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八王子学園八王子高校(東京都)の2年生エースは、今回のウインターカップで平均32.7得点というスタッツを残した。しかし、チームはベスト16で敗退。藤枝明誠高校(静岡県)との「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」3回戦は序盤から9−25と後手に回り、41点差の大差で敗れた。
「自分は点を取ることが仕事なんですけど、チームを勝たせることも仕事だと思ってるので勝つことだけに意識を向けてます」
藤枝明誠との一戦を前にそう意気込んでいたのは、八王子学園八王子の十返翔里(2年)。191センチでスモールフォワードを主戦場とする十返は、高い身体能力と長い腕を生かして内外から得点を量産。時には軽々とダンクシュートをたたき込むダイナミックな点取り屋だ。
「ファストブレイクからの1対1が一番得意」という背番号12は、藤枝明誠戦で両チーム最多の28得点をマーク。しかし、試合を通じて思うようにペイントアタックができず、アウトサイドからのシュートを打たざるを得ない状況を作られた。3ポイントシュートを沈めても首をかしげる場面もあり、自身が挙げた得点と手応えが比例しなかったようだ。
「相手はディフェンスの足腰が強くてなかなか中にアタックができなかったです。自分が逃げてしまって、ドライブではなく本来やるべきではないタフな3ポイントが多くなってしまいました」
藤枝明誠には赤間賢人(3年)というエースがいる。大会屈指のスコアラーでもある赤間は第1クォーターから10得点を挙げて流れを呼び込むと、約27分のプレータイムで21得点。2ポイントは9分の4、3ポイントは5本中3本成功という確率でスコアを重ねた。
一方、八王子学園八王子のエースは約38分間で放ったフィールドゴールは27本。しかし、2ポイントは6本、3ポイントは3本の成功に留まった。
「全てにおいて自分よりも圧倒的に上でした。チーム力も大事ですけど、個々のタフさだったりファンダメンタルも今よりもっともっと必要だなって思いました」
学年が1つ上ではあるが、全国トップレベルに値するエースのプレーを肌で感じた十返はそう思ったという。
「やっぱりディフェンスがタフになると、自分たちが本来やるべきことはできなくなってしまいます。自分としても来年はどんなチーム相手にも本来のプレーができるよう、また1から作り上げていきたいと思います」
今春から伊東純希コーチが新指揮官となった八王子学園八王子にとって、2023年は新たなスタートを切った1年でもあった。ウインターカップのエントリーメンバーは15名のうち3年生は4名。十返に加え、平原侑真(2年)、ンジャイ パプンデリセク、畠山颯大(ともに1年)らが主軸を担う下級生主体のチームで戦い抜いた。
「人数は少なかったですけど、3年生たちが支えてくれたからこその自分たちのチームだったので、本当に3年生には感謝しています」
先輩たちを笑顔で引退させることはできなかったが、コート上で多くことを学んだ。この1年で積み上げた経験と悔しさ、そしてほんの少しの手応えを糧に、十返翔里はチームを勝たせるエースとして全国大会に戻ってくるはずだ。
取材・文=小沼克年