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『B MY HERO!』
「このためにやってきたので、勝てて本当にうれしいです」
共同キャプテンの一人、藤井郁美の言葉が、この勝利に対する価値の大きさを物語っていたーー。車いすバスケットボール女子日本代表にとって、2008年北京大会以来となったパラリンピック。加えて18年世界選手権の出場を逃しているチームにとって“世界一決定戦”の舞台自体が、14年世界選手権以来、実に7年ぶりのこと。その初戦でオーストラリアに快勝し、世界のステージで止まっていた時計の針が今、ようやく動き始めた。
勝敗の分かれ目は、第2クォーターに訪れた。初戦のスタートとあって、第1クォーターはやや動きが硬く、ハイポインター陣のシュートが決まらない時間帯が続いた。それでもチーム最年少の柳本あまねが得点を重ねるなどして、16-14と2点リードで終えたことが大きかった。
この時、藤井は「よし、行ける」と勝利を確信していたという。その理由は、スタートから全力できていたオーストラリアに対し、日本はまだ手の内を見せていなかったからだった。
すると、スピードで日本にかなわないオーストラリアの動きが止まり、8秒バイオレーションを取られるなど、明らかに“スピードのミスマッチ”が起きていた。第2クォーターだけで、オーストラリアのターンオーバーは8を数え、2とした日本との差が浮き彫りとなった10分間だった。
さらにディフェンスが機能したことで、オフェンスにもいい流れが出始める。例えば第1クォーターの序盤はアウトサイドのシュートが決まらずに苦しんでいた網本麻里が、真骨頂であるクイックネスを発揮。高さではなく、スピード勝負に持ち込むように積極的にカットインをしてシュートを狙い始めたのだ。これが得点につながり、チームを勢いづける要因の一つとなった。
この第2クォーターで完全に握った主導権を、日本は最後まで手放さなかった。
近年、日本は公式戦でなかなか白星を挙げることができずに苦しんできた。特にリオパラリンピックの出場を逃した2015年以降は、世界の舞台から遠ざかり、アジアオセアニアゾーンの中でも、パラリンピックのキップを争う中国やオーストラリアには一度も勝てていない。そんな勝利に飢えてきたチームにとって、この1勝は非常に大きい。
だが、勝負はここからだ。18年世界選手権準優勝のイギリス、そのイギリスを今大会初戦で破ったカナダ、そして世界選手権3位のドイツと強豪国との対戦が続く。決勝トーナメント進出、そして目標とするメダル獲得に向けて、戦いの日々が続く。
文=斎藤寿子