2021.01.13
過去2度のリーグチャンピオン、昨季はB1最高勝率の強豪でも、やはりチームを作りあげる難しさがある。我慢の時期に彼らが思うことは――
12月13日に開催されたアルバルク東京とサンロッカーズ渋谷の東京ダービー第2戦は、A東京が104-80で前日の雪辱を晴らした。第1戦では相手の仕掛ける強いプレッシャーに苦しんで攻撃が停滞し、守備でもオフェンスリバウンドを許して失点を重ね、最後はライアン・ケリーに2本のフリースローを献上して屈した。
しかし、この日は一転して序盤からA東京が激しいディフェンスを披露して主導権を握ると、安藤誓哉や田中大貴のガード陣が相手の守備を攻略し、アレックス・カークとのピック&ロールや、ドライブからのキックアウトパスでデション・トーマスらの3ポイントシュートを生み出すなど、人もボールもよく動いてリードを奪う。
課題であったリバウンドもケビン・ジョーンズら全員が飛び込みんで、相手をじつに12本も上回る45本を奪ってみせた。さらに出番の増えてきたルーキーの小酒部泰暉がチームハイの17得点をあげ、ケガのため欠場した須田侑太郎に代わって先発復帰したベテランの菊地祥平の貢献度も大きかった。
彼らにとって当初、「苦しい状況」は開幕からの1カ月だったはず。コロナ禍によってデション・トーマスの合流が遅れ、ケビン・ジョーンズも合流した直後にケガを抱えた。小島元基もケガ明けで万全とは言えず、メンバーがそろっていない中でのシーズンインだった。ところが蓋をあけてみると、最初の10戦を7勝3敗と上々のスタートを切る。
ただその後、ロスターは完成したが11月は3勝2敗、バイウィーク明けの12月はこの日の勝利まで1勝4敗と黒星が先行した。ルカ・パヴィチェヴィッチ ヘッドコーチは先の3人のコンディショニングと、彼らをチームのシステムになじませて白星をあげることに苦慮していた。「チームのかみ合いがない。チームワークが欠けている部分がありました。ケガ人が癒え、新しく加入した選手とフィット感がまだまだなく、練習ができていない状況でした」と語る。
A東京と言えば、ミスの少ない試合運びとリーグ屈指のディフェンスを誇るチームであるが、10月と11月以降を比べると平均失点は10点近く増え、オフェンスリバウンドで劣勢になる試合が散見された。優勝経験者たちや期待の若手、実績豊富な外国籍選手と個々の力量はあるが、チームの戦術を徹底的に遂行するには、一朝一夕ではいかない。
一方で、彼らは過去のシーズンでも前半戦で結果が振るわないことがあった。主力選手が日本代表活動に招集されたことや、Bリーグの開幕前にクラブとして国際試合を戦ったことも思い出される。ルカHCの下で選手たちはシーズンを通して成長を遂げてきただけに、この経験はきっと今シーズンもいきるのではないかと想像された。だが、田中からは対照的な言葉が聞かれた。
「個人的な印象としては、過去のシーズンとはまったく違うものなのかなと思います。本当に周りのチームも力をつけています。自分たちもハードに取り組んでいるのですが、上手くアジャストされて、なかなか自分たちのリズムで試合を運べないことも増えていると思います。東地区は特に力が拮抗している状態だと思います。だから、とても危機感を感じています」
たしかに現在、チームは12勝9敗で東地区7位。ワイルドカードを持ってしても、チャンピオシップの進出圏外だ。どんな環境であっても、いまの結果を重く受け止めており、「ここが踏ん張りどころだと感じています」というコメントも会見で残している。
これからチームを浮上させるために、A東京はチームの経験が浅い選手たちをフィットさせていくことがポイントのひとつである。田中はトーマスに対して「彼も探り探りでやっている部分があると思います。コンディションもまだまだベストの状態ではないでしょう。そういった中でお互いにどういったことをやりたいのか話しています」という。加えて、活躍する場面が増えてきた小酒部には「思い切りやるように」とシンプルな伝え方をしているそうだ。
今後に向けてルカHCも「チームワークは我慢の時の状況です」としながらも結果を追及することを次のように強調した。
「チームのフィジカル面を上げ、戦術面の理解度を上げ、チーム一丸となってプレーして、次の試合でそれをぶつけること。なにがなんでも勝利に結びつけることが、今後のアルバルクにとって大事になってくると思います」
次節は同地区で2位の宇都宮ブレックスと今季2度目の対戦を迎える。アルバルク東京は前回ホームで敗れているが、フルメンバーではなかっただけに、東京ダービーで取り戻した本来の姿で挑むこれ以上ない相手となる。タフなゲームになることは間違いないが、「シーズンを通して最後に一番良いチームになれるように」と田中がコートインタビューで語った目指す姿となるには、乗り越えなければならないライバルである。3連覇へ再挑戦する彼らにとって、真価の問われる一戦がやってきた。
文=大橋裕之
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