Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
この夏の主役にはなれなかった。けれど、2022年のインターハイを大いに盛り上げたチームの1つが、藤枝明誠高校(静岡県)であることは間違いない。
3大会ぶりにインターハイ出場を果たした同校は、ノーシードから破竹の勢いでベスト4まで勝ち上がった。初戦から合計136得点を稼ぐ攻撃力を発揮すると、2回戦では北陸学院高校(石川県)との競り合いを10点差で勝利。3回戦では仙台大学附属明成高校(宮城県)相手に第1クォーターから2ケタリードを奪い、そのまま93-79で押し切った。仙台大明成戦の勝利から藤枝明誠に対する周囲の目も変わりはじめたが、準々決勝では再び100点ゲームで北陸高校(福井県)を撃破。勢いに乗った状態で迎えた準決勝は福岡第一高校(福岡県)に及ばなかったが、最終スコア78-84と最後まで互角の戦いを繰り広げた。
「自分たちはインターハイにチャレンジしにきたチームですし、個人的にも初めての全国大会です。だから常にチャレンジャー精神を忘れずにチャレンジして、失敗しても、そのミスをチーム全員でカバーしていくことを大事にして戦っていきたいと思います」
インターハイ期間中、ポイントガードを務める谷俊太朗(3年)はそう意気込みを語ってくれた。その言葉通り、藤枝明誠はどこが相手だろうと自分たちのバスケットを貫いて大きなインパクトを残した。スタイルに掲げるのは「堅守速攻」だ。ハードな守備から40分を通して思い切りのいい攻めを見せ、インターハイ初戦で記録した136得点は男女を通じても大会における最高得点となった。
チームの主軸を担う5人は、非常にバランスの取れた布陣だ。持ち前のスピードとクイックネスでコートを駆け回り、味方へパスを配給する谷を司令塔に据え、ゴール下にはリバウンドとブロックショットで相手の攻撃を防ぐ、“プリンス”ことボヌ ロードプリンス・チノンソ(1年)が君臨。アウトサイドには高確率で3ポイントシュートを射抜く霜越洸太朗(3年)、内外問わず得点を奪う赤間賢人(2年)が積極果敢にリングへとアタックする。キャプテンの上野幸太(3年)は縁の下の力持ちとして攻守を支えるだけでなく、霜越と赤間と同様にシュート力もある選手である。
福岡第一相手に27得点をマークした霜越は、敗戦後に「単純にうれしいことであるんですけど、今日の試合で言えば勝利に繋がっていないです。もっと決めるべきときにシュートを決められればチームの勢いが増すと思うので、もっとシュート力を上げたいと思います」と個人の思いを吐露。それでも、「自分たちは誰も全国大会という舞台が分からなかったので、全員がチャレンジしよう、楽しもうという気持ちで大会に挑みました。自分たちのやることを徹底できたことで、ここまで勝ち上がれたと思います」と振り返り、さらなる飛躍を誓った。
チームはインターハイでアシスタントコーチを務めた金本鷹氏がコーチとなり、新たな体制で3年ぶり7回目のウインターカップに臨む。第3シードに入った今大会は、今夏のインターハイとは違い追われる立場となる。より周りからも警戒されるため、それを跳ねのけるには勢いだけでなく強いメンタルも必要だ。選手一人ひとりがプレーの質を高め、「チームとしての隙きをなくす」(霜越)ことも目標の全国制覇には不可欠となるだろう。ダークホースから本命となり、冬の主役になれるか注目が集まる。
文=小沼克年