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『B MY HERO!』
2012ロンドン、16年リオと2大会連続で決勝トーナメント進出を逃した男子日本代表。しかし、リオ以降の成長スピードは世界の中でも群を抜き、高いレベルでの選手層の厚さは随一を誇る。東京大会では、メダル候補の一角を担う存在だ。
今大会、男子は12カ国が出場。まずは6カ国ずつ2つのグループに分かれてのリーグ戦が行われ、それぞれ上位4カ国が決勝トーナメントに進出する。
京谷和幸ヘッドコーチ率いる男子日本代表は、スペイン、トルコ、カナダ、コロンビア、韓国と同じグループAだ。一方のグループBには、リオ金メダルの最強国アメリカがいる。そのアメリカと最後の決勝で対戦することが理想で、そのためにもグループリーグ1位通過を狙いたい。もちろん決して容易なことではないが、今の日本にはそれを期待させるほどの実力がある。
グループリーグでまず最初のヤマ場を迎えるのが、韓国との第2戦だ。直近の対戦となった19年アジアオセアニアチャンピオンシップスで連敗を喫した相手だ。世界の勢力図ではトップクラスとは言えない韓国だが、日本戦に異常なほどの強さを発揮し、感情をむき出しにしてくる。
勝敗のカギを握るのは、絶対的エースのキム・ドンヒョンだ。以前と比べると選手層に厚みが出てきた韓国だが、キムが40分間フル出場することも多く、最大の得点源であることは変わっていない。高さとパワーを兼ね備え、どこからでも高確率にシュートを決めてくるキムのシュートシチュエーションをどれだけ減らせるかが重要となる。
さらに3ポイントラインから離れた距離からもシュートを入れてくるオ・ドンスクも乗せると怖い存在だ。司令塔でもあり、キムとのホットラインを潰すことができれば、自ずと勝機は見えてくる。因縁の相手に雪辱を果たし、その後に待ち受けるヨーロッパ勢との戦いに勢いよく臨みたい。
第4戦ではリオ銀メダルのスペイン、第5戦では17年ヨーロッパ王者のトルコと対戦する。5年前のリオ大会でもグループリーグで対戦しており、いずれも2ケタ差と完敗した相手だ。
しかしヨーロッパ勢にとって日本が簡単に勝てる相手という見方は、もはや過去の話だ。18年世界選手権で、日本はグループリーグで当時ヨーロッパ覇者だったトルコとの接戦を制した。そしてスペインには、決勝トーナメント1回戦で敗れはしたものの、その差はわずか2点。リオ大会とは日本の立ち位置はまったく異なっている。
スペインは、世界随一の高さを誇るチーム。特筆すべきは、クラス3.0にハイポインター並みの高さを持つサルスエラ兄弟らがいることだ。彼らが入ったラインナップは、クラス4点台の選手を含めて3人もしくは4人のビッグマンを擁し、スペインの強みとなっている。
リバウンドにも強く、攻防にわたってハーフコートバスケのスタイルを貫くスペインだが、18年世界選手権のグループリーグではまさかの最下位となるなど、リオ以降はやや苦戦を強いられている。
今や世界の潮流はトランジションの速さと、シュート力を武器とするバスケだ。アメリカを筆頭にローポインターからハイポインターまで5人全員が得点源となり、選手層も厚いチームが強い時代。いち早くトランジションバスケを取り入れた日本はそのいい例で、オーストラリアさえも今や高さを武器にはしていない。
変化と成長の過程をたどってきた他国と比べて、戦い方も主力メンバーも変わっていないスペインは、停滞気味にも映る。もちろん日本にとってスペインの高さは脅威であることは間違いないが、攻防にわたってスピードで圧倒し、速い展開に持っていくことで、ハーフコートではなくオールコートでのバスケができれば、主導権を握れるはずだ。
一方、勢いに乗せると怖いが、精彩を欠いたプレーも多く、熱くなりやすい選手も少なくないトルコとの試合では、粘り強いディフェンスがカギを握る。なかでも絶対的エースのオズグル・ガブラックを抑えれば、得点力が格段に下がることは間違いない。
日本のローポインターがミスマッチにも屈することなく、高いラインで彼を止めるようなプレーが増えると、苛立ちを隠せずファウルトラブルも起きることが予想される。さらに日本がフリースローを確実に決めれば、完全に主導権を握ることができるはずだ。スタートから粘り強いディフェンスでプレッシャーを与え続けられるかが勝負となる。
この5年間で過去最強と言われるほどの実力を示してきた男子日本代表だが、結果を残せていないことも事実だ。東京大会ではこれまで模索し続けてきた“勝ち切る”強さを見せ、史上初のメダル獲得を狙う。車いすバスケ界にとって新たな歴史の幕開けは、もうすぐだ。
文・写真=斎藤寿子