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前回大会の福岡大学附属大濠高校(福岡県)は強豪校がひしめく激戦ブロックに入った。それでも、司令塔の岩下准平(現・筑波大学1年)を中心に次々とライバルたちを投げ倒し、実に28年ぶりとなるウインターカップの頂点に立った。
連覇を狙う今年も昨年のスターターが3名残り、全国トップクラスと言える豪華なメンツが揃う。「3本柱」として君臨するのは、ゲームキャプテンを務める湧川颯斗(3年)、エースの川島悠翔(2年)、大黒柱の副島成翔(3年)だ。いずれも昨年の優勝をコート上で味わっており、湧川颯と川島は大会ベストファイブに選ばれている。この3名は今年のU18日本代表メンバーにも名を連ね、川島に関してはU16、U17の日本代表にも選出。「FIBA U16 アジア選手権大会 2022」では平均26.6点を叩き出して得点王となり、大会MVPにも輝いた。
さらには、鈴木凰雅(2年)と渡辺伶音(1年)も川島とともにU16、U17カテゴリの代表を経験。なかでも渡辺は身長204センチを誇る期待のルーキーだ。高さを生かしたインサイドプレーに加え、柔らかなシュートタッチを持つ背番号8は3ポイントシュートも難なく沈める。夏以降は先発に定着するようになり、「3ポイントとゴール下だけではすぐに止められてしまうので、ドライブや周りにパスをさばくといったプラスアルファの技術を身に付けたい」と渡辺。今年、湧川颯がスモールフォワードからガード、川島がパワーフォワードからスモールフォワードへポジションアップを図ることができたのは、2人に代わってインサイドを担える渡辺の存在が大きい。ガードポジションでは湧川颯の弟である裕斗(1年)が台頭し、ウインターカップでも兄弟が揃ってコートに立つ姿が見れるだろう。
コートに立つ3年生では、鋭いドライブと得点力のある広瀬洸生とシューターの芦田真人が中心メンバー。今年はケガに泣いた鍋田憲伸は現時点でエントリー外だが、キャプテンとしてチームに不可欠な存在だ。湧川颯も「本当に頼りになりますし、自分たちが代表活動でいない間も、残った3年生が練習を引っ張ってくれたので本当に感謝しています。だからこそ、代表で経験したことをチームにしっかり還元しなきゃいけないです」と仲間の頼もしさを語る。どうしても代表組に目が行きがちになってしまうが、こうした最上級生の存在も福大大濠の強さを語るうえでは欠かせない。
今年は世代別の日本代表へ複数の選手を送り出したため、チームづくりが難航した。そのため、福大大濠は準優勝で終えた「U18日清食品トップリーグ2022」を通じて連携を高めていき、「チームとしてすごくまとまってきました。今年は全員での練習回数が少ないなか、リーグ戦を通じてチームをアジャストさせて、経験を積めています」と片峯聡太コーチは口にする。だが、インターハイ出場を逃し、冬の県予選では本戦への出場枠が3つだったため、なかなか“真剣勝負”の経験を詰めなかったことも事実。11月26日のトップリーグ最終戦では湧川颯が足を痛めるアクシデントもあり、ウインターカップへ向けた調整はギリギリまで続くだろう。それでも、昨年を振り返れば「大会に臨む頃は80点くらいの状態でしたが、選手たちがどんどん自信に満ち溢れた表情になっていきました」(片峯コーチ)と、試合を重ねるごとにチームが成長し、頂点まで上り詰めた。チームとしては、この前例を再現できるかがポイントになりそうだ。
今年の福大大濠は大会屈指の高さを誇り、選手の顔ぶれを見れば華やかさもある。しかし、指揮官が「本当の勝負の部分」と常に選手たちへ求めるのはリバウンド、ルーズボールといった泥臭い部分。重要な局面になればなるほど、ボールに飛びつくがめつさ、最後まで走りきる根性を見せることが勝利、そしてウインターカップ2連覇を手繰り寄せるはずだ。トーナメントを勝ち上がるたびに、どんどん強くなっていく福大大濠に期待したい。
文=小沼克年