2023.07.24

【バスケ日韓戦レポート】1勝1敗で韓国遠征終了…「一人ひとりがステップアップできた」(ホーバスHC)

1勝1敗で韓国遠征を終えた日本代表[写真提供]=Korea Basketball Association
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

リバウンドの課題を修正して役割を遂行

 7月22日~23日にわたり、ソウルで開催された「バスケットボール男子日本代表国際強化試合2023 in 韓国」。1戦目はリバウンド本数で日本25本、韓国42本と差をつけられたことで完敗を喫したが、2戦目は日本34本、韓国31本と上回ることでトランジションゲームに持ち込み、85-80で勝利。対戦成績を1勝1敗として韓国遠征を終えた。

 何が何でも負けられない2戦目。試合の序盤は韓国が速攻やダンクを連発して14-5とリード。日本が変わったのは、ここのタイムアウトでトム・ホーバスヘッドコーチの檄が飛んでからだ。

 ポイントガードとして交代でコートに入った西田優大がゲームをコントロールし、原修太の3ポイントや速攻、川真田紘也がリバウンドに絡んでセカンドユニットが躍動。第1クォーターを20-16と逆転してリードで終えると、その後も日本はリバウンドをモノにすることで速い展開へと持ち込み、フリーになったところで井上宗一郎の3ポイントなどでリードを広げる。

セカンドユニットの奮闘が試合の流れを引き寄せた[写真提供]=Korea Basketball Association

 後半に入ると日本は富樫勇樹の3連続ゴールで先行し、最大12点のリードを奪う。韓国が仕掛けた3-2ゾーンに攻めあぐみ一時は逆転を許すものの、すぐさま西田から川真田の連携プレーや比江島慎の3ポイントでやり返し、一歩も引かない姿勢を見せた。第4ウォーターには渡邉飛勇がインサイドで働き、西田と比江島の2ガードも機能。真剣勝負の中で様々な組み合わせを試した日本が5点差で韓国にリベンジを果たした。

 ホーバスHCは1日にしてリバウンドの課題を修正できた理由を「1戦目はビッグマンがアウトサイドに出るディフェンスをしていたが、今日はビッグマンがゴールの前にいるようにして、ミスマッチのボックスアウトが生まれないようにした」と修正ポイントを語った。

一人ひとりがステップアップし、アウェーでリベンジを果たした日本[写真提供]=Korea Basketball Association

 今回の韓国遠征は、ジョシュ・ホーキンソン河村勇輝の欠場により、インサイドとポイントガードの向上が求められていた。そこで、センターでは川真田や渡邉、ポイントガードでは西田がプレーの機会を得て、ステップアップしたことが大きな収穫だったと言えよう。ホーバスHCは試合後、選手一人ひとりにハグをしながら讃えており、「作戦の遂行力は昨日に比べて信じられないくらい良くなって、チームがステップアップできた」と手応えを得ていた。

 過去を振り返れば、日本はいつも国際大会の初戦、また代表シーズンの序盤には、相手の強いフィジカルに面食らう傾向があった。今回も同様で、1戦目を終えて選手たちは、韓国のフィジカルなプレーに対して「先制パンチを食らった」と反省しきりだった。この課題を克服するには、日常となるリーグでの戦いから当たり負けしないプレーを習慣化していくしかないだろう。

白熱の展開となったが、試合後は互いに健闘を称えた[写真提供]=Korea Basketball Association

 では、フィジカルの問題に依然として課題がある日本が、なぜ今回勝利できたかといえば、代表チームとして練習してきたリバウンドやインサイドの守り方など、個々が役割をさぼらずに遂行できたことに尽きるだろう。今後、さらに強度が上がるチームと対戦していくには、こうした一人ひとりのハードワークこそが勝利を引き寄せると確認できたのだ。日本がステップアップしていく過程において、同じく真剣勝負を欲していた韓国は申し分ない相手だったといえる。

 敵地での2連戦によって、強豪国と戦う準備ができた日本は、8月からはいよいよニュージーランドとの連戦を皮切りに、ワールドカップに出場する国と対戦する。

試合後のコメント

■トム・ホーバスHC

アウェーでの勝利で手応えをつかんだホーバスHC[写真提供]=Korea Basketball Association

 チームが一丸となって戦い、1戦目でやられたリバウンドを改善でき、一人ひとりがステップアップしてくれました。作戦の遂行力は昨日に比べて信じられないくらい良くなっていて、チームの成長を感じました。とくに川真田選手はファンタスティックだった。(渡邉)飛勇選手はまだコンディションが万全ではないけど、その中でもよくやってくれた。2戦目の出来は、私が求めていた以上に最高のパフォーマンスをしてくれました。韓国が強いチームだとわかっていたし、アウェーのタフな状況を乗り越えていくことは、チームを作っていくうえで必要なこと。この大歓声のアウェーの中で勝利をつかめたことは大きな経験となりました。

