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8月29日、車いすバスケットボール国際強化試合「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP」が武蔵野の森総合スポーツプラザで開幕した。日本のほか、オーストラリア、イラン、韓国が参加する今大会、及川晋平ヘッドコーチ率いる男子日本代表は初戦で韓国と対戦。徐々に韓国を引き離した日本は65-42で勝利を挙げた。一方、イランvsオーストラリアの試合は、イランが75-62で初戦を制した。
文・写真=斎藤寿子
最も観客を魅了したのは、やはりこの試合の“得点王”に輝いた村上 直広だろう。スタートから出場した第3クォーターでは3Pシュートを含む8本中5本のシュートを決め、20得点中12得点を挙げた。さらに第4クォーターでも途中出場すると6得点の活躍。チーム最多の18得点を叩き出した。
終わってみれば“村上の独壇場”に見えたこの試合だが、実は前半の内容が大きく関わっていたように思える。
藤本怜央、豊島英、秋田啓、鳥海連志、川原凜のラインナップで始まった第1クォーター、前半は藤本のシュートが決まりリードを奪う。後半はなかなか得点が伸びずに苦しんだものの、なんとかリードしたまま次につなげた。
そのバトンを受け取ったのが、第2クォーターのスタートで出場した香西宏昭、宮島徹也、土子大輔、岩井孝義、川原のラインナップだ。「自分たちのところで流れを引き寄せたいと思っていた」と香西。その言葉通り、開始早々に決めた土子のミドルシュートを皮切りに、その後は香西と宮島が次々と得点を奪った。
こうしたハイポインターたちの得点の裏では、ローポインターである豊島や川原、岩井の献身的なクロスピックやディフェンスが光っていたことも見逃すことはできない。
そして、「ディフェンスがしっかりと機能していたことが大きかった」と指揮官が言うように、守備力において日本と韓国の間には圧倒的な差があった。スピード、チェアスキル、息の合った連携……どれを取っても日本の方がはるかに上だった。特に第2クォーターは韓国のシュート成功率はわずか7.7%にとどまり、いかに日本の強く速く、そして連携の取れたディフェンスに翻弄されたかがわかる。
一方、今大会はエースのキム・ドンヒョンが不在の韓国相手に、第1クォーターでの10得点は、やや物足りなさが感じられた。特に古澤拓也のフリースローを除けば無得点に終わった後半は、本調子とは言えない内容だった。
だが、スポーツで調子の良し悪しはつきものだ。例えば、日韓戦後に行われたオーストラリアとイランとの試合。オーストラリアのショーン・ノリスとトム・オニールソンの2人のエースがそろって不調に陥り、シュート成功率はショーンが25%、オニールソンは29%にとどまった。
それでも“悪いなら悪いなりに勝つ”ことが求められるのが競技の世界であり、強さでもある。その点、日本は第1クォーターの後半はオフェンスの調子が“悪いなら悪いなりに”守備力でしのぎ切り、決してリードを許さなかった。それが第2クォーターでの勢いにつながり、後半での村上の“爆発力”を生み出したのではなかったか。
しかし、日本の実力はまだまだこんなものではなく、韓国戦では切らなかった主力級のカードも少なくない。今後は世界選手権3位のオーストラリア、同4位のイランという強豪との試合が続く。“及川ジャパン”の力が試されるのは、これからだ。