2020.12.17

【皇后杯】敗戦にも「手応えを感じた」と先を見据えるトヨタ紡織のエース・東藤なな子

タフな動きを見せるトヨタ紡織の東藤なな子[写真]=加藤誠夫
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 12月16日、国立代々木競技場第二体育館にて「第96回天皇杯・第87回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンド女子準々決勝が行われた。

 第2試合は、ともに愛知県刈谷市に本拠地を置くデンソーアイリスとトヨタ紡織サンシャインラビッツとの“刈谷ダービー”。結果は、第1クォーターで24―11と2ケタのリードを奪ったデンソーが一時はトヨタ紡織の追い上げに遭ったものの、85-73で勝利した。

 この2チーム、Wリーグではレギュラーシーズン前半戦の最終節で対戦している(10月31日、11月1日)。この時もデンソーが2戦ともに勝利していたのだが、第1戦は61―68、翌日の第2戦も61―64といずれも僅差での戦いだった。

 しかし、今回の皇后杯では12点差での敗退。この理由をトヨタ紡織の東藤なな子は「リーグ戦の時より最後のタフショットを決められてしまったと思います。前回は、最後まで全員で守ってシュートを落とすようにプレッシャーをかけることができたのですが、今回は最後に髙田(真希)さんの1対1でやられてしまったりだとか、身長が足りない分、みんなで頑張らないといけないのに、一人に(防御を)任せてしまったところがありました」と振り返った。

 それでも、個人については「リーグ戦の時は相手の本川(紗奈生)さんに完全に圧倒されてしまいました。気持ちの強さとか決め切るところで圧倒されたので、今回はその反省を生かして負けないように気持ちで頑張ろうと思っていました。そこは収穫になったと思います」と手応えも感じたという。

 1年目となった昨シーズン、東藤は得点ランキング8位に入るなど、文句なしの活躍でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。日本代表候補にも初選出された。

 だが2年目となる今シーズンは、相手チームの執拗なマークもあり、ここまでは納得のいくプレーはできていなかった。それだけに、敗れはしたものの、皇后杯での一戦で「内容的には失うものだけではなかった」と、若きエースが手応えをつかんだことは大きい。

 33分の出場で8得点7リバウンド3スティールをマークした東藤。爆発的に点を取ったわけではないが、攻防においてアグレッシブさが戻ったようにも感じさせた。そのキッカケを本人は11月に行われた日本代表合宿だと言う。

「周りの選手の強さやタフショットを決め切るプレーを間近で見ることができました。それと練習をしながら自分の中で『ここが攻める時だな』という感覚を吸収できたことも良かったのかなと思います」

 さらに、「私は考え過ぎてしまうことがあるので、最後は思い切りやろう、後悔しないようにやろうと、シンプルに考えるようにしました」と心の変化も語ってくれた。

札幌山の手高校の先輩にもあたるデンソー・本川紗奈生との見ごたえあるマッチアップ[写真]=加藤誠夫

 20歳にしてトヨタ紡織のエースを担う東藤。Wリーグのレギュラーシーズンでは、ZOOM会見に出席したチーム最年長の野町紗希子が東藤についてこのように語っていた。

「チームの中心であることは間違いないです。本人には考えがしっかりあるからそれを表現することを続けてほしいし、周りは彼女に頼っている場合ではないとも思います。彼女はオフェンスだけではないので、点を取れなくてもディフェンスで頑張れたり、リバウンドで頑張れる選手。そこでもリズムを取っていってくれればいいなと思います」

 野町の言葉の通り、攻防において貢献の大きい東藤。彼女が元気な時はチームも活気づく。悩みに悩んだ前半戦。光明が差した皇后杯を口火に後半戦での爆発に期待したい。

文=田島早苗

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