2020.03.27
Bリーグでの過去3シーズンすべて残留プレーオフ出場という低迷から脱却を図る横浜ビー・コルセアーズ。本格的にチーム改造に乗りだし、選手を大幅に入れ替えて臨んだ今季は、一時白星が先行するなど昨季までとは一味違う姿を見せた。11月16日、17日の第9節には、bjリーグ時代に優勝した際に主軸を担った蒲谷正之氏と山田謙治氏(現アシスタントコーチ)の引退セレモニーという、生まれ変わろうとするチームの節目とも言うべきトピックもあった。
しかし、“神奈川ダービー”でもあったこの節は無念の2敗。同じ中地区で首位を独走する川崎ブレイブサンダースに対して通算18戦全敗となり、苦難に満ちた過去3シーズンの象徴とも言える長いトンネルを抜けだすのは次回の対戦にお預けとなった。
今季その横浜をリーダーとしてまとめているのは田渡凌。キャプテンに就任したことでチームを引っ張る姿勢が強まった田渡は、元来持っていたアグレッシブに攻める意識もより高まり、川崎との2戦もいずれもフィールドゴール試投数でチームトップ。しかしながら、チーム最多の17得点を叩きだした1戦目から一転、2戦目では15本の試投で成功が5本に終わり、フリースローの1点と合わせて11得点にとどまった。
田渡本人は「正直、試合に勝てれば何でもいい。必要な時は得点を取りにいかないといけないし、他の選手が当たっていればその選手に任せればいい」とは言うが、自身の出来には「もちろん納得してないです」と話し、前節まで気になっていたコンディションの問題も言い訳の材料にはしない。
「今週は練習から脚の状態も良くて、いけるという気持ちがあったのでこの2試合は攻める意識も高かった。このシュートの本数で11得点、それでも勝っていれば満足いったと言えるんですが、今日は打てるタイミングで打てたシュートもあれば、コンテスト(ディフェンスがシュートチェックに寄ってくること)された時間帯もあった。そこの見極めが大事になってくるとは思います。その中でも自分の持ち味のアグレッシブさは大事にしていかないといけないし、ガードとしてどういうタイミングでどういうプレーをしないといけないかということを相手の篠山(竜青)さんや藤井(祐眞)さんから学ぶことが多かったので、次に活かしていきたいと思います」
開幕直後に比べると生原秀将と2ガードを組む時間帯も徐々に増えてきている中、橋本尚明が負傷欠場したこの2試合はスタートからその2ガードが並び立った。これからも一定の時間を占め、チームのオプションの1つになるであろう2ガードシステムが、自認するアグレッシブさを活かした上で機能的なチームオフェンスにつながることを田渡は信じている。
「2ガードで出ている時は2人でアグレッシブにクリエイトしていって、自分が無理なら生原(秀将)を探せばいいし、生原が無理なら僕がオープンでボールを貰えるようにすればいい。2人がアグレッシブに攻めることで他の選手も活かせると思うし、昨季までのようにボールを渡せば何とかしてくれるという人もいないので、今季はみんなで得点に絡むことを練習から突き詰めています」
ところで、田渡といえばシーズン開幕直前に始まったテレビ番組への出演が他チームのファンをも賑わせているところだが、それに先んじて『TAWATARI PROJECT』と銘打った活動に取り組んでいることも忘れてはならない。自身の母親が特別支援学校に勤務していることと、アメリカ留学中に地域貢献活動の重要性を知ったことを契機に、障害者施設への訪問やホームゲームへの招待を積極的に行おうというもので、すでにチャリティーイベント開催などの実績がある。活動開始に至った想いを、田渡はこう語る。
「プロのバスケットボール選手としてもそうですし、テレビ番組にも出させていただいて、正直に言って有名にはなってます。言い方は良くないですが、僕が言う一言には一般の方の一言よりも影響力があると思うんです。だからこそ、自分が信じていること、世の中に知れ渡ったほうが良いと思うことをやっていって、それがスタンダードになればと思って立ちあげました。バイウィークでここから2週休みがある間も、いろいろな所を回ろうと思ってます。今日の相手の辻(直人)さんもそういう活動をされてるように、やっぱり競技をがんばっているだけではいけないと思う。これだけ多くの人に応援していただいている贅沢な環境にいて、なおかつ僕らはそれでお金を貰っている。世の中に還元する責任はあると思うんです。こういう活動が日本のプロスポーツで、特にバスケットのリーグで当たり前になっていけばと思います」
チームのリーダーとして、その前に1人のプロアスリートとして、背負った責任を進んで果たそうとする田渡の挑戦には、今まで以上に注目しなければならない。そして、注目すればするほど、田渡の一挙手一投足はより輝きを増すはずだ。
文=吉川哲彦
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