2019.02.10

車いすバスケ女子日本代表と世界女王オランダとの対戦で見えた“課題”と“光”

車いすバスケ女子日本代表が昨年の世界選手権優勝のオランダ代表と流山で対戦 [写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 2月8、9日、キッコーマンアリーナ(流山市民総合体育館)では「車いすバスケットボール女子日本代表国際親善試合」が行われ、日本は昨年の世界選手権覇者のオランダと対戦した。結果は51-61、43-65と連敗。世界トップレベルとの差に、厳しい現実を突きつけられた形となった。

スタートで世界一の力に圧倒された日本

 昨年の世界選手権、グループリーグ、決勝トーナメントあわせて8戦全勝で世界一の座にのぼりつめたオランダ。翻って、その世界選手権に出場することがかなわなかった日本。両チームの差は、スタートから明確となった。

 高さはもちろん、スピード、高いチェアスキルをも有し、攻防にわたって連携プレーにも長けたオランダ。日本はその猛攻を止めることができず、そして好守備に対して攻めあぐねた。その結果、両日ともに試合開始から約3分後に電光掲示板に映し出されたのは「0-9」という数字だった。

 もちろん、日本もそのまま“やられっぱなし”で終わったわけではない。第1戦では第3クォーターで20点差をつけられたが、第4クォーターでは日本のプレスディフェンスが効き、流れを引き寄せて10点差にまで追い上げた。第2戦では、随所に連携のとれたゾーンディフェンスでオランダを苦しめるシーンも見てとれ、前半は1ケタ差と善戦してみせた。

第1戦、日本はプレスディフェンスが機能し、オランダを追い詰める場面を作ったが…[写真]=斎藤寿子

 しかし、やはり“世界”との差は小さくはなかった。そして、1年半後に迫った“本番”に向け、克服すべき課題は山積している。そのことに直面した2試合だった。

 最も気になったのは“連携”という点だ。オランダはしっかりと両サイドで2on2の形を作り、そこからオフェンスではシュートチャンスを生み出し、ディフェンスでは日本の攻撃の芽を摘んでいた。

 一方、日本は攻防にわたって2on2の形が整わないことも少なくなく、さらにディフェンスにおいても、プレスにいくのか、自陣に下がるのか、その判断に時折“迷い”が見えるなど、チームの連携がとれていない時間帯が少なくなかった。

次戦で示したい連携のとれた日本の“形”

 しかし裏を返せば、連携が取れていたシーンでは、勝機を見出すポイントの一つとなる確かな“光”があった。例えばオフェンスでは、片方にパワーサイドを作り、そこでボールを展開する間に、逆サイドでフリーで待っていた柳本あまねがミドルシュートを決めたシーン。あるいは、ボールに目がいっているその裏をついて、財満いずみがカットインしてシュートを決めたシーンだ。

 トップでボールを展開しながら隙あらばミドルシュートを決めた萩野真世も加え、ミドルポインター、ローポインターのオフェンス参加は、高さで劣る日本にとって大きな武器となるはずだ。得点源の数が増えれば、それだけハイポインターへのマークも外しやすくなるからだ。

隙あらばミドルシュートを決めた萩野真世 [写真]=斎藤寿子

 女子日本代表は、2月15~17日には丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)で「2019国際親善女子車いすバスケットボール大阪大会」(大阪カップ)に臨む。オランダに加え、昨年の世界選手権準優勝のイギリス、アジア・オセアニアの強敵オーストラリアと対戦する。

「いつまでも“いい経験”とは言っていられない。大阪カップではしっかりと勝負ということを意識して臨みたい」とキャプテンの藤井郁美。世界の強豪が揃うハイレベルなステージで、日本はどんな戦いを見せるのか。結果はもちろん、連携のとれた日本の“形”を示すことが期待される。

文・写真=斎藤寿子

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