原修太

チーム最多の14得点を奪った原[写真提供]=Korea Basketball Association

 今日は自分の仕事を全うできました。自分はいつも危機感を持っているのですが、特に今日は、「(ワールドカップ代表の)確定組」ではない選手たちが、序盤の流れが悪い時間帯にハッスルして、いい流れを持ってきたと思います。流れを変える時間帯にコートにいたことは、いいアピールになったと思います。

 ただ、2戦目は勝ったからよかったけど、アジアのチームに1戦目みたいな試合をしていたらワールドカップでは勝てません。これからもリバウンドはジョシュ(ホーキンソン)頼みにならないで、スモールなメンバーでもリバウンドに跳びついてルーズボールにしていきたい。今日はそれができたのですが、それでも韓国とリバウンドが五分五分なので、もっと跳び込んでいかないといけません。

 韓国はチャイニーズ・タイペイとは体の使い方もフィジカルの強さもまったく違う相手でした。僕がチャイニーズ・タイペイ戦でシュートが当たったのはガベージタイムのとき。僕としては、フィジカルの強いメンバーが出ているときも自分のプレーができると思っているので、この韓国戦はこれからの自信につながる試合になりました。

川真田紘也

6得点7リバウンド2ブロックと存在感を放った川真田[写真提供]=Korea Basketball Association

 1戦目は韓国のアタックが強かったので、今日はビッグマンたちがハードワークをしようと臨みました。僕らビッグマンは最後の砦という意識を持ってプレーしなければなりません。1戦目よりボックスアウトをしっかりやることで、リバウンドにつなげられたのはよかったです。

 自分としてはワールドカップにもちろん出たいですし、みんながライバルであって仲間なんですけど、自分がセンターとしてやるべきことはリバウンドなので、そこを意識してやるだけでした。今日勝ったことはすごくうれしいですし、トムさんにリバウンドでアピールできたと思います。

 自分は海外のチームとそんなに試合をしたことがなくて、知識もありませんでした。実際、1戦目で韓国と試合をしたときには、韓国のリバウンドの激しさや強さをものすごく感じて「このままではダメだ」と反省しました。もちろん、「このままではダメだ」と思っているだけではダメですし、今回は2試合あったので、昨日の反省を今日に生かせられたのは良かった。リバウンドへの意識を今後も続けていきたい。

■チュ・イルスンHC

イルスンHCはこの強化試合を糧にチーム力の向上を目指す[写真提供]=Korea Basketball Association

 今日は日本に3ポイントを許しすぎてしまった。リバウンド数も同じくらいだったので、1戦目よりゴール下での失点が多くなった。逆転した時間帯もあったが、最後まで続かなかったのが残念だ。今日はゲーム運びの面で日本のほうが上だった。

 ホ・フンは1戦目に足を打撲してしまい、昨日リバウンドを頑張ったムン・ソンゴンは体調が悪かった。チョン・ソンヒョンも負傷明けである。2戦目は彼らのプレータイムが短かったせいもあるが、ゲーム運びについてはもう一度見直す必要がある。

 経験の少ない選手が出ると、どうしても心理的に揺れてしまってターンオーバーが多く出てしまったが、ハ・ユンギやイ・ウソクら若い選手にとってはいい経験になった。改善すべきことは改善し、また補強メンバーを加えることで、アジア競技大会までにチーム力を上げていきたい。

■ハ・ユンギ

豪快なダンクを決めるなど、ユンギは14得点2ブロックを挙げた[写真提供]=Korea Basketball Association

 日本に3ポイントをたくさん許してしまい、リバウンドを多く奪われたことで、悪い流れを引きずってしまいました。第2クォーターは特に集中力が途切れてしまった。自分のミスのせいで流れが日本にいってしまったので、申し訳なく思います。先輩たちはみんな技量がある選手ばかりなので、このチームが良くなるには、あとは自分が頑張るだけだと思っています。今回の評価戦(強化試合)で初の代表に入れていただき感謝しています。今回出た課題をさらに改善してチームの役に立つようにします。

取材・文=小永吉陽子

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