2023.06.28

東北では敵なしの強さを発揮した聖和学園が5年ぶりの東北女王に輝く

5年ぶりに東北を制した聖和学園 [写真提供]=聖和学園高校
スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者に。国内だけでなく、取材フィールドは海外もカバー。日本代表・Bリーグ・Wリーグ・大学生・高校生・中学生などジャンルを問わずバスケットボールの現場を駆け回る。

■冬より選手層が厚くなった聖和学園

 6月24日~25日の2日間にわたり、「第78回東北高等学校男女バスケットボール選手権大会」が青森市にて開催された。ベスト4に進出したのは聖和学園高校(宮城県1位)、福島東稜高校(福島県1位)、秋田中央高校(秋田県1位)、湯沢翔北高校(秋田県2位)の顔ぶれだ。その中で圧倒的な強さを発揮したのが、2月の東北新人戦に続いて5年ぶりの優勝を遂げた聖和学園だ。1回戦から決勝まで危なげないスコアを叩き出し、決勝では福島東稜を44得点に抑えるディフェンスも光った。

 今年の聖和学園は連携プレーが持ち味。しかも、先発メンバーには175センチ超の選手を3人揃えており、全体的な高さもある。オフボールでチーム全員が脚を止めずに動いてノーマークを作り出し、フィニッシュに持ち込む。東北新人の頃はキャプテンの高瀬ゆのかがオールラウンドなプレーで引っ張っていたが、今は2年生の内田理香と阿部友愛が得点源として台頭し、どこからでも得点が取れるチームへと成長していた。

得点だけでなく、周りも生かせる聖和学園のキャプテン高瀬ゆのか [写真]=小永吉陽子


 また、今大会はベンチから出てくるセカンドユニットも機能しており、これまで課題だった選手層も厚くなっていた。今大会の聖和学園は県大会で3年生の司令塔が負傷していたことにより、ポイントガードに1年生の齋藤凌花を抜擢して戦っていた。

「1年生なので、体力的にも経験的にも準備できていませんでしたが、これを全員でカバーし合って乗り切りました。控えの選手たちには『いつもスタメンを相手に練習しているので自信を持ってやろう』と言い続け、その選手たちが決勝ではディフェンスから頑張ってくれました」とチームの成長を語る小野裕コーチ。

 決して万全な状態ではなかったが、チームのピンチに全員の力を集結させた聖和学園。インターハイまでにはケガ人の回復をさせてさらなる成長を誓う。

■聖和へのチャレンジ権を得た福島東稜

 今年の東北は聖和学園が頭一つ抜けているため「聖和へのチャレンジ権をどこのチームがつかみ取るかという大会でした」と語るのは準優勝へと躍進した福島東稜の星希望コーチだ。その言葉通り、福島東稜は1回戦から接戦を勝ち抜いて、聖和学園が待つ決勝へと勝ち上がった。

 星コーチはWリーグと秋田銀行で10年間プレーし、現役引退後の2020年度より高校の指導者として地元の福島に戻ってきた。母校・福島西高校の教員ではなく、縁があって福島東稜で指導者としての道をスタート。地道に経験を重ね、指導4年目で東北準優勝へとステップアップした。

 初戦の仙台大学附属明成高校(宮城県)戦では、残り0.4秒にタフショットを決めて1ゴール差で決着がつく際どいゲームを制している。続く2回戦でも山形中央高校(山形県)に6点差勝利。準決勝の湯沢翔北戦でも逆転勝利を収めての決勝進出だった。チームの軸はダブルキャプテンを務める柴田美奈と斎藤響。柴田はスコアラーとして活躍し、斎藤は精神的支柱としてチームを支えている。この東北大会を通しては、サブメンバーたちも役割を果たす成長を遂げ、チームの底上げを図ったといえよう。

「1回戦で対戦した明成は粘り強いチームなので、ここを制したら勢いに乗れるという確信がありました。明成戦をモノにしたことで、次、次と進むことができ、大会を通して我慢することを覚えてくれました」と星コーチは大会を振り返る。

福島東稜のエースでダブルキャプテンの一人、柴田美奈 [写真]=小永吉陽子


 ただし、チャレンジ権を得た聖和学園との決勝では44−83と大差をつけられ抑え込まれてしまった。そのため、「1対1でアタックしてフィニッシュで決め切ることと、ガードとフォワード陣がセンターまでボールをつなげるようすること」(星コーチ)という課題も浮き彫りになった。東北の舞台で大きな宿題を得た福島東稜だが、同時に、決勝進出に至った粘り強さは新たに身につけた武器でもある。東北に新鋭チームが台頭したことを印象付ける大会となった。

2回戦で盛岡白百合学園との激闘を制してベスト4入りした秋田中央 [写真]=小永吉陽子


秋田勢2校が4強入り。県2位ながらベスト4入りした湯沢翔北 [写真]=小永吉陽子


取材・文・写真=小永吉陽子

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