Bリーガーにバッシュへのこだわりを聞いていく連載、第4回は、谷直樹選手(西宮ストークス)が登場。チームのオフェンスをけん引するシューターがバスケ人生で選んできたのは、どんなバッシュだったのだろうか?
取材協力=西宮ストークス
文=CARTER_AF1
足をつかんでブレないバッシュ、MIZUNO『WAVE REAL SLASHER』
――現在履かれているバッシュを教えてください。
谷 MIZUNOの『WAVE REAL SLASHER』です。
――それを選んだ理由は?
谷 柔らかすぎず、硬めの作りだったのが気に入った理由です。MIZUNOのバッシュは長く履いてきましたが、作りが柔らかくて軽いことが特徴だと言えるバッシュも多かったんです。しかしボディーが柔らかいと、バッシュの中で足をつかんでくれないというか、足が動いてブレてしまうこともあって。でも『WAVE REAL SLASHER』は少し重さがありますが、ボディーが硬くてしっかりした作りで、中で足も動きません。それもあって安定していると感じています。
――谷選手としては、特に作りが硬めで、中で足を抑えつけてくれる、というのがよいと感じるところでしょうか?
谷 そうですね。作りが硬くてしっかりしたもの、ということだと、ひとつ前に履いていた『WAVE REAL VERSA』もそうでした。ただ、あくまで僕自身の感覚的な部分なのですが、『WAVE REAL SLASHER』がさらに良いと思うのは、すぐ馴染む、というところなんです。『WAVE REAL VERSA』は新品だと、試合で履こうにもすぐには馴染まない感覚だったのですが、『WAVE REAL SLASHER』はすぐ足に馴染んでくれました。そこがさらに気に入っているところです。
――慣らし運転がなくて済む、ということですね。
谷 そうですね、その必要がないなという感じです。
――シューターである谷選手には、静から動へ、というプレーも多くあると思います。その谷選手自身のプレーに『WAVE REAL SLASHER』はどんな好影響があるでしょうか。
谷 硬くて強いバッシュなので、動き出しではグッと飛び出せますし、ボールを受けてからストップしてシュートを打つまでの動作では、しっかり止まって踏ん張れて、シュートの時(のリリースまで)真っ直ぐ跳べるんですよね。これは僕にとっては大きいです。
――続いて谷選手のこれまでについて質問です。バスケットボールを始められたのはいつ頃ですか?
谷 小学校4年生の頃です。
――バスケを始めてからこれまで、どんなバッシュを履いてきたかを教えてください。
谷 初めはASICSのGEL BURSTだったように思います。同じチームではカンガルー革を使っている『POINT GETTER』を履いている子もいて、うらやましかったですね。中学生になって以降もASICSを履きましたが、さらにNIKEを履くようになって、モデル名は覚えていないのですがAND1も履いていました。
――なるほど。中学生になって以降ASICSを履きながらもNIKE等を履くようになった、そのきっかけは何かありますか?
谷 部活では基本的にASICSを履く部員が多かったんです。でも、うまい先輩たちはNIKEも履いていて。それがカッコ良くて、僕もNIKEを履き出したんです。あとはAND1もそうですけど、人と違うものを履きたいなという欲求が湧いてきて、それを満たすためというのもありました(笑) NIKEだと『ZOOM FLIGHT 5』のことはよく覚えていますし、高校生になってからはJORDAN (BRAND)も履いていました。JORDAN (BRAND)のモデル名は……すみません、これも思い出せないですね、とにかくセールで安くなったものを買っていたので(笑)。
――いえいえ、バッシュは本来消耗品ですから、コストパフォーマンスを考えればセール品を購入するのは非常によいことだと私も思います(笑) それでは、大学時代はいかがでしたか。
谷 大学時代はMIZUNOを履きましたし、NIKEやREEBOK、それにADIDASも履きました。これと決めたわけではなく、とにかく色々履きましたね。
バスケを楽しめるように、自分の足に合い、なおかつ個性を出せるバッシュを選んでほしい
――「よしMIZUNOにしよう」 と決めたのは、いつ頃ですか。
谷 大学を卒業してからですね。大学時代は色々履いてきましたが、ストークスに入団する時にはMIZUNOを選んで、それからはMIZUNOを履き続けています。
――逆に子供の頃に、「これは履きたかった」と憧れたバッシュはありましたか?
