2023.12.12

チーム不在も「エースだよ」先輩の言葉を胸に奮闘した1年…最後は頂点に届かず涙

今年は女子日本代表の一員としても奮闘した筑波大・朝比奈あずさ[写真]=田島早苗
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

■ 優勝候補に阻まれベスト8止まり

「自分たちには来年があるけれど、4年生たちにとってはこのチームでできる最後の大会。目標としていた日本一を達成することができなくてすごく悔しいです」

 試合後、チームミーティングを終えた筑波大学のセンター、朝比奈あずさ(2年/185センチ)は、目を赤くしながら涙の理由をこう答えた。

 12月8日、『第75回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ2023)』は女子の準々決勝が行われ、筑波大学(関東4位)は優勝候補筆頭の白鷗大学(関東1位)に挑んだ。

 前半こそ32-35と食らいついたが、第3クォーターに入ると得点ペースの上がった白鷗大についていくことができない。第4クォーターには粘りを見せたものの、追いつくまでにはいたらず、最後は68-80で敗れた。

「(ディフェンスで)相手の強いところを止めなくてはいけなかったし、逆にオフェンスでも相手の弱みを突くなど、もっとクリエイティブにバスケットを展開しなくてはいけなかったのですが、足が止まってしまい、大事な場面でリバウンドやポストで連続得点をやられてしまいました」と、試合を振り返った朝比奈。自身は14得点12︎リバウンドをマークし、ディフェンスではオコンクウォ・スーザン・アマカ(3年/186センチ)ら相手のインサイド陣に対して体を張ったプレーを見せたが、勝利を引き寄せることはできず。「大事なポジションをやらせてもらっているので、来年また頑張ってレベルアップしたいです」と語った。

■ 日本代表の一員としても過ごした激動の1年

日本代表と筑波大のチームスタイルの違いはコミュニケーションで対応した[写真]=田島早苗


 大学2年生となった4月からこの12月まで、朝比奈は特別な時間を過ごした。前年に続いて日本代表候補選手に選ばれ、強化合宿など代表活動に参加。そして今年は6月末から7月にかけてオーストラリアにて行われた「FIBA女子アジアカップ2023」で見事メンバー入りを果たし、大会に参加した。さらに秋には「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」でも日の丸を付けている。

 そのため、どうしても筑波大での不在期間は多かった。だが、「それでも4年生たちを中心に、私が(チームに)いなくても、筑波のエースだよと言ってくれて。それで私としても日本代表でも頑張れたし、筑波大に戻ってからもチームのために頑張ろうと思えたので、本当にそういう環境を作ってくれたことにありがたいと思っています」と、声を詰まらせながら仲間への感謝の言葉を発する。

 今年は関東女子リーグ戦でも出場できた試合は「半分ぐらい」という朝比奈。チームのシステムが変わる中で、そこへ対応する難しさはあったようだが、だからこそ「コミュニケーションを取るようにしました」と振り返る。一方で、日本代表活動ではプラスになることも多く、「ディフェンスの反応を見てプレーを判断をすることを日本代表では重要視しているので、そこは(筑波大の)チームでも生きているかなと思います」と語った。

 185センチの高さと強さがありながら、時に3ポイントシュートも放つなど、攻撃の幅も年々広がっている朝比奈は、来年も筑波大のエースであることは変わらない。「自分が起点となって、(相手に)留学生がいないときなら自分が中でポストを取るとか、逆に相手に留学生がいたら外からドライブで攻めてフィニッシュやディフェンスが寄って来たらパスをさばくなど、もっと起点となってプレーできるようにしたいです」と意気込む。インカレをベスト8で終え、2年生としての大学バスケの公式戦は一区切りとなるが、3年生となって迎える来年に向けては力強くこう語った。

「大学に入ってから優勝というのをまだ経験していなくて、大学で日本一になるためには、留学生の選手など、いろいろな相手を倒さないといけないと思うので、そのためにはもっと努力や練習の中から変えていかないといけないと思っています。また一からチーム作りが始まりますが、しっかり周りとコミュニケーションを取りながら、来年こそは日本一を取れるように頑張ります」

 20歳のエース。その瞳には、新たな闘志が宿っていた。

取材・文=田島早苗

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