2021.03.03

現役最高のチームプレーヤー? スタッツに見るジェームズ・ハーデンの“変化”

ジェームズ・ハーデンはネッツでチームプレーに徹している[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 4チームが絡む大型トレードの末、今シーズンよりブルックリン・ネッツに加入したジェームズ・ハーデン。当初はケビン・デュラントカイリー・アービングとの共存を疑問視する者もいたが、蓋を開けてみればネッツは拮抗するイースタン・カンファレンスで頭ひとつ抜け出して、2位を確保。直近10試合の成績も9勝1敗と大幅な勝ち越しに成功し、ハーデンは絶好調の原動力となっている。

 前所属のヒューストン・ロケッツにおいて、ハーデンはスコアリングモンスターとして恐れられていた。圧倒的な1on1性能を武器に得点を量産し、2018年から3年連続で得点王に輝いている。

 しかし、ネッツ移籍後のハーデンは、チームプレーヤーとしての役割に徹しており、その姿勢はスタッツにも反映されている。(以下スタッツは3月2日時点のもの)

 今シーズンの平均得点は25.2点。十分驚異的な数字であることに変わりはないのだが、ハーデンの成績をシーズン別で見た場合、第9位(12シーズン中)と下から数えたほうが早いことが分かる。一方、アシスト11.0本、リバウンド7.7本は、どちらもキャリア第2位の成績。なお、1位は2016-17シーズンに記録した11.2アシスト、8.1リバウンドで、最近は試合が終わる度に1位と2位が入れ替わっている状況だ。また、フィールドゴール成功率47.8パーセント、スリーポイント成功率39.8パーセントも、それぞれ第2位、第1位とキャリアハイレベルの正確性を維持。円熟味を増した現在のハーデンは、まさに選手として完成形にあると言っても過言ではないだろう。

ネッツではポイントガードに専念

 しかし、今シーズンのスタッツは一部ロケッツ在籍時のものが含まれている。そこで、今度はネッツとロケッツに分けてスタッツを照らし合わせてみたい。ネッツでの出場試合数がわずか22試合と、サンプルが少ないことは否めないが、本稿執筆時点でのスタッツは以下のとおりとなっている。

ヒューストン・ロケッツ(621試合出場)
1試合平均37.0分出場、29.6得点、7.7アシスト、6.0リバウンド、フィールドゴール成功率44.3パーセント

ブルックリン・ネッツ(22試合出場)
1試合平均38.3分出場、25.3得点、11.3アシスト、8.7リバウンド、フィールドゴール成功率49.0パーセント

 上記のデータを比較すると、現在のハーデンはロケッツ時代ほど得点に執着していない印象を受け、同時にショット成功率が上がり、アシスト、リバウンド数も増加していることがお分かりいただけるだろう。

 これには、ハーデンとアービングの“役割分担”が影響しているものと思われる。先日、アービングは『ESPN』に対して、ハーデンにポイントガードを一任し、自身がシューティングガードの職を担うことを明らかにしており、「彼は試合をコントロールするという責任を負い、そして最高の仕事をしている」と、新パートナーのガードの素質を絶賛。

 一方、ハーデンも「俺は2人の特別なスコアラーがいることを理解したうえで、このチームに来た」とコメント。そして「必要なときには得点するけど、カイリーが気持ちよくショットを打ち、KDが気持ちよくショットを打っていれば、それはチームが機能しているということだ」と続け、自身がサポート役に徹しても構わないという姿勢を示した。

 ロケッツ時代はボール保持が長く、「ワンマン」との批判も少なくなかったハーデン。しかし、ネッツでは一変、これ以上にないポイントガードとして、タクトを振っている。ロケッツではスコアラーが不在だったから、スコアラーを担っていたいただけなのか……。もしそうであれば、ハーデンはリーグ屈指のチームプレーヤーなのかもしれない。

スタッツ変化の要因の一つにアービング(左)との役割分担が挙げられる[写真]=Getty Images


 文=Meiji

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