2024.05.22

「能代カップに出たからこそわかることがある!」…大会の意義・夏への意気込みを聞く【後編】

能代カップに初出場した東山(写真は鈴木凪)[写真]=バスケットボールキング
バスケットボールキング編集部

 能代カップ2024が5月3日から5日まで、能代市総合体育館で開催。大会結果は、優勝は開志国際高校(新潟県)、2位が藤枝明誠高校(静岡県)、3位が東山高校(京都府)、以下、日本航空高校(山梨県)、駒澤大学附属苫小牧高校(北海道)、 そして県立能代科学技術高校(秋田県)の順位となった。

 今回の能代カップは出場6チーム中、藤枝明誠、東山、日本航空、駒大苫小牧の4チームが初出場とフレッシュな顔ぶれがそろった大会となった。コーチたちの話を聞くと、異口同音に「一度は出てみたかった」「出場できて光栄」と口をそろえる。能代カップ2024レポートの後編では、大会初出場を果たした東山、日本航空、そしてホストチームの能代科学技術についてレポートする。

次第に見えてきた完成形に向けて課題が明確になった大会に

 ウインターカップの大会ベスト5に選ばれた経歴を持つ大澤徹也コーチにとっても「僕の年代からすれば能代はバスケの聖地! 能代カップは憧れの大会でした。今の子たちはいまいちピンと来ないみたいですけどね」と笑顔で答えてくれた。

指示を送る東山の大澤コーチ [写真]=バスケットボールキング


 2月には、NBAオールスターゲームが行われたインディアナポリスでのバスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・グローバルキャンプ、そして現在行われている日本代表のディベロップメントキャンプに招集された瀬川琉久を中心に、東山は今シーズンも注目チームの一つに数えられるだろう。昨年はインターハイ決勝、ウインターカップでは準々決勝で敗れただけに、今年にかける思いは強いはずだ。

 しかし、今大会では初日、開志国際に71−89で敗れると、2日目には藤枝明誠に73−100と大敗を喫してしまった。その後、3勝を挙げて3位に入ったものの、大澤コーチはチームの現状を把握できたようだ。

「開志国際以外とは今年になって戦ったことのないチームとやらせてもらいました。総チームに出だしにガーンとやられると面食らってしまって、自分たちのバスケができなくなりました。崩れると立て直しが効かない」と大澤コーチは課題を口にした。

「形はなんとなく見えているけど脆さがある」と、大澤コーチはもどかしさも感じたようだが、「(能代カップで)いろいろなブロックの強豪と試合できた経験は大きいですね」と、収穫はあったと言える。

 京都に戻ったらインターハイ京都府予選に向けて、「じっくりと期待直します」と前を向く。新人戦を制した東山だが、京都精華学園高校をはじめとするライバルたちは簡単な相手ではない。

「じっくりと足元を固めて、インターハイに進めたいですね」

 能代カップで得た“宿題”からその答えが導かれるかもしれない。

「目標はウインターカップ優勝」…そのための土台づくりを能代カップ

 昨年、北海道札幌市で行われたインターハイで初優勝を果たした日本航空。ウインターカップでは土浦日本大学高校に準々決勝で敗れたが、エースのオルワペルミ ジェラマイアと得点源の一人、大道一歩が最上級生となるだけに、今年も高校タイトルに絡んでくるのは必至だ。

日本航空のスタート5 [写真]=バスケットボールキング


 その日本航空にとって、全国で上位を狙うチームと大会を通して切磋琢磨することは「非常にありがたい」と指揮を執る山本裕コーチは強調する。「現在、新戦力を試しながら、チームとして修正を加えつつ、探り探りの状況でチーム作りをしています」と山本コーチ。

「新戦力にとってもこのレベルで試合ができるのはいい経験になっています。対戦相手はスカウティングをしてくると思いますが、それ以上のことを選手には要求しています」と、チーム強化にも手応えを感じているようだ。

 ただ、3日間で5試合をこなすスケジュールだけに「最終日になるとかなり疲れていますね。ベンチメンバーも含めて、チームの育成がポイントになります」と、インターハイに向けて課題も見つかったようだ。

「今年の目標はウインターカップ優勝。12月まで波はあると思いますが、楽しみにしています」

 能代カップからどれだけステップアップできるか!? 成長したプレーを全国の舞台で披露してくれうはずだ。

「最後まで走りきりことを目標」、能代カップで強化を進める

 今年から能代科学技術の指揮を執るのは能代工業OBの長谷川聡コーチ。田臥勇太宇都宮ブレックス)らを擁して黄金時代を築いた加藤三彦氏、元JX-ENEOSサンフラワーズのヘッドコーチで、現在は地元に戻って秋田銀行女子バスケ部のヘッドコーチを務める佐藤清美氏と同期で、高校3冠を達成した経験を持つ。日本大学、東芝(現川崎ブレイブサンダース)でプレーしたのち、東芝女子のヘッドコーチを務めた。

「県の新人戦1回戦で敗れたチームです。うちだけ全国区ではないのですが、最後まで走り切ることを目標に出場しました。主力のケガが多く、フルメンバーで臨めませんでしたが、一人ひとりがいい経験になったと思います」と、長谷川コーチは振り返った。

 ロスターに3年生がいない下級生中心のチーム。「1試合目は準備したことが全く出せなかった」と、駒大苫小牧に73−103で敗れた。その後、4試合全てに100点ゲームで敗れたが、「40分間戦う気持ちが出せないと成長できない」と、長谷川コーチがベンチから選手たちを鼓舞し、全国の強豪に食らいついていった。

能代科学技術は下級生中心のチームで大会に臨んだ [写真]=バスケットボールキング


 高さにやられるシーンは幾度とあったが、その中でルーズボールに食らいつき頭からダブしたり、早いボール出しから速攻を決めることもしばしば。何よりリバウドを奪われたとしても、ボールを下げたタイミングでボールをタップしてマイボールにする、“能代工らしい”バスケが試合を重ねるごとに見られるようになっていった。

「3ポイントシュートは水物なので、確実にレイアップで2点を取りに行きたい。そして攻撃の回数を増やしたいです」と青写真を描く長谷川コーチは「課題はリバウンド」と明確だ。

 かつてはホストチームとして覇を競い合ったが、新体制で臨んだ今回はまだまだその域には達していないのは事実だ。ただこうして全国の強豪の胸を借り、40分戦う気持ちで試合に臨められれば、これ以上の強化の場はないだろう。これもまた能代カップの役割と言えるかもしれない。

文=入江美紀雄