2022.12.31

コートに立てなかったエースガードがベンチから見た景色…東海大福岡初のベスト4の裏で

試合には出られなかったが表彰式では笑顔を見せた東海大福岡の浜口 [写真]=伊藤大允
フリーライター

 12月28日、「SoftBank ウインターカップ2022 令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子の部は京都精華学園高校(京都府)の初優勝で幕を閉じた。

 6日間にわたり繰り広げられた接戦を振り返ったとき、どの試合、あるいはどのチームが頭に浮かんでくるだろうか――。きっと、福岡県代表の東海大学付属福岡高校を思い出す人も多いはずだ。同校は3回戦で桜花学園高校(愛知県)を土壇場で逆転して64−63で破り、その後も準決勝まで勝ち上がってインターハイに続くベスト4入賞。夏に続いてこのウインターカップでも同校初の快挙を達成した。

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 劇的な勝利で桜花学園の4連覇を阻み、確かな爪痕を残した同校だが、今大会のコートに立ちたくても立てなかった選手がいる。2年生の浜口さくらだ。

 彼女は今夏のインターハイでは全試合で先発ポイントガードを務め、得意のドライブを武器に得点源の1人としてベスト4入りに大きく貢献している。しかし、宮﨑優介コーチによれば、浜口は入学当時から右膝の半月板の状態が芳しくなく、どのタイミングで手術をするか考えていたという。今回のウインターカップでも不可欠な存在であることは間違いない。だが、まだ2年生で将来性もある。指揮官と浜口は、悩んだ末に今夏のインターハイ後に手術を行った。

「大会が始まる前までは試合に出る気でいました」と浜口が言うように、術後は順調に調整を続け、ウインターカップでは少ない時間でも出場できる準備はしていた。けれど、宮﨑コーチの判断で今大会は出場を回避。「出られないって聞いた時はちょっとショックでした」と浜口は振り返るが、自分が今チームにできることを全うしようと決めた。

「プレーができなくてもチームの雰囲気が暗くならないようにベンチでは一番声を出して、ホテルでもスカウティングをいっぱいして、メンバーに伝えられることは全部伝えようと意識して頑張りました」

 エースガードを欠いたなかでも、東海大福岡の選手たちは次々と勝利を重ね、前述の通り3回戦では今大会の大きなハイライトを作った。仲間の頼もしい姿をベンチから見守り、鼓舞し続けた浜口は、「桜花さんとの試合では苦しくなった場面で自分が何もできず、ただベンチで見ているのがちょっと悔しかったです。だけど、大会が終わった今はみんなが最後まで諦めずに戦ってくれてうれしいですし、東海大福岡に入って良かったと思える大会になりました」と、今回のウインターカップを振り返った。

 来年は浜口が東海大福岡の中心となり、周りにも今大会を経験した境さくら(2年)や伊東友莉香(1年)らがいる。「自分の目標は日本一のポイントゲッターになること」。そう宣言した浜口は、「来年も頼もしい仲間がいるし、東海大福岡は日本一仲がいいチームだと思うので、一緒に支え合って、日本一になりたいと思います」と続け、ウインターカップを後にした。

 頼もしいチームメートがくれた今回の銅メダル。次は自らのプレーで、もっと輝いたメダルを獲りにいく。

浜口をはじめとする下級生たちは新チームでベスト4を超える成績を目指す [写真]=伊藤大允


取材・文=小沼克年