんなにいいディフェンスをしてもシュートが入らないと勝てない。イージーシュートを外すと相手にブレイクをやられてしまい、そこで点差がどんどんと開いてしまいます」と、言及。

 特にシュートについては「ノーマークのシチュエーションはよく作れていたし、2ポイントと3ポイントともにバランスよく打てていたので、シュート成功率のところだけが少し残念に思っています。選手全員よく頑張ってくれたので、もう少し成功率が良かったらもっと面白い試合になったと思います」と、フリーの状況で打てたシュートを落としたことを悔やんだ。

 トヨタ紡織は、今シーズンからモンデーロ氏が指揮官に就任。同氏は、母国スペインで女子代表のヘッドコーチとしてリオデジャネイロオリンピックの銀メダルをはじめ幾多の好成績を残し、クラブチームでもロシアや中国などで優勝経験がある。日本では2019︎-20︎シーズンから2021︎-22︎シーズンまでの3シーズン、トヨタ自動車アンテロープスを率い、その間、Wリーグで2連覇を達成している。今シーズン、その名将が新天地で見せる手腕には開幕闘将から注目が集まっていたが、実際、ここまでのチーム作りはどのような状況なのかを聞いた。

「以前よりもディフェンスのところはいろいろなことができるようになってきていると思います。ただ、シュート成功率が良くないです。オフェンスでアドバンテージを作れなかったらそれは懸念材料にはなるけれど、そこは作れている。あとはシュート成功率だけです」

 トヨタ自動車でもモンデーロHCのもとでプレーした経験を持つ河村美幸は「試合の中での(求められることの)変化に対してまだ選手たちは慣れていないというか。対応力はこれからだと思います」とコメント。ただ、指揮官が替わり新しいバスケットや新しい環境に慣れるには時間がかかることも想定内ではある。モンデーロHCも「トヨタ自動車の1年目も(今と)同じように(選手たちの)頭が少し重かったのですが、一旦慣れたら、その後はそのまま右肩上がりで良いプレーをしてくれました」と振り返る。

トヨタ自動車でモンデーロHCから指導を受けた経験を持つ河村美幸(右) [写真提供]=日本バスケットボール協会


 今季の皇后杯はベスト8で終わった。このあと続くWリーグの後半戦に向けては「プレーオフまでにいいところまで持っていけたら」と、モンデーロHCは青写真を描く。

「今シーズンもそうですが、来シーズンはさらに飛躍できるように、(チームを)押し上げていけたらいきたいです」

 指揮官はしっかりと先を見据えていた。

文=田島早苗

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