谷 ASICSの『POINT GETTER』ですね。ASICSの中でもランクの高いバッシュだったので、特に中学生の頃はずっと「いいなぁ」と思っていたんです。でも『POINT GETTER』は価格も高いじゃないですか、ですから自分が履くものは、買いやすいGELにしていました(笑)。
――たしかにASICSのGELシリーズはコストパフォーマンスも評価されていますよね。でも、「『POINT GETTER』を履きたい」と、親御さんにおねだりはしなかったのですか?
谷 いや~それはできなかったですね、あの値段ですし。僕ってそういうのは言い出せないというか、ちゃんと気を遣う子供だったので(笑)。
――なるほど、私は谷選手ならもっとぐいぐい行くのかと思っていたのですが、意外でした(笑)。では、過去履いてきた中で最も印象深いバッシュを、一つ挙げてください。
谷 う~ん、どれかを選ぶとなると、難しいですね。ああでも、ASICSの『GEL BURST SP2』は思い出深いですね、とにかく履きやすかったので。悪いところがないというか、履き心地をとにかく気に入っていました。履き潰したらまた買ってと、2~3足は同じものを履いたと思います。
――谷選手は当時どのポジションだったのでしょうか、『GEL BURST SP2』はそのポジションでも使いやすかったですか?
谷 一応フォワードでした。でも特に強豪校ではなかったものですから、僕はボール運びからゴール下まで全部やっていましたね(笑) どんなプレーをしても、『GEL BURST SP2』は足にしっくりきて履きやすかったのを覚えています。
――中学時代、高校時代に憧れたプレーヤーは?
谷 実は当時はあまり、プロ選手とかはわからなかったんですよ、NBAも見ていなかったですし。将来のことを考えたりすることはなくて、毎日部活に通っていただけでしたから(笑) ですから憧れたと言えば、同じ部活のうまい先輩でした。
――それでは、現在参考にしているNBAプレーヤーがいれば教えてください。
谷 クレイ・トンプソン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)ですね。あとはJJ・レディック (フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)【注1】。止まったらところからの動き出しやボールのもらい方を見て、いつも本当にうまいなと。ボールをキャッチしてからシュートまでの動きもスムーズですし、自分のプレーの参考にしています。
【注1:クレイ・トンプソンとJJ・レディックは、NBA屈指のピュアシューター。トンプソンはキャッチからのクイックリリースで放つシュート、レディックは豊富な運動量でディフェンスを振り切ってからのシュートに定評があり、両選手共に勝負を左右するビッグショットを決める強心臓を持ち合わせてもいる】
――Bリーグを見て、これからバスケを始めようとする人はたくさんいると思います。その皆さんのバッシュ選びについて、谷選手ならどんなアドバイスを送りますか?
谷 まずはお店で試着をして、サイズをきちんと合わせた方がいいと思います。それから、自分に合う機能のものを探すということ。試着しただけではわからないことも多いので、色々なバッシュを履いてみて、自分がこれだと思うバッシュを探してほしいですね。それに、あともう1つ付け加えると、試合ではユニフォームってチームで同じものを着るじゃないですか。だから違いを出せるのはバッシュだけになるので、そういう意味でも(デザインの面でも)好きだと思えるものを履いてもらえたらいいなと。やはりまずはバスケを楽しんでほしいので、自分の個性を出して楽しんでいけるようなバッシュを選んでもらえたらと思います。
――最後の質問です。谷選手にとって、バッシュとはどんな存在ですか?
谷 え~っと、この質問、カッコ良いこと言った方がいいですか?(笑)
――いえいえ、ぜひストレートにお願いします(笑)。
谷 そうですね、素直に言えば、“仕事の道具”ですね。これがあるから、プロとしてプレーできる。プレーに必要な道具、そう思っています。