2024.09.03

車いすバスケ女子日本代表がパリパラ準々決勝へ…グループ全敗も強豪相手に見せ場

アメリカ戦で北田千尋に次ぐ15得点を挙げた車いすバスケ女子日本代表の網本麻里[写真]=Getty Images
フリーライター

 8月28日に開幕したパリ2024パラリンピック。2008年北京大会以来、4大会ぶりに自力出場を果たした車いすバスケットボール女子日本代表は、グループリーグで全敗を喫し、通算0勝3敗でグループBの4位となった。9月4日からはいよいよクロスオーバーでの決勝トーナメントが始まる。果たして日本は、どんな状態で今大会最大のターゲットとしてきた一戦を迎えようとしているのか。グループリーグ3試合を振り返る。

文=斎藤寿子

■ 世界最強国相手に奮闘したベンチメンバー

2大会連続でパラリンピックに出場している車いすバスケ女子日本代表[写真]=Getty Images


 今大会は4カ国ずつ2つのグループに分かれて総当たりでのリーグ戦が行われ、その順位に従ってクロスオーバーでの決勝トーナメントが行われる。オランダ、ドイツ、アメリカと同じグループBに入った日本は、競技2日目の30日、初戦でオランダと対戦した。

 2018年世界選手権で優勝して以来、世界一に君臨し続けているオランダは、随一の高さを誇り、スピードも兼ね備えた最強国。そのオランダに、日本は第1クォーターから完全に主導権を握られ、大きく引き離された。

 ただ、オフェンスが通用しなかったわけではなかった。前半のアテンプト数はオランダが36本に対し、34本とほとんど変わらず、しっかりとシュートチャンスは作れていた。ただ、前半のフィールドゴール成功率は、オランダが67パーセントだったのに対して、日本は21パーセントと、最も大事なフィニッシュのところで大きな差が生まれた。

 高さで劣る日本は、どうしてもほとんどのシュートシチュエーションでミスマッチの状態からのタフショットを余儀なくされた。そのためジャンプアップされてミスマッチの状態を作られる前に、日本はキャッチしてから素早くリリースしなければならなかった。そうした難しいシュートを決め切るだけの力を、海外勢よりも必要とされるのは日本の宿命でもある。それが改めて明確となった試合でもあった。

 とはいえ、ただやられたわけではない。第4クォーターに意地を見せたのが、ベンチスタートの土田真由美(持ち点4.0)だ。第3クォーターで今大会、自身初得点を挙げ「感覚をつかんだ」という土田は、第4クォーターではスタートで起用されると、フリースローを2本ともに決めたのを皮切りに、次々とミドルシュートを決めていった。10分間でのフィールドゴール成功率は62.5パーセント、フリースローを含めれば70パーセントという驚異的な数字を残した土田は一人で12得点。第4クォーター途中でキャプテン北田千尋(4.5)が激しく転倒し、負傷退場するというアクシデントに見舞われたチームを鼓舞するのに十分な活躍だった。

 それでも最後までオランダの勢いを止めるまでには至らず、34-87で敗れ、日本は黒星スタートとなった。

■ 勝つチャンスがあったドイツ、アメリカ戦

ドイツ戦で相手選手と衝突した車いすバスケ女子日本代表の柳本あまね[写真]=Getty Images


 9月1日に行われた第2戦の相手はドイツ。グループリーグで最も実力が拮抗した相手で、今大会初勝利が期待された。予想通り接戦となったこの試合、観客を最も魅了させたのが、キャプテンの北田だった。

 第1戦での負傷退場の影響はなく元気な姿を見せていた北田は、第1クォーター途中でコートに立つと、いきなり3ポイントシュートでブザービーターを決め、会場を沸かせた。さらに10点のビハインドを負った後の第3クォーター、わずか1分半で2本の3ポイントシュートに加えてバスケットカウントでのフリースローも決めるなど独壇場とし、一人で11得点を挙げた。このキャプテンの活躍で、日本は再び接戦に持ち込んだ。

 第4クォーターにも3ポイントシュートを決めた北田は、この日、50パーセントの成功率で4本の3ポイントシュートを決め、チームをけん引した。北田は22得点14リバウンド、網本麻里(4.5)も14得点11リバウンドとそろってダブルダブルをマーク。しかし、その他のシューターたちがまだ本領発揮とまではいかず、第4クォーターはドイツが18得点だったのに対し、日本は9得点とダブルスコアとされた。結局、55-67で敗れ、連敗を喫した。

 翌2日にはグループリーグ最終戦でアメリカと対戦した。スピードとトランジションの速さとのガチンコ勝負になるという予想は大きく外れ、アメリカは意外にもゆっくりと攻め、ハーフコートでのセットオフェンスを主軸とした戦略だった。

 開幕前にアメリカと練習試合をしていた日本は、こうした戦略を事前に知ることができていたが、それでもアメリカの“巧さ”に苦戦を強いられた。逆サイドをつかれる形でカットインを許し、フリーの状態でシュートチャンスを与えてしまった。

グループリーグ全敗で準々決勝へ臨むことになった車いすバスケ女子日本代表[写真]=Getty Images


 ただ、日本の執拗なディフェンスは徐々に機能し、アメリカがシュートを外すシーンも少なくなく、フィールドゴール成功率は43パーセントにとどまった。得点力のあるアメリカを60点台に抑えたことはディフェンスの成果であり、日本にも勝つチャンスが十分にある試合だった。

 しかし、日本はオフェンスでミスが多く、ターンオーバーは1試合1ケタという目標から大きく外れ、17にものぼった。それが攻撃機会を減少させる原因となり、アテンプト自体がアメリカが69に対し、56にとどまった。その結果、52-62で敗れ、3連敗。日本は未勝利に終わり、グループリーグ最下位の4位となった。

 それでも、3試合を通して日本のいい部分も十分に出ており、シューターたちの当たりも戻りつつある。勢いを加速させた状態で最も大事な一戦に臨むことができそうだ。

 4日からはクロスオーバーでの決勝トーナメントがスタートする。日本は、3戦全勝でグループAの1位となった中国との対戦が決まった。2013年のアジアオセアニアチャンピオンシップス以来、11年ぶりとなる中国戦での勝利を挙げ、2008年北京大会以来となるパラリンピック4強へ。となるパラリンピック4強へ。注目の準々決勝は日本時間4日19時45分にティップオフだ。