2021.08.26

車いすバスケ女子日本代表…世界2位からの金星で確信した全員バスケの力

土田らが攻守で指揮官の期待をさらに上回る活躍を見せ、勝利に貢献した[写真]=Getty Images
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 ついに“全員バスケ”の力が結実する時を迎えた。東京パラリンピックのグループリーグ第2戦、2018年世界選手権銀メダルのイギリスを54-48で下した車いすバスケットボール女子日本代表。これまでにはなかった戦い方に、このコロナ禍で大きく成長し、真の力を身に付けたチームの姿が映し出されていた。

過去にはない選手起用に見た信頼と自信

 傍目から見れば、驚きの連続だっただろう。世界トップレベルの強豪国相手と競り合うなか、過去に例を見ないほどの目まぐるしさで日本は選手を入れ替えていった。

「12人全員が戦力。誰が出ても、力はまったく変わらないのが日本の武器」

 前日の第1戦から何度も岩佐義明HCの口から出てきた言葉だ。それが大げさでも何でもなく、事実であることがこの試合で証明された。

 第1戦と同じく、藤井郁美、網本麻里、萩野真世、北間優衣、柳本あまねをスタメンに起用した第1クォーター、日本はイギリスと互角に渡り合い、12-12とした。すると第2クォーター、岩佐HCは5人全員を代えるという大胆な選手起用を実行に移したのだ。

 強豪イギリス相手に、それも同点という大事な局面で、藤井、網本、萩野、北間ら主軸とされる選手たちを外すことは、これまでの試合ではなかったことだ。それを東京パラリンピックという大舞台で実行に移すことができる、岩佐HCが選手たちを深く信頼している何よりの証だ。

 そして、選手たちは指揮官の期待に見事に応えてみせた。北田千尋、土田真由美、小田島理恵、安尾笑、財満いずみのラインナップは、安定したディフェンスでイギリスの攻撃を封じ、3分半もの間、フリースローによるわずか1点に抑え込んだのだ。

 さらにその間、小田島が開始早々に3ポイントシュートを決めれば、土田、北田も続き、「ディフェンスの良いラインナップで凌ぎたい」と考えていた岩佐HCの期待を大きく上回る活躍で、イギリスを突き放した。

文字通り“チーム一丸”となって強豪から勝利をもぎ取った[写真]=Getty Images


 こうした激しい選手の入れ替えが、最後の最後に生きた。第4クォーター、プレスディフェンスで勝機を見出そうとしたイギリスに猛追され、一時は4点差に迫られた。これまでなら逆転を許すことも多く、試合後半で勝ち切ることが課題とされてきた。しかし、この試合の日本は一歩も引かなかった。それどころか、もう一段ギアを上げ、イギリスをかわしきったのだ。前半から選手を交代させ、プレータイムを12人でシェアしてきたことで、最後の最も大事な場面で、チームの力を残すことができていたからにほかならない。

「この12人は最強だから、自分たちのバスケを40分間やり続ければ、結果はついてくる。昨日から負ける気はまったくしていません」

 網本のこの言葉が、今のチームそのものなのだろう。目指してきた“全員バスケ”の形が、コート上でしっかりと表現されている。

「自分たちは強い」

前日のオーストラリア戦でつかんだ自信が、第2戦で確信へと変わったに違いない。

女子日本代表の快進撃にこれからも注目だ[写真]=Getty Images


文=斎藤寿子

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