2023.08.25

「逆転の三股」…諦めない心と粘りのバスケットボールでつかんだ銀メダル

強豪たちに競り勝って初の準優勝に輝いた三股町立三股中学校 [写真]=吉田孝光
フリーライター

 8月22日から24日にかけて香川県で開催された「令和5年度全国中学校体育大会 第53回全国中学校バスケットボール大会」。女子準優勝となった三股町立三股中学校(宮崎県)は今大会、粘りに粘って勝ちをものにした。

 予選リーグの実践学園中学校(東京都)戦では残り5分を切って12点ビハインドからの逆転勝ち。決勝トーナメントでも気の抜けない戦いが続くなかで競り勝ち、準決勝では前回覇者の四日市メリノール学院中学校(三重県)との大一番を迎えた。

 その準決勝では前半で2点をリードしたものの、第3クォーターには怒とうの反撃に遭い、一時は13点ビハインドに。だが、四日市メリノール学院に負けないぐらい三股もまた、「自分たちは身長が低く、ディフェンスができないと絶対勝てないので1年間頑張ってきました」(小玉愛莉/3年)と、ディフェンスを磨いてきた。「ここで終わるのは三股らしくないので、1点ずつ詰めていけたらと思っていました」と小玉が言うように、堅いディフェンスで相手の得点を封じると、攻めてはインサイド、アウトサイドとバランス良く得点を記録。第4クォーター中盤に四日市メリノール学院を捉えると、残り約3分半には逆転に成功した。その後もリードを死守。最後は56-50で激戦を制し、初の決勝進出を決めた。

8月10日の九州大会決勝で足をねんざ。本調子ではないコンディションでも三股のエースとしてチームを引っ張った小玉 [写真]=吉田孝光

「前半は競るか、もしくは引き離されるかだと思っていたので、後半に粘って、粘って、『今だ』というところでいこうと考えていました。(相手は)うちよりもハードな試合が続いていたので、(試合の結果は)ショットが落ちた分の差。実力的にはメリノールさんのほうが上だと思います」と、横山祥子コーチは試合を振り返った。

 続く京都精華学園中学校(京都府)との決勝では、第1クォーターから先行を許す展開に。なかでも、「折尾中学校(福岡県)と九州でしのぎを削ってきて、折尾にもインサイドが2人いるので、(センターへの)守りは意識してやってきました。でも、6試合目の疲れもあって押し負けるなど、京都精華学園を相手にはうまくいきませんでした」(横山コーチ)と、185センチのンガルラ ムクナ リヤ(3年)、193センチのオディア カウェル リッツ(2年)の高さには手をこまねいた。それでも、後半には攻防においてギアを一段階上げたかのような激しい動きを見せて追い上げ。そこには、ライバルであり、仲間でもある四日市メリノール学院との関係があった。

「昨年は九州大会で1回戦負け。うちの選手たちは全国というものを1回も経験していないので、そこからすぐにメリノールさんに遠征に行き、胸を借りまして、全国のレベルの高さを感じました。そのメリノールさんが(準決勝に)負けたあとに一生懸命応援してくれたので、その思いをちゃんと乗せてバスケットをしようという話を(ハーフタイムで)しました」(横山コーチ)

センターではあるが3ポイントシュートも得意とする三股の小田陽夏子(2年/左) [写真]=吉田孝光

 試合では、準決勝での敗戦の傷も癒えないなか、四日市メリノール学院の選手たちが三股のベンチ上の客席で応援。ともに切磋琢磨してきた仲間からの後押しに三股の選手たちも奮い立った。最終的には57-83と金メダルには届かなかったが、日頃から「負けている場面でそれをひっくり返すような練習はしていました」(横山コーチ)と、取り組みの成果や三股の信条である『粘りのバスケ』は十分に発揮できたといえるだろう。

 三股が次に目指すのはジュニアウインターカップ。「もう一度、高さにどう対応するか。練習をして挑みたいと思います。アグレッシブさももっと加えたいですね」と、横山コーチ。キャプテンでエースの小玉も「夏は2位という形で終わったのですが、最終目標は全国制覇なので、ジュニアウインターカップでこの悔しさをバネに、ディフェンスをもっともっと磨いて頑張っていきたいです」と、力強く語った。

「優しい子が多い」(横山コーチ)という3年生を中心に、三股の挑戦は冬へと続いていく。

銀メダルを手に笑顔を見せた三股の選手たち [写真]=吉田孝光

文=田島早苗

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