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『B MY HERO!』
残り3分36秒、審判の笛が鳴った。
都野七海(3年)に、5回目の反則が宣告された。ファウルアウト――。無念にも、これが彼女にとって高校最後のプレーになってしまった。
それでもまだ試合は終わっていない。電光掲示板のスコアは59−60。今年のインターハイ以降、大阪薫英女学院高校(大阪府)は夏に改めて浮き彫りとなった課題「“都野頼み”からの脱却」(安藤香織コーチ)に取り組んできた。絶対的エースがベンチは退く事態になろうとも、もう1人のキャプテンである熊谷のどか(3年)を中心に戦い続けた。
しかし、ベスト4をかけた岐阜女子高校(岐阜女子)との「SoftBank ウインターカップ2022 令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は、66−69でタイムアップ。試合後の都野は、少しでも気を抜いたら泣き崩れそうな様子だったが、声を震わせながら試合を振り返った。
「自分のせいでチームが負けてしまったので、すごく悔しい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいです」
ウインターカップ前に行われた「U18日清食品トップリーグ2022」では、4勝3敗と思うように白星を挙げられず4位に終わった。都野はその後の練習を「いい雰囲気で再開できなかった」と明かす。
「バカになれ」。そんなチームを奮い立たせようと、安藤コーチからはそんな言葉をかけられた。何事にもポジティブに考え、練習からもっと明るく元気を出そうという意味だ。「キャプテンとして自分が一番バカにならないといけないと思ったので、練習中からバカみたいに声を出すことを意識しています」と、都野のメンタルも次第に明るくなっていった。
今夏のインターハイ、さらには昨年のウインターカップ準決勝でも都野はファウルトラブルに陥っている。その際はやり場のない感情を押し殺すように静かにベンチへ下がって行ったが、今回は違った。5回目のファウルを宣告された瞬間、都野は地団太を踏んで感情をあらわにした。
ファウルアウト後も誰よりもベンチで声を出し続けた都野。同点を狙った味方のラストシュートがリングに当たった際には、1人飛び上がった姿が見えた。コートではパーソナルファウルが高校最後のプレーになってしまったが、都野は仲間を、勝利を信じ、ベンチでも最後までプレーし続けたのだ。
地元の山口県から大阪薫英女学院の門を叩き、「最初は本当に喋れなかった」(安藤コーチ)あの頃の大人しい彼女はもういない。3年間を通じて日本一を掴むことはできなかった。けれど都野七海は、大阪薫英女学院の背番号4に相応しいキャプテンになった。
取材・文=小沼克年