2021.06.18

車いすバスケ、東京パラリンピック代表内定発表!男子は6人が初出場

車いすバスケ男子日本代表の京谷和幸HCは「最高の状態で本番を迎えたい」と意気込んだ
フリーライター

 17日、日本車いすバスケットボール連盟は、東京2020パラリンピック男女日本代表選手内定発表会見をオンラインで行った。選手たちにとっては、前回の16年リオデジャネイロパラリンピック後から約5年間にわたる“選考レース”の決着の時を迎えたことになる。東京パラリンピックに臨む12人が決定し、男子日本代表を率いる京谷和幸ヘッドコーチ(HC)は「最大の目標であるメダル獲得に向けて、最高の状態で本番を迎えたい」と意気込んだ。

最年長の藤本怜央は5大会連続出場

 男子日本代表は、昨年12月に一次選考、今年4月に二次選考、そして5月での最終選考を経て、12人の代表メンバーを決定した。選考の基準となったのは「トランジションバスケの遂行」「ディフェンスで世界に勝つ」というチームが掲げたコンセプトを体現できるか。また、チームに勢いや安心感を与え、コート内外での自らの役割を全うできるか、といったあらゆる場面を想定した「チームバランス」にも重点が置かれた。

 チーム最年長は、37歳の藤本怜央。04年アテネパラリンピックから5大会連続出場となり、本人としては「最後のパラリンピック」の覚悟を持って臨む。19歳から日本代表の顔として戦い続けてきたベテランエースが、史上初のメダルを獲得し、有終の美を飾ることができるか。

 一方、パラリンピック初出場となったのは、岩井孝義、川原凜、赤石竜我、古澤拓也、秋田啓、髙柗義伸の6人。そのうち秋田を除く5人は、いずれも17年男子U23世界選手権で4強入りした若手だ。17年に川原と古澤、18年に岩井と赤石がそれぞれA代表デビューし、現在は主力として欠かせない戦力となっている。

 こうした若手の台頭と同じく、日本の強さを引き上げたのが、秋田の存在だ。世界と比べて高さに劣る日本に、身長190cmの秋田がいる意味は非常に大きい。17年に日本代表デビューした当初からセンターとしてインサイドでの強さを発揮してきた秋田だが、年々、プレーの幅が広がり、スピードやシュート力も増している。史上初のメダル獲得へのキーマンとなる一人であることは間違いない。

最年少の髙柗は1年延期をチャンスに躍進

 チーム最年少として選ばれたのは、最も“サプライズ”となった、21歳の髙柗だ。A代表の強化指定選手に名を連ねたのは、19年。当初から車いすバスケ関係者の中では成長著しい若手の一人として注目されていた存在だ。これまでA代表の公式戦に出場した経験はないが、東京パラリンピック出場にも期待を寄せられてきた。それが、現実となったかたちだ。

 髙柗はもともとスポーツが得意で、中学校までは野球をしていた。中学3年の時に左脚に骨肉腫を発症。高校入学後に車いすバスケを始め、3年時には男子U23世界選手権に出場し、4強入りしたメンバーの一人となった。当時はまだベンチを温めることが多かった髙柗だが、現在は男子U23日本代表では主力の一人。今回同じく内定した鳥海連志や赤石とともに、来年に千葉市で開催が予定されているU23世界選手権での活躍が期待されている。

 パラリンピックにおいてメインとしていたのは、24年のパリ大会だった。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大で東京大会が1年延期となったことで、髙柗自身も「自分にとってはせっかくのチャンス。とにかくやるだけやって、出場を目指したい」と語っていた。

実際、昨年の自粛期間中も車いすにタイヤをつけて坂道を走るなど、フィジカルを強化。昨秋の時点で「一番体つきが変わり、クラス4点台のなかでも最もスタミナがある。シュートも安定し、成長スピードに関しては誰の目からも彼が一番」と京谷HCからも高い評価を得ていた。

 高さもあり、日本のコンセプトであるリバウンドの強さにおいても重要な戦力となる。失うものがない最年少だからこそ、チームに勢いをもたらせられるかが注目される。

「残り68日、今後さらに連携面での強化を図り、しっかりと準備していきたい」と京谷HC。初めて出場した1976年トロント大会から12回連続出場となる男子日本代表。地元開催で45年越しとなる悲願達成の瞬間が訪れるか。

 男子推薦決定選手は、次の通り。

岩井孝義(1.0)
川原凜(1.5)
豊島英(2.0)※キャプテン
藤澤潔(2.0)
鳥海連志(2.5)
赤石竜我(2.5)
古澤拓也(3.0)
香西宏昭(3.5)
秋田啓(3.5)
宮島徹也(4.0)
髙柗義伸(4.0)
藤本怜央(4.5)

文=斎藤寿子