Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
火を付けたのは馬瓜エブリンだった。
12月17日に行われた「第90回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」の決勝戦。ENEOSサンフラワーズと対戦したデンソーアイリスは、出だしから高田真希、馬瓜、篠原華実らのシュートで先行する。とはいえ、そこは10連覇中のENEOS。点差をひっくり返される可能性もあったのだが、開始約5分のところで馬瓜がボールを奪って速攻を決めると、これがバスケットカウントとなる。馬瓜は力強くガッツポーズのパフォーマンス。その約40秒後にはミドルシュートも沈め、流れを引き寄せた。この馬瓜の活躍もあったデンソーは、髙田のドライブからのシュートも炸裂し第1クォーターを21ー13とリード。第2クォーターに入るとベンチから出場した赤穂さくらが小気味よくシュートを沈めて、前半を41-21と大きくリードした。
後半に入っても、思うように外角シュートが入らないENEOSとは対照的に高確率で3ポイントシュートを沈めたデンソー。最後は89-56と大差を付け、初優勝を果たした。
「今までいた選手が良いことも悔しいこともいろいろなことを経験してコツコツ練習を重ねてきた結果でもありますが、勢いをもたらしたのは間違いなくエブリンのおかげ。チームに掛ける言葉もそうですし、エブリンはWリーグで優勝を経験している。そういったメンタリティの面でも選手に問いかけてくれますし、練習でもポジティブになるような声掛けをずっとしてくれています」
記者会見の席で今シーズンから加入した馬瓜についてこのように語ったのは髙田。試合での流れを引き寄せるプレーもそうだが、プレー以外での馬瓜の貢献にも感謝の言葉を発した。
馬瓜は、桜花学園高校(愛知県)を卒業すると、現在のアイシンウィングスに入団。3シーズンプレーしたのちにトヨタ自動車アンテロープスへ移籍し、5シーズンを戦った。その間にWリーグ優勝を2度経験している。そして2021-22シーズンを終えると1年の休養を宣言。休養中はバスケットのイベントを行ったり、テレビ出演や起業と多方面で活躍した。そして今シーズン、デンソーアイリスに入団し、2シーズンぶりに選手としてWリーグの世界へと戻ってきた。
「結果として1年休んで良かったと思います」という馬瓜は、その理由に休業中での様々な経験から「トヨタ自動車の頃と比べて周りが見えるようになった」という。そして「周りが見れるようになったことは、プレーにもつながっていると思います」とも付け足した。
試合後の記者会見では赤穂ひまわりが「いつもなら逆転されてしまうところを少しも緩めることなく最後まで戦えたことが優勝できた要因だと思います」とコメントしたが、この緩むことなく戦えたことの一つをこのように語ってくれた。
「一人ひとりが強い思いを持ってやっていたというのもありますが、流れが悪くなりそうな瞬間にエブリンさんが声をかけてくれて。少しでも良くないという雰囲気があればそれを感じ取ってハドルを組んでみんなの意識を引き締めてくれました」
もちろん、これまで長きにわたってチームを支えてきた髙田をはじめ、9年目となる赤穂さくらと篠原の2人は要所での働きでチームを盛り立てた。日本代表の主軸である赤穂ひまわりのここ数年での成長もしかり、木村や高橋未来、渡部友里奈らガード陣は積極的なプレーで加勢。3シーズン前、オリンピアンの本川紗奈生が移籍し、チームにとって貴重な『経験』が加わったことも大きい。そして優勝まであと一歩となったときに馬瓜が加入し、プラスアルファの力が引き出された。
優勝へのラストピースとなった馬瓜。すぐに再開するWリーグに向けては「目の前のことをコツコツやってきたからこその優勝なので、先を見過ぎずに目の前の試合に向き合って、一瞬一瞬の勝負にこだわっていきたいです。(リーグ戦では)良いときも悪いときもあると思うけれど、全員でもっと強くなって超えられるように頑張りたいです」と、次なる目標に狙いを定めていた。