Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
今シーズン、テキサス州のレンジャー短大からNCAA1部・ネブラスカ大学へ編入した富永啓生。ここまで全11試合に出場し、平均20分の出場で平均7.7得点、得意の3ポイントは33.9パーセントの成功率を挙げ、直近の3試合ではスターティングラインナップにも名を連ねている。将来のNBA入りも狙う20歳のサウスポープレイヤーに新天地での生活やNCAA屈指の強豪カンファレンスのビッグテンで戦うことなどについて聞いた(取材は日本時間の12月16日、結果、スタッツは16日現在のもの)
取材・文=永塚和志(Kaz NAGATSUKA)
――富永選手が3ポイントシュートを得意だというのは相手もわかっていて、密着マークをされてなかなかオープンでシュートを打てていないという印象があります。
富永 どこのチームもスカウティングをすごくしてくるので、自分が出ると「左のシューターだ、左のシューターだ」とめちゃくちゃ相手のベンチから聞こえますし、本当にスカウトされてるんだなあって思いますけど、そこで自分が止まってはだめだと思うので。コートを動き回って自分のところにヘルプが来たら他の選手が空きますし。スカウトされているからといって止まるわけじゃなくて、バックドアであったりいろんなプレーを使ってオープンになろうとしています。
――やはりスクリーナーの協力がないとなかなかオープンにはなれないと思いますが、練習や試合をこなしていくにつれてチームメートもこういう風にスクリーンかけてあげたら富永選手がオープンになるというのがだんだんとわかってきているようなところですか。
富永 そういうのもありますし、もちろんチームの方針というのもありますし。もし自分が当たっていれば自分のプレーをバンバン使ってくれます。そういうところは本当に良いことだと思います。あとは、もっと勝ちたいんですけど……今は4連敗で、あと年内に2試合やるんですけど、そこは本当に勝てるように頑張りたいです。
――3ポイントに関して、フレッド・ホイバーグヘッドコーチやチームからはいつでも打っていいという「グリーンライト(ゴーサイン)」はもらっているのですか。
富永 そうですね、はい。逆に打たないと言われます。ちょっと前までは躊躇するところが結構あって。「もしかしたらこれブロックされるなと」いうところだとフェイクをしてシュートが打てなかったとかあったんですけど、そこは本当に「打て」とは言われています。
――ホイバーグHCは元NBAの選手もあり、シカゴ・ブルズでも指揮官を務めた人ですが、そういうレベルの高い人から指導を受けるというのはいかがですか。
富永 本当にすごいうれしいことですし、毎日いろんなことが勉強になってます。コーチとしてもすごいんですけど、日常生活でも選手と結構コミュニケーションを取って状態を知ったりとかいうことも本当に良くしてくれますし。
――ホイバーグHCの弟さんが昔、名古屋で英語の先生をしていたそうなのですが(富永は愛知県守山市の出身)、そういった話はされましたか。
富永 そういう話もしましたし、結構、ホイバーグHCの家族も日本食が好きで、よく「どういうの食べるの」とか聞かれたりもしますし。
――ホイバーグHCも現役時代はシューターでしたが、彼から技術的なところを習ったりはしていますか。
富永 シュートが入らなかった試合が続いた後とかはコーチが「明日ちょっとシューティングしよう」と言ってきてくれたりして、体育館で行って一緒にシュートを打ったりしています。あとは基本的なパスのもらい方や足の使いかただったり、そういう結構、細かいところまで教えてもらっています。シュートの後にしっかりフォローする、とかそういう基本のところから細かいところまで教えてもらう機会はありますね。
――「もっと勝ちたい」とおっしゃってましたが、やはり強豪カンファンレスにいると気の抜けない相手ばかりだと思います。短大とはどのあたりが一番違うなと感じていますか。
富永 短大とビッグテンの一番の違いと言ったら、一つはフィジカル。あとはうまさもあって、短大の時というのは能力がめちゃめちゃある人はいるんですけど、最後のフィニッシュのところがビッグテンと比べたら…、というところがあったので、最悪、打たれても外してくれたりとか多かったんですけど、このレベルになってくると本当にノーマークで打たれたら外さないし、能力もありますしスキルもあるという感じです。ディフェンスにしても、こちらが守ったと思っても上から決められてしまったりします。そういうことは短大ではあまり経験がなかったかなと思います。
