2019.03.28

データ解析で萩野真世をサポートするアビームコンサルティング

大阪カップで収集されたデータをもとに萩野真世選手にも解説していただいた
バスケットボールキング編集部。取材歴は20年を数え、これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、今年も氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

車いすバスケットボール女子日本代表の萩野真世をサポートするアビームコンサルティングは、2月15日~17日に行われた大阪カップにコンサルタントが赴き日本代表戦をはじめ、各試合のデータを集積した。そこで集められたデータをいくつか抜粋してもらい、萩野選手とコンサルタントの髙山広明氏に試合やプレーを分析、さらに今後への課題を語ってもらった。

取材協力=アビームコンサルティング
インタビュー・文=入江美紀雄

チームへの貢献度をさらに数値化して細かくチェック

萩野真世選手から直接データ分析を解説してもらった

――大阪カップでは世界の強豪であるオランダ、イギリス、オーストラリアと対戦しました。そこではどんなデータを取られたのですか?
萩野
 アビームコンサルティングのコンサルタントの方に様々な角度からデータを収集していただきました。そこで得たものをお話させていただければと思います。

大阪カップで戦ったオランダは昨年の世界選手権で優勝、イギリスは準優勝と世界のトップを占めるチームなので、今日本がどのくらいの位置にいるのかをはかる重要な大会でした。そのようなチームと前半だけでも競った試合ができて、自分たちとしてはすごく成長出来なのではないかと思っています。

――実際にプレーした感想はいかがですか。オランダ戦から教えてください。
萩野
 大会前に千葉の流山で親善試合を行ったのですが、その時は出だしからペースを握られました。2試合行って、ともに同じ展開だったのですが、それを大阪カップで修正して最初は、前半まで競った試合ができたというのは、1週間という短いでも合わせながらできたところかなっていうふうに思います。

――イギリス戦に関してはどうですか?
萩野
 イギリスはオランダに比べれば高さはないのですが、プレーの精度が高いのが特徴で、それに対して、「いいところまでは守れたかな」と感じました。一方、そこで勝ち切れないのは、まだ日本の力がないところとも言えます。

高山 具体的にデータで振り返ってみたいと思います。EFF(エフィシエンシー)* というチームの貢献度を示す数値を今回取っていただきました。大会を通じて、オランダの15番と9番の選手が高い数値を残しています。また、日本では網本麻里選手、藤井郁美選手がトップ5に入っており、日本選手も存在感を示すことができました(表①参照)。

【表①】EFF(エフィシエンシー)のデータをさらに分析すると選手の貢献度が明確になる [資料提供]=アビームコンサルティング

 この数値にそれぞれの選手が持っている持ち点(障がいの度数)で割ったのが右の表です。ローポイントターの場合、得点を決める場面が少なかったり、リバウンドを取る回数も少なかったりするので、スタッツからなかなか特徴は見られないのですが、こうして持ち点で割ってみると、ローポインターの貢献度も分かるのではないかと思います。

 どうしても数値が残しやすいハイポインターに目が行きがちですが、こうしてローポインターに目を向けることができれば、(ローポインターである)私としてもモチベーションをアップさせることができますし、相手チームの選手分析にも役に立つのではないかと思います。

*得点・リバウンド・アシスト・スティール・ブロックの合計から、フィールドゴール失敗数・フリースロー失敗数・ターンオーバーの合計を引き算した値。数値が大きいほど、チームへの貢献度が高い

――障がい者スポーツを数値に出して分析するには、健常者のものよりもさらに繊細なチェックが必要だということが分かりました。これ以外に何か興味深いデータはありますか?
萩野
 オランダ戦について、前半は戦えたのに、それが後半になってオランダにペースをつかまれてしまった印象がありました。それをデータ化したのがこちらです(表②参照)。

【表②】前半は互角に戦えた日本だが、後半、オランダの反撃を受けたのが分かる [資料提供]=アビームコンサルティング

 想像ですが、オランダのスタッフはハーフタイムに日本の守り方の指示を出したのだと思います。そのため、第3クォーターになると日本のシュート本数が極端に下がり、反対にオランダの本数が増えています。これはオランダが日本の攻撃パターンにアジャストしてきたことが要因であり、高さを含めて、日本の攻撃を封じ込めることに成功したと言えると思います(表②参照)。

【表③】前半、日本が決めていたシュートが後半に入るとオランダに抑えられている [資料提供]=アビームコンサルティング

――前半に左のショルダーから決めていたシュートが、後半に入ると全く打たせてもらってないことも分かります。
萩野
 日本の攻撃パターンとしてここから崩していこうというものがありました。後半、ここからのシュート本数が減ったのは、オフェンスのパターンを変えたのではなく、オランダがここから打たせないように守ってきて、日本からしたら攻めにくくなったと言えると思います。

――実際に試合をしながら感じたことが、こうして数字に表れているわけですね。
萩野
 大阪カップの前に千葉の流山で親善試合を行った時も、オランダのアジャスト力には驚いたのですが、この大会でもしっかりと修正するところは世界1位の所以だと思います。逆に対応された時に日本が何もできなくなってしまうのは、今後に向けての課題だと言えます。

――ただこうして細かくデータを取って分析していくことで、チームや個人の課題が明確になるのではないでしょうか。
萩野
 そうです。ビデオを録っていろいろなシーンを確認することも大切ですが、個人的なスコアだったりEFFを細かく出してもらえることで、先程もお話したようにモチベーションアップにつながります。また課題も明確になるので、自分たちの良いところはしっかりと伸ばして、反対に課題を一つひとつクリアしていくことが今の日本には大切なことだと思います。

――それが日本の強化につながりますね?
萩野
 女子代表の場合、試合数が限られているので、大阪カップのように大きな大会で、世界の強豪と戦うことで得られるデータは貴重です。合宿や日々の練習を含めて、様々なデータを2020年の東京パラリンピックに向けて蓄積していけば、日本の強化に直結するはずです。

「強豪と戦うことで得られるデータは貴重」と萩野選手