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「令和5年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」が7月25日より開幕。初日は、女子は北海きたえーると札幌市白石区体育館の2会場にて行われた。
2年ぶりにインターハイに出場し、同じく2年ぶりに白星を挙げたのは四日市メリノール学院高校(三重県)。秋田中央高校(秋田県)を相手に第1クォーターからリードを奪うと、第3クォーターでは29得点を奪取。第4クォーターこそ得点が伸びずに苦しんだが、最後はリードを守り切って81ー72で勝利した。
四日市メリノール学院高校の稲垣愛コーチは、四日市メリノール学院中学校のコーチとして「全国中学校大会(全中)」と「Jr.ウィンターカップ」とで、それぞれ2度の優勝へと導いている指揮官。昨年の夏前から高校でも指揮を執ることとなったため、今回のインターハイが稲垣コーチにとっては初出場で初勝利となった。
ただ、稲垣コーチはU16女子日本代表のアシスタントコーチも務めており、7月10日〜16日の期間はヨルダンにて行われた「FIBAU16女子アジア選手権大会2023」に参加。そのため、インターハイ直前ではあったが、代表活動のために一時チームから離れていた。
しかし、「私のいないときが一番大事という話は(選手に)していました。高校生は志摩(香奈子/3年)がチームを一つにまとめてくれるので、心配はありませんでしたし、厳しくやってくれていたと思います」と、稲垣コーチは言う。実際、約2週間後にチームに戻ってきたときには、「踏ん張った後がみえた」とのことで、選手たちには「よく頑張ったね。頑張った先に次が見えるよ」と、声を掛けたという。
もちろん、稲垣コーチとともに指導にあたる他のコーチ陣の力も大きいだろう。だが、「私が言ったから練習するということは、やらされているということ。やらされてるバスケットは面白くないよねということは前から言っていました」(稲垣コーチ)と、かねてから自主性を重んじた練習をしているからこそ、コーチ不在でも、それをデメリットと捉えることなく練習に取り組むことができたのだろう。
秋田中央戦では、1年生の山下藍をはじめてスターターに起用。「こういった大きな大会での経験を積めるように。そうやってキャリアアップして、経験を重ねて次につなげていければいいかなと思っています。3年生も本当に頑張ってバックアップしてくれています」と、稲垣コーチ。もともと選手を多く使うタイプだという稲垣コーチは、「はじめての(全国大会の)試合。早くこの空気に慣れさせてあげたかった」と、第1クォーターでエントリーの全選手を出場させている。
さらに試合では、第3クォーター終盤にガードの大久保結奈(2年)からの絶妙なパスでセンターの秋葉妃奈詩(3年)がシュートを決めて、ベンチも応援団も大盛り上がりとなったシーンがあった。それについて稲垣コーチは、「ガードの大久保は中学時代に6番手の選手で、深津唯生(桜花学園高校2年)に入れるパスがピカイチの選手でした。高校でもそれと同じプレーを(秋葉に)するために、タイミングもしっかり測ろうとしていたし、(パスを受ける)秋葉もそれに応えようとしていました」と、教えてくれた。彼女たちの精度を上げるための努力を知っていたからこそ、みんなで好プレーを喜んだのだろう。
キャリアはまだ浅い選手たちが様々な試合経験や成功体験を積み、チームとしてもレベルアップを図っていく。「彼女たちの良さを出して、それをチーム力にしたいなという思いがあります」と、稲垣コーチ。初戦を突破して、また一つ貴重な経験を重ねた四日市メリノール学院は、26日の2回戦では土浦日本大学高校(茨城県)と対戦する。
取材・文=田島早苗
写真=伊藤大允