2024.06.16

恩師のバスケットを継承しながら全国を目指す千葉英和・藤岡麻菜美コーチ

千葉英和・藤岡コーチは「オフボールの動きの練習、状況判断というのを高めていきたい」と抱負を語った [写真]=田島早苗
フリーライター

母校のコーチとして独り立ち

「選手たちはよくやっていたと思います。ただ、フリースローを7本外しているので、これが半分、4本でも決まっていれば流れは少し変わったのかなと思います」

 6月8、9日に東京女子体育大学とアリーナ立川立飛とで行われた「第78回 関東高等学校女子バスケットボール選手権大会」。この大会に千葉県代表として臨んだ千葉英和高校は、決勝進出を目指していたものの、惜しくも2回戦で敗退。後に優勝する日本航空高校(山梨県)の前に74-82で競り負けた。

 試合後、先のように試合を振り返ったのは藤岡麻菜美コーチだ。

 藤岡コーチの選手時代の経歴は輝かしく、U15、16、17、18、19と全カテゴリーで日本代表として国際大会に出場。筑波大学では日本一を経験すると、ENEOSサンフラワーズでも優勝を果たし、日本代表としてもアジアカップ3連覇に貢献した。ENEOSで4シーズンでプレーした後、一度は現役を引退し、母校である千葉英和のアシスタントコーチに就任。その後、再びシャンソン化粧品シャンソンVマジックで現役復帰を果たすと、『デュアルキャリア』としてWリーグの選手と高校のコーチ業とを兼ねた。

 Wリーガーとしてのピリオドを打った昨年からは千葉英和のコーチに専念。指揮は昨年から執っていたものの、今年度からはこれまで千葉英和を強豪校へと作り上げ、恩師でもある森村義和氏が勇退したことで、本格的にメインのコーチとして奮闘している。

「森村先生は約50年現場に立たれている方。勝っている理由が何かしらあるとアシスタントコーチのころから思っていました。まだ探っているところではあるのですが、森村先生のバスケットを引き継ぎながらやっていきたいと思っています。やっぱり足作り。大きくないチームなので走ることは徹底しています」と、思いを語った藤岡コーチ。さらに「そこに私がいろいろ経験してきたことをプラスしてできれば。例えばタイミングや角度などといったことも細かく言っています」という。

 今は、「タイミングとスペーシング、これを特にやっています」と言うが、この言葉を聞いて合点がいった。というのも、小気味良いパス回しからズレを作り、連動した動きで得点を奪う千葉英和は、実に合わせのプレーが上手なのだ。

「自分とボールマンだけでなく、もう一人、少し先も見ようねということを言っていて、それを意識するようになって少しずつ合わせができるようになったのかなと思います」と、藤岡コーチ。また、試合中に無駄なドリブルが少ないのも「パッシングからの速いバスケット」を目指すスタイルに掲げているからこそであろう。

「小さいけれど面白いバスケットをするチーム」を理想とする藤岡コーチは、これまで現在男子日本代表のトム・ボーバスヘッドコーチをはじめ、現役時代には様々な名将から指導を受けてきた。その上で今のチームは「李玉慈さん(元シャンソンヘッドコーチ)のバスケットがハマるかなと思っています」とも教えてくれた。

藤岡のポジティブシンキングがチームに浸透

 そんな新指揮官についてキャプテンの渡部怜梨(3年)は、「負けているときもすごくプラスの思考が持てるようになったし、麻菜美コーチに教わってからバスケットのモチベーションも上がって前向きになれています」と、声を弾ませる。加えて、「合わせのプレーが決まると楽しいです。チームとして連動した動きができるようになってきたと思います」と、手応えも感じているようだ。

 渡部は、敗れはしたものの、日本航空戦では3ポイントシュート4本を含む38得点。「もともと2ポイントシュートしかなかったのですが、麻菜美コーチからフォームも変えてもらい、3ポイントシュートをたくさん練習してきました。今回の大会で決めることができたことは、いい収穫だったと思います」と、振り返る。

 そして「全国大会に出ることがチームの目標ですが、今のままでは届かないということがこの大会で分かりました。もっとチームで話し合って、自分が思っている以上の努力をしたいと思います」と、力強く発した。

「一緒に練習してくれたり、いろいろな技を教えてくれたりと、麻菜美コーチのプレーを参考にしています」と、エースの渡部 [写真]=田島早苗


 今年度よりENEOSなどでチームメートであり、同級生でもある大沼美琴アシスタントコーチがチームに加入。「部員が増えてきたところをサポートしてくれていますし、支えてもらっていますね」と、藤岡コーチにとっても頼もしい存在だ。

今年度から大沼Aコーチが藤岡コーチとともに同校の指導にあたっている(写真右) [写真]=田島早苗


 関東大会から1週間後にはインターハイ千葉県予選が待っている。「千葉県は本当にどこも強いし、チームのカラーも違う。だからこそ頭を使わないといけません。ここでまた踏ん張って。その先のウインターカップまでを見据えて、もう一度チームを作り上げていきたいです」と、若き指揮官は次なる決戦に向けて気持ちを新たにしていた。

文・写真=田島早苗