あとは、やっぱり大きな規模の大学ですし注目もされているのでファンもすごくて、アウェーゲームではやりづらいです。そのへんも短大とは違うところかなと思います。
――ビッグテンは主要カンファレンスの中でも伝統的にフィジカルなゲームで知られていますが、実際に他カンファレンスの学校との対戦と比べてそのあたりの違いは感じますか。
富永 全然、違いますね。カンファレンス外の対戦相手の後にビッグテンの相手とやると一回りごついですし、ましてスキルもすごいし、みたいな。最初は「(ビッグテンは)こんなに強いんだ」と思いました。
――直近ではアトランタでオーバーン大と対戦し、99−68で敗れました。全米のランキング(対戦前のオーバーンはAP通信ランキングで18位)を見てもオーバーンが、今季対戦した中では一番強かったですか。
富永 そうですね。手応えからしても一番、手が出なかったなという感じでした。あそこはまた一段階、抜けてたなという印象がありました。3番(SF)の選手が7フッター(約213センチ)近かったりするので、すごかったですね、あれは。
――そのオーバーン大との試合はNBAアトランタ・ホークスの本拠地、ステートファームアリーナで行われました。目標とするNBAのコートで試合をした感想はいかがでしたか。
富永 ホームアリーナと比べてもまた一段階大きい体育館でしたし、すごい良い経験ができたなと思います。なんか、めちゃくちゃウキウキしましたね、はい。
――その試合にはブルックリン・ネッツのケビン・デュラントや元フェニックス・サンズなどで活躍したレジェンドのチャールズ・バークリーも観戦に来ていましたね。
富永 ケビン・デュラントはチェックしました。彼はベンチのところにいたので。チャールズ・バークリーは一応、わかるんですけど、自分たちのところからは見えないところにいたのかなという感じでした。
――試合後の会見などに出席して英語で対応していますよね。普段の友達であるとかチームメートと話すときとは違うのではと思います。
富永 ぜんぜん違いますよね。日本語には敬語がありますよね。でもアメリカにはそういう概念があまりなくて、とりあえず何でも口に出してしまいますよね。でも僕はそういうところをちょっと意識しちゃうところがあって、特にメディアを相手にする場合だとそうなんですけど、どういう言葉を使ったほうが丁寧なんだろうと考えすぎちゃって、ちょっと言葉に詰まってしまったりすることがあります。そこは慣れかなと思うんですけど。
――八村塁選手(ワシントン・ウィザーズ)などでも公式会見には上級生になるまで対応をしていなかったと思いますが、富永選手としては、そこは迷いなく受けているというところですか。
富永 チームから(対応するかどうかについて)聞かれはするんですけど、僕は「はい、やります」と。そういうのも経験だと思うし、避けてばかりいたら良くないので。もちろん、最初から(英語でスラスラと対応することが)うまくいくと思ってないので、失敗をしても良いだろうという気持ちでやってます。
――会見にはチームメートのブライス・マクゴーウェンズ選手と一緒に出ていて、富永選手が英語でちょっと詰まるようなところで助け舟を出してくれたりしていていたのを見ました。他ではコービー・ウェブスター選手が富永選手の「3ポイントの才能を特別なものだ」と話している映像も見ました。まだネブラスカ大に来て数カ月ですが、富永選手もチームに溶け込んでいる印象です。
富永 そうですね。本当にみんなと仲良くやってますし、とても良いチームメートです。一番、仲が良いのはコービー・ウェブスターですね。アウェーの時とかも部屋が一緒になったりして。みんなとは基本的に仲が良いんですけど。
――アメリカという国は様々な人種がいて色んな国から人が集まっているというところもあって、日本ほど自国の人と外国人を分け隔てて接してこないですよね。
富永 どうなんだろう…でも自分のチームも結構、インターナショナルな選手がいるというのもありますし、日本人だからって言うのはないですかね、そんなに。普通に話してきますね。
(後編に続く)