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「Jr.ウインターカップ2022−23 2022年度 第3回全国U15バスケットボール選手権大会」(以下Jr.ウインターカップ)にて初優勝を遂げた大阪薫英女学院(大阪府)の市川藤乃ヘッドコーチはチームの転機となった昨夏を振り返った。
昨年、8月21日〜23日の期間で開催された「第52回全国中学校大会」(以下全中)に近畿覇者として出場した大阪薫英女学院は、予選リーグから着実に白星を重ねて準決勝まで勝ち進む。そして初の決勝進出を目指し、準決勝では同じ大阪府の樟蔭中学校と対戦したのだが、相手のペースに持ち込まれて敗退。大阪府大会、近畿大会では勝利していた相手だったが、「こんなはずではない、負けたくないという気持ちから選手に焦りが出てしまいました。チームディフェンスが持ち味なのに、個人プレーに走ってしまい、自分たちでリズムを崩してしまいました」(市川HC)と、本来のプレーを出せないまま涙をのんだ。
この敗戦を受けて、Jr.ウインターカップに向けて取り組んできたのが『気持ち』の面。
「夏の大会が自分たちの思いどおりに行かなくて落ち込んだり、肩を落としたりするところがあったので、そうなってしまうと良い雰囲気は出ないよねという話を選手として、気持ちのところを大切に、思いどおりにいかないときこそ笑顔でやれるようにとやってきました」と市川ヘッドコーチはいう。
かくして、Jr.ウインターカップでは、全国の予選を勝ち上がった強者たちを相手に競った展開にも自らを見失わず勝ち上がり、そして山場となった準決勝の四日市メリノール学院中学校(三重県)戦を迎える。
四日市メリノール学院は、大会2連覇中で、夏の全中でも優勝。今大会でも優勝候補筆頭に挙げられていた。
試合は予想どおり1点を争うような緊迫した展開に。第3クォーター終盤には四日市メリノール学院のシューターの西山日葵(2年)にシュートを立て続けに許し、一時は6点のビハインドを負う。流れは四日市メリノール学院へ。だが、心折れることなく踏ん張った大阪薫英女学院は、第3クォーター終了間際に2点差に詰めると、第4クォーターの残り約5分からはシュートチャンスを確実にものにして加点。磨き上げてきた堅いディフェンスも光り、最後は54-47で競り勝った。
この試合、終盤の苦しい時間帯に心なしか選手が笑顔でいるように見えた。それをキャプテンの桝本碧珠(3年)に問うと、「楽しくできたので、(笑顔は)自然と出ました」と言う。さらには、「最後に相手がダブルチームで守ってきたのですが、そのときも焦らずにパスを回しながらシュートにつなげていこうと思っていました」ともコメントした。
焦りから失速した夏。その経験を踏まえ、課題を見事に克服しての勝利となったのだ。
そしてもう一つ、夏以降の課題に取り上げていたのがバックアップメンバーの存在だ。全中ではスターターにかかる負担が大きかったという反省も踏まえ、選手層の充実にも取り組んだ。
京都精華CLUB(京都府)との決勝では、ベンチから出場の鈴木陽向(3年)が要所で外角シュートを沈めてチームに勢いをもたらし、インサイドでも森山優花(3年)が得点や大型選手へのディフェンスなど体を張ったプレーで勝利に貢献した。
その決勝では第1クォーターから相手を圧倒し、61-44と快勝。これには「選手たちの意志の強さだと思います。シュートを決め切ったところなど、もう彼女たちの気迫勝ちだったかなと思います」と、市川ヘッドコーチは手放しで選手たちの頑張りを称えた。
市川ヘッドコーチは、かつて「都道府県対抗ジュニアバスケットボール大会」(2017年)で大阪府代表の指揮を執り、優勝を果たしているが、大阪薫英女学院中学校としての全国優勝は初となる。
「あまり実感はないのですが、準決勝で四日市メリノール学院と戦えて、今日の決勝に向けては自分たちらしく過程を大事にしながら、勝っても負けても胸を張って帰ろうと選手たちに言っていました。でも、最後は勝ちたいから『つかみ取れ』とは言いましたけど(笑)。すごいですね、中学生って本当に」と、感想を語った。
夏に浮き彫りとなった課題を見事に克服してつかんだ初優勝。
「いろいろな人が応援をしてくれて、その恩返しをしたいねと選手とも話をしていたので、まずはその恩を返せたこと。それと選手たちがどんなときでも乗り越えて頑張れる子たちだったので、本当に『ありがとう』と伝えたいです」と、市川ヘッドコーチは感謝の思いを言葉に乗せた。
取材・文=田島早苗