2021.12.21

富永啓生インタビュー(前編)「毎試合、自分の100パーセントの力を出せるように」

NCAA1部強豪のネブラスカ大で活躍する富永啓生(©Scott Bruhn/Nebraska Athletics)
スポーツライター

今シーズン、テキサス州のレンジャー短大からNCAA1部・ネブラスカ大学へ編入した富永啓生。ここまで全11試合に出場し、平均20分の出場で平均7.7得点、得意の3ポイントは33.9パーセントの成功率を挙げ、直近の3試合ではスターティングラインナップにも名を連ねている。将来のNBA入りも狙う20歳のサウスポープレイヤーに新天地での生活やNCAA屈指の強豪カンファレンスのビッグテンで戦うことなどについて聞いた(取材は日本時間の12月16日、結果、スタッツは16日現在のもの)

取材・文=永塚和志(Kaz NAGATSUKA)

ネブラスカ大に転入して普段の生活も一変

リモートでの取材に対応してくれた富永選手


――ネブラスカ大へ移って数カ月が経ちましたが、短大だったレンジャーカレッジとは随分違うのではないですか。
富永
 そうですね、ジュニアカレッジ(短大)の時に比べてキャンパスの規模も大きくなりましたし、ここに来てから“ザ・大学生”になったなという風には思ってます。

――短大のあったテキサス州レンジャーもネブラスカ州もどちらかと言えば田舎の印象がありますが、実際、移り住んでみていかがですか。
富永
 大学のあるリンカーンはネブラスカ州の州都なので、規模はけっこう比べ物にならないくらい大きいですね。ネブラスカの中では大きいです。必要なものは何でもあるという感じです。

――学業やバスケットボールで忙しいとは思いますが、街へ出る機会などはありましたか。
富永
 そうですね。ショッピングもたまに行きますし、時間があればちょっと外でご飯を食べに行ったりもします。

――ネブラスカ大では寮に住んでいるのですか。
富永
 今、住んでいるのはアパートです。レンジャーの時は寮でした。ものすごい良いアパートで、しっかりと良い生活ができてます。寮と違ってキャンパスから離れたところに住んでいるのですが、近くにいろんな店があるのでご飯も食べられますし。あとは、レンジャーの寮ではキッチンとかもなかったので料理をする機会はなかったのですが、こちらに来てからはたまに料理もしてますし、簡単な日本食を作ったりもしてます。

――料理は、どんなものを作っているのですか。
富永
 カレーを作ったりもしますし、あとは最近だと親子丼を作ったりも。こっちでそろえられる範囲のものでできるものを作ってます。

充実した環境とレベルの中で、日々練習

1万5000人収容のピナクルバンクアリーナがネブラスカ大のホームアリーナ [写真]=Getty Images


――本題のバスケットボールの面でも多くの変化があったかと思います。短大からNCAA1部に移ってきたというだけでなく、主要5大カンファレンスのビッグテンカンファンレスのチームに加入しました。実際、環境などは大きく違っていましたか。
富永
 ビッグテンという本当にハイメジャーな大学にいるので、施設とか短大のときに比べると変わりましたし、充実した環境と充実したレベルの中で毎日練習などをできているのが自分にとって成長、成長でしかないことですし、対戦相手も毎週、毎週、強いチームが続くので、1試合、1試合が自分の力がどれだけ通用するのかを見てもらえるチャンスでもあります。毎試合、自分の100パーセントの力を出すようにしています。

――5大カンファレンスのチームの施設はどこもかなり充実していると聞きます。ネブラスカ大も同様ですか。
富永
 他の大学は見ていないので何とも言えませんが、まあ、すごいです。練習場は男子バスケ部だけの練習場なんですけど、体育館があって、リラックススペースとかも本当にすごくて。卓球をやるとかビリヤードをするところがあったりしますし、リラックスするソファが並んでいたりとかテレビがあったり。ロッカールームも広いですし。後は、(リカバリー用の)ホットタブ、アイスタブのところがあったりとか。本当に、すべてのところが充実してますね。

――ネブラスカ大はスポーツ部に対して科学的なアプローチが進んでいると聞きます。何かそういうものをすでに経験されてますか。
富永
 試合だけでなく練習の時もそうなんですけど、背中のところに機械を付けて自分がどれだけ体力を使っているのかを計測していて、それによって試合後のケアであったりリカバリーをどれくらいするのかを決めてもらえます。あとは、シーズン前に瞬発力だったり身体の形をしっかりチェックしてくれて、そこでだめなところがあったら直したりということもやっています。それから、ジャンプテストと言って垂直跳びを台の上で飛ぶんですけど、これも週に2回くらいやりますが、それによって自分のコンディションがわかるらしいのですが、そのようなことをやってもらっていますね。

――ホームアリーナのピナクルバンクアリーナは収容が約1万5000人とプロ並みで、日本の感覚からすると「大学の施設でそんなに大きいのか」という感じですが、富永選手も最初は驚いたのでは?
富永
 驚きましたね。大学のチームにこんなにファンの人たちが足を運んでくれるって言うのは、本当にそれだけバスケットボールが人気な国だと感じます。特に自分たちの大学は近くにプロチームがなく、自分たちのところがプロチームみたいな感覚で、地域のみんなが来るという感じ。毎回、たくさんのお客さんが入って本当にすごく気持ちの良い中でバスケットができてますね。

――学業のほうでは、大学3年生ですからもう専攻があるわけですよね。
富永
 Human development…人間開発、人間の成長みたいな感じのメジャーを取っているんですけど、あまり興味はないです(笑)

――それでも学業とバスケットボールの両立は大変ですよね。
富永
 そうですね、大変な部分は大変なんですけど とりあえず期限を守って、課題をやって、クラスに行って、っていう感じで。必要最低限のことはしっかりやるようにはしてますね。

――遠征ではクラスを休まないといけないこととかあると思うんですが、そういう時にはチューターがついてくれて、課題を出したりしながら遅れを取り戻すというような感じですか。
富永
 遠征の時は、基本的にはセメスターの最初の時に先生に「この日は行けない」とスケジュールを渡すんですけど、先生によっては期限を延ばしてくれたりもします。

――もう20歳となって以前取材してた時に比べても大人になったなという印象があります。
富永
 ありがとうございます。自分ではあんまりわからないですね(笑)。

――アメリカに行って3年目ということで英語という点ではだんだん慣れてきているのかなというふうに感じますが。
富永
 そうですね。わからない単語もありますし、チームメートと話していてわからない単語があれば聞いたりというふうにしながら、少しずつ覚えるようにしてます。

――そのまだ英語が分からない単語がある中で、アメリカに行った当初よりはもう今は間違いを恐れずに話せているというところはありますか。
富永
 そうですね。全然「間違ってもいいや」って言う感じで話すようにはしてますね。話さないよりは話して間違った方がいいかなっていう気持ちでいるので。

(中編に続く)

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