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12月29日、「SoftBank ウインターカップ2022 令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は最終日を迎え、男子決勝が東京体育館で行われた。第1シードの福岡第一高校(福岡県)と第2シードの開志国際高校(新潟県)との対戦は、夏のインターハイの再戦。このときは試合時間残り5秒、崎濱秀斗(2年)が3ポイントを決めて逆転、77−76で福岡第一が勝利を収めた。
今年から始まったU18日清食品トップリーグでも優勝を果たした福岡第一は新たな高校3冠獲得に王手をかけたが、夏のリベンジに燃える開志国際に第2クォーターを9得点に抑え込まれると、その後も主導権を握ることができず、71−88で敗退。3年ぶりの冬の制覇は残念ながら達成することができなかった。
「少し背負い過ぎさせたかな。こちらでもう少しリリースしてあげられればよかった…」
表彰式が終わり、その後メディア対応した福岡第一の井手口孝コーチは轟琉維(3年)のことを気遣った。ただ轟のパフォーマンスを井手口コーチが気にかけていたのも事実。準決勝までチームは勝利するものの、エースの出来に首を傾げていた。
開志国際がリズムを掴んだのと対照的に福岡第一は“らしからぬ”プレーが目についた。優勝への意識からか、それとも調子の上がらない自らのプレーに力んだのか、シュートはリングを叩き得点のペースが上がらない。
当然のことながら、開志国際は轟を止めようと何重もの防御網を敷いてきた。その状況の中、ちょっとしたほころびを見つけようと轟は揺さぶりをかけるも、この日の開志国際は終始安定した攻防でスキを与えなかった。
「個人的にはターンオーバーが目立ってしまって、チームがいい流れを持ってこられませんでした。シュートも入らず、チームに迷惑をかけてしまいました」
試合後、報道陣の前に立った轟は試合を振り返り、自身を責めた。
「自分でも考え込みすぎていて、自分らしくないというか、最後まで打ち切れていないシュートがたくさんあって。自分でなんとか打開しようと思ったのですが…」
エースは、本来のリズムを取り返そうともがいたが、アリ地獄に落ちていくかのようにそれが足かせとなってしまった。常に安定したプレーでチームに勝利を呼び込んできたエースだったが、最後の最後で本来のプレーができず――。それだけに悔しさもひとしおだったと言えるだろう。
有終の美は飾れなかったものの、この1年間、轟が高校バスケ界の中心にいたのは事実。世代トップの司令塔は目標とする河村に「3年間で少しは近づけたのかと思います」とはにかむ。今回の悔しさを財産にさらなる成長を期待したい。
取材・文=入江美紀雄