2020.04.12
一見物静かで、言葉を選びながら落ち着いて話す。イメージよりもおとなしそうに見え、コート上の彼を知らなければ、プロアスリートであることを忘れてしまいそうだ。しかし、内に秘めた闘志は隠しきれない。しゃべる一言ひとことに想いがこめられ、そのキャリアも相まって強いメッセージ性が感じられる。それも当然だ。彼は滋賀レイクスターズを誰よりも愛している。滋賀県で生まれ、高校時代までをここで過ごし、日本体育大学を経て戻ってきた。「いろいろなチームからオファーをいただきましたが、プロでバスケットをやるからには地元でやりたいという気持ちがすごく強かったんです」。“ミスター・レイクス”と呼ぶには少々早いかもしれないが、もしかしたら数年後にその愛称が定着しているかもしれない。「バスケをとおして滋賀県を盛りあげる」との夢を抱く横江豊は静かに、それでも力強くクラブとともに前進を続ける。
インタビュー=樋口隆太朗
写真=Bリーグ
――まずは第3節での初勝利(2016年10月9日、ホームの京都ハンナリーズ戦で83-74で勝利)おめでとうございます。ここまでのチームやご自身の状態をどう見ていますか(2016年10月12日取材)?
横江 チームとしては結果がついてきていないのですが、いいレベルの練習ができていますし、これがたくさん積み重なってチームとして機能しだすとまた結果は変わってくると思います。みんながそうやって、自分たちがやっていることを信じて、練習からしっかりハードに取り組んでいます。
――練習で課題に置いているのはどんなことですか?
横江 ディフェンスもオフェンスもそうですが、やっぱりトランジションのところです。あとはリバウンドの練習を重点的にやっています。一つのミスについて全員で話し合ったりとか、そういう細かいことをしっかりやりながら練習しているので、良くなっていくと信じています。
――ご自身の調子やプレーについてはどう捉えていますか? 今季初勝利を収めた京都戦では、攻守にわたり良いプレーが出ていたように思います。
横江 ここまで6試合終わって、1試合だけ、その京都戦だけは調子が戻ってきたかなという感覚です。いい感じで試合を運べていたので、あの感覚を忘れないように、継続してあのプレーができるように練習から取り組んでいこうと思っています。
――それまでは違った感覚を持っていた?
横江 まあ、いろいろと考えることがあって……。いろいろな方々と話す機会があったのですが、「考えすぎじゃないか」と言われたりして。あまり考えてうまくできるようなタイプではないので、今回は考えずにいこうと。それが京都戦で形になったので本当に良かったなと思います。
――初めてレイクスを見る方に向けて、チームの特徴を教えてください。
横江 みんなが試合に集中して、明るくプレーしているというのが特徴です。一人ひとりが明るくて、個性の強いチームですし、プレー面で言えば他のチームよりもアグレッシブにプレーしていると思います。ルーズボール一つにしろ、リバウンド一つにしろ、サイズは小さくてもコート中をアグレッシブに走り回っている姿、一生懸命コートで動いている姿をまず見てもらいたいです。ベンチにいるメンバーも試合にのめりこんでしっかりと応援している、そういうチーム一体となっている姿を見てほしいなと思います。
――大学では4年次にキャプテンを務め、レイクスでも昨シーズンからキャプテンを任されています。チームメートとのコミュニケーションで心掛けていることはありますか?
横江 やっぱり常に一緒にいること。食事を食べに行ったりとか、そういうことがコート外では大切だと思います。コートの中ではあまり口数の多い方ではないので、個人個人に少しずつ話をしています。みんなを集めて話をするというよりは、それぞれに「最近どう?」とか、そういう細かなコミュニケーションを取るようにしています。
――目標にしている選手はいますか?
