2022.12.30

開志国際、ついに冬の頂点に立つ…富樫コーチに捧げた最高の還暦祝い

新潟県勢として初めてウインターカップを制した開志国際 [写真]=バスケットボールキング
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

「冬は私を含めてリベンジできればなと。今度こそ見ていてください!」

 富樫英樹コーチの宣言どおり、開志国際高校(新潟県)は2022年のウインターカップ王者に輝いた。12月29日、「SoftBank ウインターカップ2022 令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の決勝戦で福岡第一高校(福岡県)を破り、創部9年目で初となる冬の戴冠。新潟県勢としても初優勝を飾り、『RED TIGERS』(チームの愛称)は高校バスケ界に新たな歴史を刻んだ。

 最終スコア76−77。今夏のインターハイ決勝では残り30秒を切った時点で4点リードしていた。しかし、そこからまさかまさかの逆転負け。開志国際は新チームがスタートした時から「ウインターカップ優勝」を目標に定めていたが、夏以降はそこに「打倒・福岡第一」が付け加えられた。ウインターカップ決勝は夏と同じ相手。チームが最も対戦したかったライバルとの頂上決戦が実現し、今度は88−71というスコアで見事に雪辱を晴らした。

「やっぱり3年生の意地」。さまざまな福岡第一への対策を練ってきながらも、富樫コーチは勝負のポイントに最上級生の奮起を挙げていた。「コートに倒れても、這いつくばってでも勝ちにいきたい」。指揮官の言葉を体現するように、エースの介川アンソニー翔は試合開始から1人ルーズボールに飛び込んでコートに倒れ、最終的に30得点の活躍を見せた。

 武藤俊太朗は20得点11リバウンド、バシール ファイサル モハメッドも16得点22リバウンドをマークし、主力を担った最上級生3名はそろって40分間のフル出場。さらには「一晩寝れば大丈夫でしょう」(富樫コーチ)と、準決勝では3ポイントシュートの精度を欠いた平良宗龍(1年)が第2クォーターに4連続となる長距離砲を突き刺して会場を揺らした。その間には澤田竜馬(2年)の3ポイントもあり、その澤田は対戦校のボール運びをしばしばパニックに陥れた福岡第一のオールコートプレスにも落ち着いて対応。清水脩真(1年)、中島遙希(2年)の控えガードも福岡第一相手にターンオーバーを「0」に抑えた。

 この4カ月間、インターハイの悔しさを晴らす方法を、福岡第一に勝つ方法を全員で考え、必死に取り組んできた。「富樫とは盟友であり戦友」。そう話す福岡第一の井出口孝コーチは、大学時代の同級生に対し「負けて悔しいのは当然ですけど、富樫先生の優勝には大きな拍手を送りたいです。一緒にいろんな苦労をしてきましたから……」と涙ながらに想いを伝えた。

 2018年のインターハイに続き、2度目の日本一を獲得した富樫コーチは、今年で60歳。「子どもたちにケーキはもらったんですけど、ケーキよりもこっちがいい」とおねだりしていたように、最高の還暦祝いをプレゼントされた。さらに、指揮官は2022年の年男でもある。

開志国際の富樫コーチの体が宙を舞った [写真]=バスケットボールキング


「私が寅年、チームの1期生も寅年なんですよ。だから『タイガー』はつけたいなと。赤は(前任の)本丸中時代もチームカラーだったのでそれを引き継いで、 語呂もよかったから『RED TIGERS』。いい感じでしょ?」

 真っ赤なタイガーたちが大いに暴れ回った2022年は、選手よりも富樫コーチの方が記念すべき1年になったのかもしれない。

取材・文=小沼克年

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