2021.08.04

慈善活動家のカイリーがパキスタンの貧困村に安全な水と太陽光発電設備を供給

コート内外で存在感を放つカイリー・アービング[写真]=Getty Images
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 コートに立てば歴代最高峰のハンドリングで他を圧倒するカイリー・アービングブルックリン・ネッツ)だが、NBAでは悪評も含め、何かと話題に事欠かない選手である。

 昨シーズンは「個人的理由」という建前でしばらくチームを離脱。また、古巣ボストン・セルティックスのロゴを踏みつけたり、メディア対応を拒否したりと、周囲を困らせる問題行動も少なくない。

 しかし、アービングが根は優しい男であることを忘れないでほしい。人一倍、慈善活動に積極的で、米低温物流大手「リネージュ・ロジスティクス」および飢餓を支援する米国最大の組織「フィーディング・アメリカ」とパートナーシップを締結した際には、世界的なパンデミックで苦しく人々を支援するために約32万ドル(約3500万円)を寄付すると同時に、フードレスキュー組織「シティ・ハーベスト」に食料25万食相当を支援。また、故ジョージ・フロイドの遺族に住居を購入したことは世界的にも広く報道され、姉妹リーグのWNBAにおいて、社会的公平性を理由にシーズン不参加を表明した選手たちのサラリー担保を表明するなど、コート外に目を向ければ、話題に挙がるのは善行ばかりである。

 それらの行いを自ら公言しないところもまた、アービングが誤解される理由なのかもしれない。

 最近では、アービングが設立した繁栄を願う人々とコミュニティに手を差し伸べる「K.A.I. ファミリー・ファンデーション」を通じて、継続的にパキスタンを支援する非営利の人道的活動組織「パーニ・プロジェクト」と手を組み、パキスタンで最も貧しい村とされるロハールに安全な水と電気を供給する太陽光発電システムを設置した。

「パーニとカイリーは私たちに新たな人生を与えてくれた」

「パーニ・プロジェクト」の創設者・チェアマンのシカンダー・ソニー・カーン氏は、アービングの姿勢を以下のように賞賛している。

「パキスタンを支援したいと思う人々はほとんどいません。だからこそ、カイリー・アービング財団のように、プラットフォームに責任感を持ち、シーズン真っ只中にもかかわらず、多くの人々に影響を与える問題について学ぶための時間を割いてくれる人を必要としているのです。彼は、ほとんどの人が関心を向けないことに耳を傾け、支援するための時間を作ってくれました。これは、とても心温まる行為です」

『New York Post』によると、ロハールは地球上で最も暑い地域に区分されるターパーカーに位置し、17年間、干ばつに悩まされてきたという。女性や子どもたちは、水を求めて砂漠の中をロバや徒歩で1〜2マイル(約1.5〜3キロメートル)も移動しなければならず、その道中でケガすることも少なくない。また、夜間は灯りもなく、ガラガラヘビに遭遇する恐怖と隣り合わせの状況にある。

 アービングのサポートは、この村で生活する1000人以上の村人たちを助け、飲料や料理、農業にも役立つ清潔な水を提供。また、学校やモスクの照明はもちろん、扇風機の稼働など電力面での貢献度も大きく、蛇避けにも一役買ってくれることだろう。

 そんな甚大な影響を及ぼすアービングの支援について、村人を代表する女性はこう語った。
 
「パーニとカイリーは水を与えてくれたのではありません。私たちに新たな人生を与えてくれたのです」

 最後に、『カイリー6』が発売された際のアービングの言葉を添えておきたい。

「私のアイデンティティがバスケットボールコートのなかに収まることは、現在にも未来にもあり得ないことです。私の行っている慈善活動や、他の人との関わり方、私が皆に愛情を持ち、そのありのままを受け入れていることが、私のアイデンティティになっているのです」

 カイリーがNBAのスター選手であることに疑いの余地はない。だが、彼にとってバスケットボール選手であることは、人生のほんの一部に過ぎないのかもしれない。

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