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岐阜県勢39年ぶりの準決勝進出…美濃加茂は経験を力に「バリエーションが増えた」

インターハイ準々決勝で開志国際を撃破した美濃加茂高校[写真]=佐々木啓次
フリーライター

「昨日(3回戦)の開志国際のシュートの入りを見ていたら、とても付けないのではないかと思っていたのですが、うまく乗り切れましたね。第1クォーターのディフェンスが良かったです」

 8月7日、「令和6年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の男子準々決勝で開志国際高校(新潟県)と対戦した美濃加茂高校(岐阜県)。指揮を執る林龍幸コーチは、試合をこう振り返った。

 開志国際は、前日の3回戦で昨年のインターハイ優勝チームである日本航空高校(山梨県)を83-65で撃破。3ポイントシュートはチーム全体で41パーセントという数字を残し、その3ポイントシュートを7本中5本沈めて29得点を挙げたエースの平良宗龍(3年)をはじめ、清水脩真、千保銀河(ともに3年)といった攻撃力の高い選手がそろう。そのため、美濃加茂は今年のチームの持ち味である激しいディフェンスで勝負をしつつも、「あまり前から行くと開志国際はキャリアのある選手たちなので、(ディフェンスを)かわして3ポイントシュートを打たれてしまうのため、行けるときは行くというようにしました」というディフェンスで対抗。それでも寄りの速さなど、ポイントで「強度を落とさずできた」(林コーチ)ことでリズムをつかみ、第1クォーターで8点のリードを奪った。

 しかし、第2クォーターでは平良、清水らに速い展開からの得点を許してしまい、前半は同点に。第3クォーターも接戦の様相となったものの、終盤にリードを広げると、その後も幾度となく相手に主導権を握られそうになりながら、その都度悪い流れを断ち切って最後は76-68で競り勝った。

「欲を言えばもう少しファストブレイク出せたら良かったですね」(林コーチ)というように、この試合は得意とするディフェンスからの『速い攻め』がたくさん出せたわけではなかった。だが、ハーフコートのオフェンスでもしっかりと加点していたことに、「落ち着いてできていましたね」と、林コーチも選手たちを称えた。

フル出場し20得点を挙げた美濃加茂の藤田大輝[写真]=佐々木啓次


 チームにはインサイドで強さ見せるエブナフェイバー(3年)がおり、この試合でも23得点22リバウンドと活躍した。しかし、エブナフェイバーだけではなく、「個々の能力、今年は特に一対一が強いので、外から一対一をして中で合わせるなど(攻撃の)バリエーションが増えた分、得点につながっていると思います」と、をキャプテンの藤田大輝(3年)が言うように、どのポジションからも得点を奪えることが今年の特長だ。開志国際戦でもオールラウンダーの藤田は20得点。ガード陣では関健朗が11得点、深見響敏(ともに3年)が15得点を奪っている。

 3年生を中心に相手ディフェンスの状況を見ながら息の合った動きで攻撃を展開する美濃加茂。藤田は「これは個人的な考えですが、自分は昨年ガードを経験したことがあって。それで“あうんの呼吸”というか、パッシングからのパックカットなどといったことがタイミングよくできるようになりました」と、語ってくれた。

 昨年のインターハイでは初戦敗退という憂き目に遭った美濃加茂にとって、今夏は「昨年のリベンジ」という思いも強いのだが、藤田は、昨年のインターハイにはメンバー入りこそしていたものの不出場。そのため、「昨年のインターハイに出られていない分、今年にかける思いは誰よりも強いと思っているので、誰よりも強く攻めて、チームが困ったときに自分が助けることができるように意識しました」と、言う。

 昨年は、エースの北條彪之介(青山学院大学1年)と同じポジションだったため、どうしても出場時間が限られた。だが、その間も林コーチは先を見据えて「視野、パスの出しどころを見つけさせたい」という理由から昨年のウインターカップ岐阜県予選では藤田をガードに置き、経験を積ませた。

 そうしたことも今年のチームにはプラスとなり、昨年から主力を担っていた深見らとともに崩れない強さを作っているのだろう。

 男子では岐阜県勢が夏のベスト4入りとなったのは1985年の七尾インターハイでの岐阜農林高校以来。このとき、林コーチは岐阜農林高校の2年生だったという。

 昨年のインターハイ初戦敗退から冬はベスト8入り。そして今年の夏は準決勝まで勝ち進んだ美濃加茂。8日の準決勝の相手は福岡大学付属大濠高校(福岡県)。奇しくも、昨年のウインターカップ準々決勝で敗れた相手だ。

「昨年の先輩たちの思いも含め、リベンジしないといけないと思います」と、藤田は大一番に向けて気を引き締め直していた。

取材・文=田島早苗

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