2019.10.02

【Wリーグ開幕特集/昨季4強の指揮官に聞く今季展望】 三菱電機・古賀京子ヘッドコーチ

指揮を執って4シーズン目となる古賀京子ヘッドコーチ
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「一戦一戦、必死に戦っていきたい」

 第21回のWリーグが10月4日より開幕する。昨シーズン、前人未到の11連覇を達成したJX-ENEOSサンフラワーズが連覇を“12”に伸ばすのか、はたまたJX-ENEOSを止めるチームがでるのか、興味は尽きない。

 今回は昨季の4強、JX-ENEOS、三菱電機コアラーズ、トヨタ自動車アンテロープス、デンソーアイリスのヘッドコーチにシーズンに向けての話を聞いた。

初のファイナル進出でつかんだ自信

――チームとして初の準優勝なった昨シーズンを振り返ってください。
古賀 ファイナルの舞台に立てたこと、あとは壁だったクォーターファイナルを超えられたことはチームとして大きな自信になったと思っています。

――ファイナルでJX-ENEOSと対戦するのは初。レギュラーシーズンとの違いはありましたでしょうか?
古賀 戦う態勢というか、姿勢が違いました。やっぱり王者だなと感じました。隙がないこともそうですし、自分たちのリズムに持っていく集中力。勝ち方のパターンがあるというのはとても強く感じました。

――昨シーズンは、レギュラーシーズンから手応えのようなものはあったのでしょうか?
古賀 「少し変化したな」と感じるようになったのは、(試合の)後半に力が出せるようになったこと。劣勢になった時に「今、どうしないといけないのか」というのを選手たちが理解し、一つになってコミュニケーションを取ることが多くなってきました。それで試合後半の(戦い方に対する)アプローチが変わったと感じています。

――それは昨シーズンの急激な変化というより、ここ数シーズンの蓄積があっての変化なのでしょうか?
古賀 少しずつ変わってはいましたが、明らかに変わったとうか、変化が見えてきたのは、昨シーズンです。それまで選手個々が気持ちを伝えるのにどうやって表現していいのか、もどかしさのようなものがありました。一昨シーズンはその思いをぶつけることができるようになったところまでは来ていました。それが昨シーズンは、相手の思いをくみ取ることができるようになり、口調が変わったんですね。「Let’s」の意味合いがある言葉を使うようになってきた。今までは「ああしてよ」とか「なんでこうしないの」といった内容の言葉が多かったのですが、「こうしよう」など、一緒にやろうというニュアンスに変わっていきました。「Let’s トライ」のような雰囲気になりましたね。

――選手が考えていることを表現し、さらにそれを「Let’s」という雰囲気にするには時間もかかるのではないですか?
古賀 選手だけでなく、スタッフも同じように思っていることを話をするようには心掛けました。ヘッドコーチ、コーチ、選手とそれぞれに役割分担はありますが、そういった枠にとらわれず、選手やスタッフ個々がどのように考えているのかを私も聞きたかったので、たくさん話をするようになりました。

――コミュニケーションの点では選手時代に教わった指導者の影響もありましたか?
古賀 佐賀清和高校時代の恩師・貞松義人先生は、選手に考えさせる指導者で、一つの事に関して「何を考えてプレーしていたのか」というのは良く聞かれました。「こう考えていました」と答えると、時に「起きていることは何なの?」と問いかけられて。そうなると考えがなく咄嗟に動いてしまったプレーは言葉にして説明が出来ない。ですから、考えてプレーすることは高校時代からしていましたね。

 そして高校卒業後、三菱電機に入団。三菱では技術顧問をされていた林桂三さんが当時主流の怒りながら鍛え抜くといった指導法とは180度違い、褒めるんです。そのギャップに最初は戸惑いもありましたが、楽しいし、いろんなことで上手くなっていくことを実感しました。林さんに「一つの質問をしなさい」と言われて何か聞くと、そこから2時間近く話をするんですね。それが終わって「もうないの?」って。そこからまた長いんです。それはそれで考え方を叩き込まれましたね。ビデオを見ながら「ここはこうだよ」とか。当時はビデオテープ(VHS)だったので、何度も巻き戻ししながら話をしました。

昨シーズンのファイナル初進出はチームにとって大きな自信となった

若手選手を積極的に起用し「化学反応を起こす」

――そういった経験を経て、ヘッドコーチとなった今もコミュニケーションを大切にしているのですね。さて、今シーズンに向けてはどのような準備をしてきたのでしょうか?
古賀 まずは昨シーズンと同じではいけないということ。プレー的には平面的なプレーに力を入れています。変化をさせようと思ったことは、同じ選手ではなくて若い選手を組み込ませて、化学反応を起こすことを意識しています。

――若手で期待する選手はいますか?
古賀 竹原レイラ、永井唯菜、篠宮杏奈、見﨑南美、田代桐花といった選手たちは、ジョーンズカップからの手応えを感じています。

――7月末のジョーンズカップでは優勝しました。チームとしてどのような位置付けの大会だったのでしょうか?
古賀 三菱電機単独で参加させてもらいましたが、国際大会を戦うことが初めての選手もいました。そういった中で気負うより、何ができるかをチャレンジすること。私たちには守るものもなかったので、「チャレンジしよう」ということで臨みました。若手の成長を見ることができた大会だと思っています。

――若手選手にとっても昨シーズンの準優勝は大きな刺激になりますね。
古賀 取り組む意識も変わり、上手くなりたいという意欲はどんどんと沸いています。自分は何の役割をしたらいいのかなどといったことをコーチ陣に聞きにきたり、このスキルを教えて欲しいと言いに来たりすることが増えました。チーム内で競争が本格的に始まった感じです。今シーズンはそれまでとは変わり、ポジションを固定するよりは、フレキシブルに。そういった変化を入れてみようかなとも思っています。もちろん、役割分担はちゃんとした上ですが。

――開幕が近いですが、渡邉亜弥が急遽、女子日本代表に招集されました。
古賀 彼女いないことをプラスに変えるというか、渡邉がいない時に誰がリーダーシップを取って、まとめていくのかといった点では他の選手が頑張ってくれています。

――そういった点ではガードの川井麻衣に期待が掛かりますね。
古賀 彼女は今、いい意味で欲張りになっているし、チーム引っ張ろうと思って取り組んでいます。彼女なりに分析しながら他の選手たちと話をしている姿も見受けられますね。

――チームは、ベテラン王新朝喜の存在も大きいですね。
古賀 メンタル的にも陰の立役者ですし、竹原ら若い選手たちも慕っています。こちらがシビアになっている時も笑いを誘ってくれる、素晴らしい選手です。

――今年のチームのスローガンは?
古賀 『TEAM』です。これは2016年から同じですが、今季は’’もう一つ上のチャレンジ’’ということもテーマに掲げています。

――昨シーズン準優勝。今シーズンでの目標をお願いします。
古賀 昨年の結果により、もちろん他チームのマークも厳しくなりますが、目指すところは優勝!自分たちのやるべきことに集中して必死に戦っていきたいです。

名プレーヤーでもあった古賀HC。練習では自らが実践しお手本を見せる

BASKETBALLKING VIDEO