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8月9日、デトロイト・ピストンズの指揮官を務めるドウェイン・ケイシーHC(ヘッドコーチ)によるクリニックが白鷗大学 第一体育館(栃木県小山市)で行われた。
2016年以来、約3年ぶりの開催となった今回のクリニックでは、多くのバスケットボール指導者たちが見学。2017-18シーズンにトロント・ラプターズの指揮官として最優秀ヘッドコーチ賞に輝き、昨季フランチャイズ史上初優勝を成し遂げたチームの基盤を構築したケイシーHCによるクリニックは、終始熱のこもったものとなった。
今回、ケイシーHCは同大女子バスケットボール部へクリニックを開催。午前中はウォーミングアップを終えた選手たちへパスの練習から始まり、良いショットと悪いショットの違いやボールを持った時の位置について指導。
クリニックの間、ケイシーHCは言葉で説明するだけでなく、率先してお手本を見せていた。その後、選手たちが実践している中で「違う」と思えばすぐさま中断し、どうすれば改善できるかを明確に伝えていた。3対3や4対4でフォーメーションの練習を行う際には、オフェンスだけでなくディフェンスをしていた選手たちに対しても真摯に対応。選手間でコミュニケーションを取れずにいたならばすぐさま指摘し、1つ1つのプレーに意味があることを根気よく伝え続けていた。
また、「NBAではトランジションからの3ポイントが主流」「ディフェンスとのズレをつくるために一番大事なのは、1秒にも満たない細かい時間軸でしっかりスクリーンをかけて(相手チームを)混乱させること」「勝てるチームの選手たちは必ずディフェンス時に手が上がっている」など、NBAという世界最高のバスケットボールリーグにおける現状を伝えていたことも印象的であり、クリニックのメニューの重要性を高めていたと言っていい。
午前と午後の練習の合間には、見学に来た指導者たちを前にケイシーHCが質疑応答のコーナーを設けた。
1990年代、ケイシーHCは積水化学の女子バスケットボールチームにて、同大女子バスケットボール部の佐藤智信監督と共にコーチを務めた経験を持ち、男子日本代表のアドバイザリーコーチとして1998年のFIBA世界選手権(現FIBAバスケットボール ワールドカップ)出場に貢献。
ケイシーHCは20年以上も親交のある佐藤監督や小浜元孝氏(元男子日本代表ヘッドコーチ/2017年に逝去)への「忠誠心と友情」を大切にしていると口にした。
「佐藤コーチ(同大監督)、2年前には会うことができた小浜さんを含めて、私は恩のあるコーチ陣に恵まれてきています。今は(NBAという)高いレベルでコーチをしていますが、彼らに対する忠誠心を示すべく、自分の知識やそこで得たものを持ち込み、支援をしています」。
また、現代におけるベストなディフェンスについては「1番(ポイントガード)から5番(センター)までオールスイッチできて、(相手が)ショットを放つ時には必ずコンテストしている(手が上がっている)。それが強いディフェンスチームだと思っています」と言及。するとディフェンス時において、相手チームに許したくないショットの優先順位を挙げていた。
■ケイシーHCによる相手チームに許したくないショットの優先順位
1.リング下とフリースロー
2.コーナーから放つ3ポイント
3.コーナー以外から放つ3ポイント
4.ペイントエリア内のショット
5.ペイントエリア以外のショット
クリニック終了後、メディアによる質問に応じたケイシーHC。「今のディフェンスはペイント内にアタックされたくないように感じる」という指摘に対して、こう切り返していた。
「アウトサイドから打たれたい、というわけではなく、最初に小さくガードしていて、(相手選手がショットしようとしたら)クローズアウトをする。相手に寄ってしまうと戻ることができないので、最初のスタート位置を縮めた状態から入っていくという意味です。今まではボールにどんどんプレッシャーをかけて、ディナイをすることでパスコースを消すというアタック型のディフェンスではあったんですが、それだと1人目が抜かれてしまうという現象が非常に多く、そこからドライブやキックアウトを許していました。今日のクリニックでやったように、崩される場面がすごく多かったので、今は小さくディフェンスしています。ソフトに守っているように見えるかもしれませんが、キックアウトで外から打たれることを防ぐために変えています」。
今月末から、男子日本代表は中国で行われる「FIBAバスケットボール ワールドカップ2019」に臨むのだが、前回出場した98年の世界選手権でコーチを務めていたケイシーHCは、日本のバスケットボールについて、このように見ているようだ。
「日本のバスケットはスキルレベルが非常に上がっていると思います。フィジカルも強いですし、シュート力も上がっています。そして私がすごく変わったなと思う1つは、コーチのレベルが上がったことです。私が見ていた当時、ハードにプレーしているものの、組織だった動きというのをあまり見ることができないことがありました。ですが今の(日本の)バスケットボールはハードにプレーするのもそうですけど、組織だってプレーしているという印象です」。
来年の東京オリンピック2020についても「過去にないくらい、今まででベストのレベルで、ファンをも巻き込んだすばらしいバスケットボールが展開されると私は見ています」と大きな期待を寄せていた。
NBAという世界最高の舞台でヘッドコーチとして実績を残すケイシーが、オフシーズンに来日してクリニックを行い、指導者たちの質問に対しても真摯に耳を傾けて親切丁寧に応対してくれたことは、今後のバスケットボール界にとってきわめてポジティブなものとなったに違いない。
文=秋山裕之
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