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『B MY HERO!』
「今までと変わらず自分の役割はディフェンスだと思っていますが、そこにプラスアルファで点を取る意識も今まで以上に持つようにしています」
今シーズンの戦いについて、こう語ったのは富士通レッドウェーブの内尾聡菜。さらに「(昨シーズンから)得点源の選手が抜けたので、そこはみんなで補いながら。その中で私がシュートを決めていけば、チームも楽になると思っています」と続けた。
内尾の所属する富士通は、昨シーズンまで主軸として8シーズンの間チームを引っ張ってきた篠崎澪が引退。東京オリンピックの銀メダリストでもあるオールラウンダーのオコエ桃仁花もヨーロッパのギリシャリーグに参戦と、得点源の選手たちがチームを去った。
そのため、得点に関しては誰か一人が篠崎の代わりを担うといった形ではなく、選手個々が昨シーズン以上に得点を増やすことで、チーム全体の得点力アップへとつなげている。内尾も「シュートがうまい選手が多いので、私がシュートまでいかずとも、切り込んでそこから味方のシュートにつながるパスをしていきたいです。もちろん自分自身もドライブからシュートなど、空いたらシュートを打つようにはしています」という。
「昨シーズンよりは点にからめているのかな」と、オフェンスには一定の手応えを感じている内尾。だが、「ディフェンスがうまいチームが相手になると、良い判断が求められますし、自分自身の攻撃のバリエーションも増やしていかないと通用しないなと感じています」と課題も挙げる。
3月4、5日は、内尾の言葉を借りれば、ディフェンスのうまいチームであるトヨタ紡織サンシャインラビッツと対戦。初戦はチームの3ポイントシュートの確率が12.5パーセントと、オフェンス面で苦しみ48-54で敗退した。
「(3ポイントシュートを)打った本数も少ないとは思うのですが、それでもシュート自体は打ててはいたので、そこを決め切ること。あとは、紡織さんのクローズアウトが厳しかったのに対して、慌てて打ったり、そこからドライブに行ったときにも寄りも早かったことで良い判断ができなかったりしました」と、内尾は試合を振り返った。
それでも翌日の2戦目では66-60と接戦を制して勝利。内尾も9得点8リバウンドと気を吐いた。
177センチの内尾は、ディフェンスに定評のある選手。だが、それだけでなく力強いドライブや先頭を走って速攻にからむなど様々なパターンで得点を挙げるオールラウンダーでもある。
福岡大学附属若葉高校(福岡県)から富士通に入団し、今シーズンで7シーズン目。司令塔の町田瑠唯やキャプテンの宮澤夕貴といった東京オリンピックでも活躍を見せた日本代表メンバーに次いで、チームの顔となる存在へと成長した。特に、先に挙げたように篠崎の引退など、主力選手の入れ替わりもあったチームの中で「抜けた選手の存在が大きいので、その選手と同じようにというわけにはいかないですが、(今シーズンは)私自身、もう一段階上にいかないといけないとなと思っています」と、自覚も十分だ。とはいえ、「それで気負いすぎちゃうところがあるので、先輩を頼りながら…(笑)」と、笑顔も見せる場面も。
25歳の年齢は、チームの中で真ん中ぐらいの年齢層に位置するが、チームの在籍年数では町田に次ぐ2番目の長さとなる。それだけに、後輩や在籍年数の浅い選手たちにチームや先輩たちの考えを伝えつつ、先輩たちを後押しするようなポジションを担う。内尾自身もその役割を粋に感じているようで、「本当に今シーズンからチームは新しくなったので、私自身も新たな気持ちで臨んでいます」と力強く語った。
富士通はトヨタ紡織戦を経て、レギュラーシーズン上位8チームに与えられるプレーオフの出場権を獲得したが、決して楽観視はできない。レギュラーシーズンは残り4試合。そしてその後は、一戦必勝となるプレーオフへと突入し、一気に佳境へ入る。
「アースさん(宮澤)や(町田)瑠唯さんにはきついマークがくると思うので、そこで私が苦しい時間帯に少しでも点を取ることができれば。あと、ディフェンスでも貢献していきたいです」
先の戦いを見据えながら抱負を語った内尾。新生・富士通は試合を重ねながら進化しているところ。そのチームにおいて浮沈のカギを握るのは、内尾といっても過言ではないだろう。
取材・文・写真=田島早苗