横江 プレーを参考にしている選手と、単純に好きな選手がいて、参考にしているのは(ロサンゼルス)クリッパーズのクリス・ポール選手です。あまり身長はないですが、うまくピック&ロールを使ってプレーしているので、そこを手本にしています。好きな選手は(オクラホマシティ)サンダースの(ラッセル)ウェストブルック選手で、スピード溢れるプレーが好きですね。
――遠山向人ヘッドコーチの試合中の激しいリアクションがTwitterで話題になりました。遠山HCはどんな方ですか?
横江 練習では選手とHCの壁があまりなくて、言いたいことを言い合える関係です。でも厳しく、ダメなところはダメ、いいところはいいと言ってくれます。試合中はああやって全身で喜怒哀楽を表現して、まあ本人は意識してないって言ってますけど、あれだけジャンプするHCはなかなかいないと思います(笑)。
――プレー中は気にならないですか(笑)?
横江 声が通るので、どこにいても聞こえますね。「ああ、いいプレー出たな」と思ってベンチを見ると一人で跳んでるんで(笑)。ただ、今年はベンチで何人か一緒に跳んでる選手がいるので、面白いチームになってきてるなと思いますね。
――プライベートで仲のいい選手はいますか?
横江 最近は琉球ゴールデンキングスの波多野和也選手とか、バンビシャス奈良の寺下太基選手とか、年上の人、先輩の方と仲良くさせてもらうことが多いですね。その2人はすごく自分のことを心配してくれて、毎試合終わるたびに連絡くれたり離れていても連絡を取る仲で、とてもお世話になってます。
――オフの日は何をされていますか?
横江 今はチームメートとバス釣りをしに行くことが多いですね。今年から加入したメンバーから「滋賀県で何かすることない?」って言われて、「バス釣りどう?」と(笑)。やってみたら何人かがハマって、一緒に行ってる感じです。
――やはり琵琶湖で?
横江 そうですね。どこ行っても(釣り場が)あるので(笑)。あとは家がみんな近いので、誰かの家で食事したりというのも多いです。
――横江選手は生まれも育ちも滋賀県ですが、地元でプレーすることへの想いを聞かせてください。
横江 プロチームに入るにあたっては地元しか考えていませんでした。いろいろなチームからオファーをいただきましたが、プロでバスケットをやるからには地元でやりたいという気持ちがすごく強かったんです。今までお世話になった方々にもプレーを見てほしかったですし、バスケをとおして滋賀県を盛りあげていけるんじゃないかなと思ったので、このチームに入りました。
――9月22日のBリーグ開幕戦はどこでご覧になっていましたか?
横江 チームメートの家でみんなで観ていました。すごくワクワクしましたし、魅力的な開幕戦だったので、これで1人でも多くの人がBリーグに行ってみたいと思ってくれたらいいなと思いました。リーグが一つになり、日本のプロバスケットボールがJリーグやプロ野球のように有名になって、テレビのゴールデンタイムで放送される日がどんどん出てくればいいなと。子どもたちは、今までbjリーグの選手になりたい、NBLの選手になりたいとそれぞれ目指すものが違ったと思いますが、それがBリーグという一つの目標になることがうれしいです。
――バスケ以外のスポーツはご覧になりますか?
横江 サッカーはワールドカップや海外の試合も観ますね。あとは最近テニスも多いです。錦織圭選手がすごく活躍しているので見入ってます。
――バスケを「する」スポーツだけでなく「観る」スポーツとしていくには、どうすればいいと思いますか?
横江 バスケットボールってサッカーや野球よりも見てくれるファン、ブースターとの距離がめちゃめちゃ近くて、そこに最大の違いがあると思います。プレーを向上させるのはもちろんですが、ファンの方々と触れ合う中で、僕たち選手は応援してもらえるような人柄も大事になってくる。試合が終われば、すぐそばにブースターの方がいて、写真を撮ったり、サインを書いたり、というのは他のスポーツではなかなかないと思います。選手とぶつかってしまうくらいの距離に観客席があるので、臨場感も味わえると思いますし、選手の声も聞こえます。そういうところを楽しみに来てもらいたいですね。
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